第46話 定着しない間柄 【第一部・終】
あれから大騒動もなく、ファンクラブは解散になって何も起きなかった。正体のわからなかった嫌がらせもピタッと止まる。
2週間以上が過ぎて穏やかな日々が続くと、片瀬莉亜は榊本龍之介との事が現実じゃなかったのかも、という気持ちになっていた。
それでも高原学に何度も打ち明けようとしたが、何も言えないまま今に至っている。龍之介の事も何事もなかった時と変わらない関係に落ち着いているのだった。
◆◇◆◇◆◇◆
ロッカーがずらりと並んだ部屋で莉亜は着替えながら、隣の同年代の女子に問い掛けた。隣の子も莉亜と同じくメイド仲間。
莉亜がメイド服のボタンを留めながら、口をも動かす。
「はぁ……守るってどういう意味なんだろうね」
メイド仲間はハンガーを手に取り、私服をかけてからロッカーのメイドの服を取り出した。
その服の袖に腕を通しながら、問い掛けられた事に答える。
「んっ――――さ~そのまんまの意味じゃないのっと」
先に着替えが終わった莉亜はロッカー室のテーブルに腰かけた。着替えるメイド仲間の背中を見ながら呟く。
「やっぱり深い意味ない……んだ――――」
メイド仲間は最後に背中のチャックを上げ終わり、後ろの莉亜へと視線を向ける。
「でも、それどうして言われたの?」
「えっと――――色々あってね」
「しかも、男女の話?」
「うん――――でも複雑な間柄」
莉亜が答えるとメイド仲間の視線は自身の腕にむく。
腕時計の針はバイト時間を刻一刻と刻むのだった。
「まっ無駄話ここまで。バイトの時間だよ」
莉亜の腕を取って立ち上がらせる。一緒にロッカールームを出た。
◆◇◆◇◆◇◆
バイトが終わって着替えた莉亜。ロッカーの中の電話に手を伸ばす。
画面には1件メッセージが届いていた。迎えに行くからとの龍之介のメール。
莉亜にとって、ずっとあれから何をするのも一緒に行動を取ってくれる力強い味方に彼はなっていた。
事件が起こる前はそこまでしなかったが、唯一、ふたりの関係が変わざるを得なかったのはその点だけ。
なぜなら、ネットに画像をバラまいた人間を突き止められていない上、解決する目途もたっていないのだった。
龍之介が迎えに行けない時や行動を共に出来ない時は他の誰かに頼む事もある。そうする事で莉亜に危害を加えるものから、神経質に守っている。
今ではふたりにとって当たり前の事になっているのだった。
長編となるのでここらで一度完結で、第2部連載となります。長い間ありがとうございました。
シーソーゲーム ー最後の恋はどこにある?ー ~ブラザーズLOVE2~
タイトルは上記となります。気になる方は是非読みに来てもらえればです。
最近ブックマークされた方々にはお手数になるかもしてませんが、これからもお読み頂ければ幸いです。




