☆第42話 2度目の密告
一晩明けた大学では朝から学生たち誰もがざわついていた。
当の本人である片瀬莉亜を除いては。
「なんか、いつもと皆雰囲気違うくない?」
周りを物色するような視線を広場に向ける莉亜。
ふたりは講義の合間、学内の中心にある屋外。
そこは公園のような広場で、いつもならたくさんの学生が講義の合間、のどかに過ごす場所。
1人でいる時は昼寝や音楽に読書とかで時間をつぶしたり、友人同士は談笑し、カップルたちはそこで愛を育む。でも、今日は誰もが莉亜たちに気を留める。振り返ってまで見る者、顔に穴があく程見る者が後を絶たないのだった。
莉亜以外にもそれを同じ様に感じているのが、鈴木あかね。
「確かにね、視線をいつもの倍感じる――――――」
あかねがそうかっ、と言わんばかりに手をポンッと叩くと、
「――――わかった、あたしの魅力を皆再確認したのね」
「何、バカな事言ってるの、あかね――――冗談はそれくらいにしておいてよね」
「莉亜ってば、ノリ悪すぎ」
「ノリ悪くてごめんね……余裕ないだけ」
「どうかした? なんかあったの?」
「なんでもない。ただ――――ちょっと色々あり過ぎて。これからの事ゆっくり整理――――――」
最後の言葉を言い切らない内に、ものすごい勢いで女の集団が彼女たちの前に現われる。
そして、莉亜だけを掴んで連れて行く。あっという間の出来事に、ただ彼女の後姿をあかねは見送った。
待つこと数分、一向に莉亜どころか誰も戻ってくる気配はない。
「説明ぐらいあってもいいと、思うんだけど……」
数分後、莉亜同様あかねもその場から去ることになるのだった。
◆◇◆◇◆◇◆
一方の連れ去られてしまった莉亜は困惑を隠せずにいた。
「またあなたたちなの? なんでこんな事? それとも何かあった?」
莉亜を連れ出してきたのは、榊本ファンクラブの女たち。相変わらずなヒステリック集団はぞろぞろとたくさんの人間がいる割には、結局、口を開くのは格上っぽい人間だけ。
理由がわからない莉亜へと、突然ものすごい剣幕で,まくし立てた。
「なんなのよこれ、ありえないっしょ」
その内の一人が莉亜の腕を掴んで無理やり長方形のディスプレイを顔へグイグイ近づける。すると、また一人加勢に増える。興奮冷めやらぬ感じでディスプレイをしきりにトントンと指で突ついた。
「そうよっこれの説明してもらおうじゃないの、納得がいくようにさ」
莉亜にはふたりだけでも十分だったが、ダメ押しのもう一人追加。
「そうだよ、これをしっかり見なっ!」
やっと画面のデカいタプレットの内容がわかるように見せられた莉亜。
「なっ――――なんなの」
その内容はというと言葉を失うもの。
それと同じ様に莉亜の顏色も失われる衝撃の様子。
誰が何の目的でこんなことを、と理不尽極まりない気持ちが押し寄せて、色々頭でおもい廻らせるも、莉亜自身にその答えがだせる訳がなかった。
ただ、莉亜が解っていることは昨夜の龍之介と見つめあっている写真がバッチリと映し出されている。
それは悪意に満ち溢れていると同時に、色々な憶測を想像させるには十分なものだった。
※第12/13話参照 第39/40話参照




