アンコウェ……。
僕は休日にとりあえずアニメを見ていた。友人から進められたDVDなんだが、結構面白いな。
妖怪と子供が事件を解決したり冒険したりするヤツだけど、なかなかスリリング。なんだが、敵がちょっと気持ち悪い。
あー……、うん。その敵の放つモノってのが目玉一個のおたまじゃくしっぽくて。見た目アンコウのオスっぽいんだよね。
知っている人は知っているとは思うけど、アンコウの仲間の中には、オスがメスに寄生するやつがある。それに見た目がそっくりなんだ。そいつら、目が無かっただろうけど。
それに似た敵の分身体が、無機物にとりついてあれこれやらかすさまは興味深いけどリアルに遭遇するのちょっと嫌だな……。
「ん?」
アニメを見終え、そろそろ遅めの夕食でも……と考えた僕だったが、電話が鳴る。誰だろうと思いながらとると、……会社の上司だった。名前は三城さん。
「こんばんわ。どうしたんですか、三城さん」
「ちょいと臨時収入入ったんだよ。一緒に飯でもどう? 奢ってやるから」
その言葉に、僕は少し嬉しくなった。
二つ返事で用意をし、待ち合わせ場所の駅まで行く事にした。
三城さんは、僕が勤める会社で企画部長をしている。
理由あって奥さんとは離婚されており、噂ではロシア人の女性(しかもフライトアテンダントでかなりの美人さん)と再婚するんじゃないかって言われている。
そんな三城さんだが、この人はよく部下を飲みに連れて行ったりしてくれる人で、僕も良くお世話になる。
前に、あまり高くない値段だったので割り勘にしましょう、って言ったら
「後輩の面倒を見るのは俺の趣味なんだよ。だまって奢られとけ。その分後輩におごったりしてやってくれよ?」
と気前良く支払ったんだよなぁ。
お金だって無限じゃないのに、新人社員が来た際は飲み代全部持ったりしている。だいじょうぶかなぁ、とおもったら三城さん自身は資産家なんだそうな。そんな人が何故働いているかと言うと、働くのがすきなんだと言う。
まて。奥さんと離婚されて、慰謝料とお子さんの養育費払ってるんだよね、この人。……財布大丈夫なんだろうか……。
「鈴木、来てくれたか」
「は、はい」
「今日は友人がさぁ、いいモン手に入ったって言ってたんだ。お前、酒好きだろう?」
かっこよくスーツできめた三城さんが、眼鏡をかけなおしつつ豪快に笑ってそういった。見た目ちょっと怖い三城さんだが、話してみると楽しい人だ。そして、良く食べる。
「んじゃ、早速行くか!」
「はい!」
三城さんはそういって僕と一緒にタクシーに乗った。
僕は三城さんと話しながら町を眺め……ふと、思い出す。
去年のクリスマス前に、僕は三城さんに呼ばれて一緒にご飯を食べに行った。そして……、アンコウ鍋食べに連れて行かれたんだ……。
「友人がいいモン仕入れたってんでさー。一緒に食おう! 厄払いだ!!」
確か、奥さんと離婚されてむしゃくしゃしてて、そして僕とか未婚の部下つれてよく飲みに行っていた時期だ。その日も僕のほか何人かと一緒だったけど……。
アンコウが、僕を睨んでいた。
僕は、アンコウの肝が苦手なんだ。
ごめん、僕はアンキモが苦手なんだ……!
いや、その日はどうやら風邪を引いたらしく、食事中に体調を崩したんだ。だからかもしれない。けど、アンコウの肝の味がどうも駄目だったんだ。
僕は、子供の頃アンコウを食べた事がある。そのとき、アンコウの肝を食べて気持ち悪くなってから僕はこれが駄目だった……。これだけは駄目なんだ。レバーとか平気なのに。
そんなことを思っていたら、三城さんが僕の肩を叩く。
「鈴木、大丈夫か?」
「あ、はい……」
どうやら、お店に着いたらしい。僕はどうにか降り、三城さんと一緒にお店へと入った。お店には既に他のメンバーも着ていた。そして、一緒に鍋をつつく事に。
因みに、今回はホルモン鍋だった。ちょっと安心した。
読んでくださり、ありがとうございました。
因みに私もアンキモは苦手です。