表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/100

40-④

 講義が終わると廊下に出て行く学生たち。

 彼らは自分たちが思うそれぞれの方向へと歩いて行くのだった。 


 莉亜は雑踏や会話が遠く離れて静かさを取り戻した講義室に、取り残されたかのように独りでまだいる。そんな彼女の背後から、呆れた様な口振りで声を掛けてきたのは小野寺教授。


「話題に事欠かないね、君は」

「なっ小野寺教授、どうして、ここにいるんですか?」


 不思議そうな言い方とは裏腹に、小野寺教授へ理解できない、と言った様子の莉亜は彼に怪訝な顔をする。


「それに、なんですか唐突に?」

「まず、君の質問に答えよう。通りかかった場所に君がいたのと、今や学内一の有名人じゃないか。だから有名人の君に声を掛けたのさ」

「教授、仮にも教壇に立つ人間がそんな愉しげな顏でいう事じゃ、しかも配慮なさ過ぎです」


 莉亜の深刻な顔つきからは、明らかに小野寺への軽蔑の意が込められている。そんな彼女の辛辣な態度で傲慢な彼の態度もまた一変した。


「――――――心外だね、そんな風に俺の事を…………言うとは」


 寂しげな声とともに小野寺の表情も変わり、莉亜の顏から視線を外すと真面に見ようともしない。それに慌てたのが逆に彼女だった。


「あのっ今イライラしてて――――その、ごっ――――ごめんなさい、あたし言い過ぎてしまっ――――――」

「ホントに君はからかい易いね」


 そう言うと小馬鹿にしたような微笑を浮かべる小野寺。


「なっなら、ひと言でいうと教授はアンモラルです」

「それは褒め言葉として受け取っておくよ。それよりも課題はどうなっているんだ?」

「そ……それは今書いてるので…………まだ、見せる段階じゃ」

「そうか――――――――それなら今度……」

「今度――――なんですか?」

「いや、なんでもない。気にするな。何かあればいつでも――――――」


 小野寺が何が言いたいのかを悟った莉亜は、此処ぞっとばかりに力いっぱいに拒絶を示した。


「いつでも――――――? それはないです」


 軽蔑したような口調と冷淡な表情で、ある意味感情を隠さずに答えた莉亜。

 頑ななその彼女の態度に小野寺は笑って取り繕った様にみえたが、ふと寂しげな顔つきになる。


「ああ、そうだな。それが賢明だ」


 それを最後に何事もなかったように、ふたりは講義室から正反対の方向をお互い歩き出すのだった。

※第18/25/36話参照

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ