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42-③

「バッカみたい。あたし達皆わかってたよ、もう――――とっくに相手されてないし。それでもファンクラブだけが関わる繋がりで、唯一の望み。それがアンタが来て、あの兄弟の中に入り込んでさ、なんかもうね――――」


 言葉に詰まらせると、涙が悔しそうな目に浮かぶ。それは他の人達にも感染していた。


「何が――――したかったのか……茶番は終わり、クラブも解散」


 リーダー格の女はそう言うと、おぼつかない足取りで歩く。皆その後を急いで追いかけた。

 そして、二度とその集団達が戻って来る事はないのだった。


莉亜の頭がそれを理解するのには時間が掛った。それでも少しすると緊張が解ける。それと同時ぐらい一気に疲労が襲ってきた。そして、抑えることが出来ない恐怖が押し寄せてくる。


彼女は地面に横たわって、瞳を閉じるしかなく、目からは暖かい涙が流れて頬をつたう度に、ヒリヒリ痛むのを感じるのだった。


 それからどれくらいの時間が経ったのか、学内の賑やかさが少しなくなっている。


◆◇◆◇◆◇◆


「おい、片瀬っ。莉亜っ起きろ」


 男性に間違いない音を聴いて、安心した様子の莉亜。頑なにつぶっていた目を開ける。そこには龍之介がいた。


 ゆっくりと莉亜を起き上がらせてから、ただ何も言わず小刻みに震える華奢な身体を壊れない様に抱く龍之介。そして、髪の毛に付いた砂を丁寧に払い、伏せた顔を持ち上げた。腫れあがった頬が痛々しさを物語っている。


「女の顔に何て事を……」


 莉亜の口辺りについている血を親指でそっと拭ぐってから、もう一度抱き寄せた。


「俺たちのせいで、ごめんな」

「龍之介君たちのせいばかりじゃないの――――」


 この言葉を聞いた龍之介は自分の身体を莉亜から離して、顔を見る。彼女の真意を知りたくて。


「でも、やりすぎだろ」

「自業自得もあると、思うの」


 莉亜の表情を見ても、本心が龍之介にはわからなかった。

 すると、のらりくらり立ち上がる莉亜。


「迷惑掛けて、ごめんね」


 龍之介は目の前から消えたそうな様子の莉亜に、何も言えないでいる。

 その雰囲気に困ったような莉亜、おずおずとした様子で話し掛けた。


「そ……それじゃ――――行くね」


 学内にある建物の扉を、開ける莉亜。

 閉まるはずの扉は、少しの隙間が出来ていた。そこから足を誰かが扉に挟んだようだ。


 覚悟を決めた様子の龍之介が上の方に手を伸ばして扉を開ける。

 その様子に立ち止まる莉亜。固い意志の瞳からは逃げ出せそうもない、と感じる程だった。

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