40-②
「ここに来るまで、学長にツブヤックーの件で、呼び出されたんだよね」
「マジで? それかなり面白いネタじゃん。あんたやっぱもってるね~」
「そんなに面白い? あたしのネタ?」
冷めた表情と言葉を言うと自分の方を見る莉亜。いつもの彼女と違って、あかねは空気を読むとそれには答えないで、話を促した。
「それよりさ、その話を聞きたいな~」
すんなり莉亜はその言葉を受け止める。そして、渋々と言った感じで話を再開した。あかねに、学長に呼び出された時の事を、ボソボソと話し始めた。
ツブヤックーの事で、学長室に呼ばれた莉亜と龍之介。
何故、ふたりが呼ばれたかと言うと、この大学のツブヤックーアカウントに誰かが、莉亜と龍之介のツーショット写真を、大学のアカウント側のつぶやきへと、返信で情報を載せたらしく、それがたくさんの学生たちで、拡散という形でそれぞれの学生のアカウント、そして、良人のアカウントにも回ってきた。
その事が発端らしいという事を目の前の学長が説明してくれたのだった。
「ただ、どこの誰がどういった意図や目的でしたのかは、わかりません。あなた方には心辺りはありませんか?」
渋い顔の女性はそう言って、二人を交互にみる。白髪交じりの髪を後ろで束ねていて、しわのないスーツを着た身なりが、女性の清廉さをあらわしている。
「では、もうひとつ。ここに書いてある事は事実なのですか?」
彼女は真っ直ぐな瞳で、改めて二人の瞳をうかがい見た。
「あの、学長そこに書いてある事は事実もあり事実ではない事も」
学長の問い掛けに答えたのは莉亜だった。
「では、訊きますが、ふたりはどういった関係ですか?」
「同棲ではなく、同居です。彼の家にお世話になっているんです。彼のご兄弟も住んでますし、二人っきりという事ではないですし、父が彼の親御さんと友人なんです。事情がある自分を置いてくれてるだけなんです」
「あなた方の言い分はわかりました。ですが、ここには学生寮もあるのですよ?」
「彼女のご両親というか、父親がリストラにあい、今お金がない状態なんです。だから、うちの親が彼女に下宿をさせている状態で、とても学生寮に入れる状態じゃないようなんで、今」
「なるほど、事情はわかりました。それではここに書いている事はある意味事実を捻じ曲げていると。ですが、私どもは親御さんから学生たちを任されている立場にあります。今後もこう言った事が重なれば考えさせてもらう事になるでしょう。今回は事情を踏まえて、見守る事にしましょう。ですが、これからの行動は慎重に願いますよ」
「ありがとうございます」
莉亜はそう言うと嬉しそうに頭を下げるのだった。




