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ウマシカテ・ラボラトリィ ―食いしん坊の閑人閑話―  作者: 菊華 伴(旧:白夜 風零)
12/79

から揚げと竜田揚げってどうちがうんだ(タイトル詐欺):から揚げ編

また2話分割です。

とりあえずから揚げ編を。

「なぁ、練習後に飯食べにいかねぇ?」

 とある午後、市民オーケストラでの練習中にチューバ担当の大河内さんからお誘いがあった。

 この大河内さんは実を言うと人気ブロガーで、食べ歩きしたお店の感想とか自分で作った料理の話とかをブログに書いているけど、それが何故か主婦に人気らしい。

 見た目がっしりしていて、ラガーマンを連想する男性で、僕と同い年である。だが、中身は料理とお菓子作り、小物作りが大好きな人である。まぁ、スポーツではラグビーが好きな人で大学時代は選手だったらしいけど。

「まぁ、いいですけど……お互い給料日前ですよ?」

「ま、安くて美味しいトコ知ってるんだ。それに、贅沢貯金もたまってきたから」

 ? なんか面白いキーワード出てきたぞ?

「贅沢貯金?」

「イエス。まぁ、贅沢した【つもり】になってためていたお金が一杯になってきたから少しぐらいいいかなってね」

 と、大河内さんはいたずらっ子の目をしてそう言った。

 しかし大河内さんのいう安くて美味しいお店はちょっと気になる。この人が「美味しい」という物ははずれがない。この間もおすすめと言っていたケーキ屋さんのガトーフレーズを買って食べたけど、すっごく美味しかったんだよね。

 とそんな事を言いながら練習していたらあっという間に終了時間に。僕は丁寧にコントラバスの手入れをしてから帰宅準備をすると、急いで一度帰宅する事にした。お互い楽器が大きいからね。


 楽器を家に置いてから待ち合わせし、やってきたのは小さな食堂だった。レトロな雰囲気がかわいく、女性受けしそうだなぁ、というのが第一印象である。夕方の食堂には、会社帰りだろうかと言う男性や家族で食べに来たといった雰囲気の親子連れでにぎわっていた。

 僕らが店に入ると、カウンター席に案内される。大河内さんは顔なじみらしく、店主らしき女性に手を上げて挨拶していた。

「あら、幸正くん久しぶり。こっちの方はお友達?」

 赤いバンダナを三角巾にした、妙齢の女性はハキハキした声で大河内さんに問う。僕が市民オーケストラでお世話になっている者です、と挨拶すると、彼女は「まぁ!」と笑顔になってくれた。

「おばちゃん、こいつと俺にから揚げ定食くれる?」

「あいよ。幸正くんはご飯大盛りでいい?」

「俺、もうラグビーやってないからそんなに食いませんよぉ」

「あら、そうだったかしら」

 くすくす混じりに謝る女性に、大河内さんも笑顔で返す。そんなやり取りにほっこりしつつも、僕はお茶を受け取ってゆっくり飲んだ。


 大河内さんはこの店の近くに住んでいる。なんでも彼が小学生の頃開店した店で、よく食べにきていたらしい。

 ラグビーをしていた頃はご飯を良く大盛りにしてもらってはあっという間に食べていて「良く噛みなさい」と店主さんに怒られていたそうだ。

 早くにお母さんを亡くされた大河内さんにとって、ここの店主さんは第二のお母さん的な存在なのだそうな。そして、大河内さんは、店主さんのから揚げがとっても大好きなんだと言う。

 出てきたから揚げは、思ったより大きく、ほかほかの湯気を立てていた。千切りキャベツも大盛りで、おまけにポテトサラダが乗っているがそれがシングルサイズのアイスクリームぐらい。

 香ばしさの中にショウガとニンニクの仄かな香りが混じっていて、食欲がそそられる。そしてふっかふかの五穀米に、懐かしい匂いがする具沢山の味噌汁。ダイコンにワカメにシイタケとネギが沢山でおいしそうだ。

 いただきます、としてからから揚げを一口。さくっ、さくっ、かりかり。噛めば噛むほど鶏肉特有の風味とちょうどいい醤油の風味が口いっぱいに広がって、よく噛みたくなる。ジューシーにつくるコツって何だろう?

 ごはんと一緒に食べつつ辺りを見ると、から揚げ定食を頼んでいる人が多かった。ここの名物なのかな? そう思って大河内さんに聞いてみると、彼は、にっ、と笑って

「あぁ、そうだよ。おばちゃんの秘伝のたれが味の秘訣でね。ま、俺も何を使っているかはあんましわからないんだけどさ」

 と語る。さすがに店主さんも教えてくれなかったが、醤油にニンニクとショウガは使っているのは解る。うーん、肉をやわらかくするために果汁とか入れてるかもなぁ、とか考えながら食べていたら……何故かカウンターにマヨネーズが置かれていた。

「これは?」

「あぁ、偶にから揚げにマヨネーズをつける人がいるからね。まぁ、私はあまりお勧めしないけど、私の主人はそうするのが大好きなのよ。それで出して置けっていわれてねぇ」

 店主さんがそう苦笑する。因みに店主さんのご主人さんはお金関係を管理してくれているらしく、調理は店主さんが中心だそうな。ご主人さんは忙しいときにホールを手伝っているようだが、今日はいなかった。

 大河内さん曰く、店主さんのご主人さんも元ラガーマンなのだという。どんな方なんだろう?


 そんな事をいいながらあっというまに完食。

 お礼を述べて会計し、僕らは店を出た。


 から揚げって、なんか食べるとほっこりする。鳥の旨みをたんのうできる、いい料理法だなぁ、とおもうよ。あ、もちろん竜田揚げもフライドチキンも好きだけど。今思えば竜田揚げとから揚げって何が動違うのか衣いがいによく分からないよね……。そんな事を話しながら僕らは帰路についた。


 そして、一週間後。僕は竜田揚げを食べる事になる。


読んでくださり、ありがとうございました。

あ、から揚げにマヨネーズってやる人います?

私は一度やって「あんまりしたくない」と思いました。やる方ごめんなさい。

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