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ウマシカテ・ラボラトリィ ―食いしん坊の閑人閑話―  作者: 菊華 伴(旧:白夜 風零)
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このあと無茶苦茶ぜんざいした。

「ぜんざい食わせろ」

「おかえりくださいおにいさま」


 とある朝。

 なんでも夫婦喧嘩したらしい馬鹿兄貴が僕の家にやって来た。いや、直感。不機嫌な顔でチャイム鳴らして開口一番甘いもの食わせろってときは大抵そうだったからね。まぁ、大方兄が一方的にぶちっ、と行って家を出たのだろう。僕はそう思う。

 兄は意外と気が短い。僕がなにか悪いことをして、兄がちょっとしたことでもぶちっ、とキレて家を出るのがデフォルトだった。

「で、どっちが悪いの?」

「って待て。……喧嘩した事前提かよ」

「じゃなきゃなんで朝6時にこっちきてんの」

 僕の問いかけに兄は気まずそうに

「今回()夫婦喧嘩じゃない。……仕事で早朝に出たんだが、会社側から『用事なくなったから今日帰っていいよ』って言われてな」

 との事だった。

 身重の奥さんと喧嘩して放置してきたんかと思ったよ、こっち。ちょっと安心したけどそう言う事は先に言ってください、いや、マジで。


 そんなこんなで兄は僕のベッドで仮眠を取る事に。義姉さんには既に連絡済なのだそうな。僕はとりあえず、そんな兄を放置プレイして、24時間営業のスーパーに行く事にした。ぜんざいの材料を買いに行くのだ。そうだ、あとで義姉さんも呼ぼう。それがいい。

 つぶあんと、白玉粉……、あと、栗の甘露煮。これは値引きシールが貼ってあったから購入。たくあんは丁度ご近所さんからいただいたものがあるからそれを使おう。


 朝の冷たい空気を胸いっぱいに吸い込みつつ自転車で走り、朝の街を見ればどこか眠たそうに見えた。淡い青紫の世界は、僕のお気に入りだ。パワーストーンでいえばブルーレースアゲートみたいな感じな色合いの空を見ると、なんだか不思議な気分になれる。

(仕事もがんばりつつ、僕もそろそろお嫁さんとか考えたほうがいいのかなぁ)

 なんだかんだ言って、兄はうらやましい。家に帰れば「おかえり」って言ってくれる相手がいるし、来年にはあかちゃんも生まれるし。一方の僕は帰宅してもだれもいないわけだし。

(なんとなく、寂しいかもね)

 確かに友達と楽しく過ごすのも好きだけど、家に誰かいるのとは違う。兄弟とも親とも違う、自分のパートナーがいるっていうのは、きっともっとこう……「ほっ」とするのかもしれない。


 色々考えながら帰宅すると、兄はまだ寝ていた。しょうがないので鍋にあんこと水を入れて暖める。その間に行平鍋にも水をいれて、白玉粉を練って団子も作っておく。赤ちゃんの耳たぶぐらいが目安かも。それをちょっと平たい団子にして湯がくぞ。

 沸騰したお湯の中に投入し、浮かんでくれば大丈夫。冷水で醒まして……、丁度いい具合に温まったぜんざいに投入する。あ、その前に味の調節として三温糖と塩を適量入れてある。うん、鍋一杯のぜんざい。兄貴、喜んでくれるかな~?


 僕が寝室へ行くと、兄貴は家に電話をしているところだった。

「どしたの?」

「いや、今日丁度定期健診だからついていく事にしたんだ。ここで朝飯食ってからいくわ」

「だったらあるよ……ぜんざい」

「は?」

 寝ぼけ眼の兄に僕がそう言えば、兄がぽかん、と口をあける。

「ガチで作ったのか」

「甘いもの食べさせろって言ったの兄貴じゃないか」


 このあと無茶苦茶ぜんざい食った。

 あまった分は定期健診後こっちに来てもらって持ち帰ってもらった。


読んでくださり有難うございました。

ぜんざいの作り方は大いに間違っている可能性があります(あくまで筆者が家庭でやった例です)。

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