40-③
「なに? それだけなの? 全然面白くないんだけど」
それはくそつまんない、とあかねの顔がひとりでに語り出しそうな程だった。そんな彼女に莉亜は呆れ顔。口をついて出たのがこの言葉しかなかった。
「他に言葉ないの?」
「んっ? 他……大変ねって言えばいい?」
「もういいよ。優しい言葉あかねからは期待してないから」
「だってさ、マジで面白いとこないじゃん」
「はいはい、そうだね」
「まぁ、冗談はこのくらいにして――――――」
あかねはそう言って笑っていた顔を即座に切り替えた。その顔はいつになく真剣な表情になる。
「ツブヤックーの件ホントに心辺りないの?」
「――――――なくはない……って、今まで冗談だったわけ?」
「それはもういいよ。それよりツブヤックーの事話してよ、そっちのが面白いかも」
「また証拠にもなく、そうやって面白がろうとする」
「ウソ嘘、面白がってないって、だから話なよ」
「そう? それじゃあ…………話してなかったけど、この間バイト先で――――――」
とりあえず機嫌をなおした莉亜が、記憶をたどりながら先日のバイト先での事を、確実にあった事だけ話し始める。
「それでこれがその時入ってた手紙なんだけど……」
話しながら、莉亜はおずおずと鞄から一枚の白い紙を出して、あかねの目の前に出した。
「何それっ気持ちわるっ! なんでっんなもんっ持ち歩いてんの!」
「え~とっそれは話できた時に見せようかなっと思って」
そう言いながら、自分の頬をポリポリとかく莉亜。
「そんなに気持ち悪がるなら――――――」
「いい、それ貸して。いきなりだっただから、ビックリしただけ」
腕を莉亜の前に出して、手紙を受け取ってから、あかねは紙に書いてある事を目で追うと、さっき彼女から聞いた事がそのままそれには書いてあった。
「じゃあ、その手紙を書いた奴見つければいいんじゃない?」
「そんなに簡単に言わないでよ」
ため息をつかんばかりに答える莉亜。あかねから手紙を受け取ると手紙を鞄へしまう。
莉亜の様子をみながら、まだ手紙の主の話を続けるあかね。
「でも、どう考えたってそいつでしょ」
「かもだけど、証拠がない上に誰だか見当もつかないし」
「ってかさ、カフェに来るあんたの常連しかいないでしょ」
「だよね、あたしも少しだけそう思ってるんだけど。そこまで変な人いないと思いたいんだけど」
「そっ? 十分変だって、メイドカフェ行く奴なんて」
「趣味は人それぞれだしね、他人がとやかく言うもんじゃないと思う」
「まっどうでもいいんだけどね、そんな事」
結局、手紙の主の話はそれ以上進展がないまま、ふたりはそれぞれの講義へ。
※第39話参照




