第35話 後悔の波
「なんだよ。せっかく気を使ってやったのに」
祐大は莉亜へ恩をきせる物言いをした上に、そればかりか引っかかる事を言うのだった。
「気を使った……って、今日の学くんとの事とそれ何か関係あるの?」
「あれ、まだ知らねぇ~のか。俺があいつの背中を押してやったんだぜ」
「どうしてそんな事――――――そんな余計な事するの…………自分がされたら、怒るのに」
「余計な事じゃねぇだろ、ふたりがそうなるのは自然だぜ? そりゃ――――――お前的には今日じゃなかったみたいだけどな」
「今日じゃないとかっていう……問題じゃないよ」
「じゃあ、なんだよっ?」
追究する祐大の質問に、莉亜は黙ったまま何も言い返さない。
「答えられないんだったら、この話はもう終わりな。だいたい俺にキレるの、お門違いだろ」
眉間にしわを寄せて不機嫌な表情の祐大が、莉亜との不毛な会話を終わらせるのに、キッチンから出て行こうとする。
「――――――待って、話は……終わってないから」
と、莉亜が呼び止めようとした時、祐大とは別の誰かが代わりに答えた。
「リアちゃん、そこからはふたりの問題だから、僕と話し合おう」
そう言って高原学が現れた。そして、祐大が最後にふたりへ向かってひと言だけ言うのだった。
「俺もそいつの言った事に賛成だから、とことん話合えよ。じゃ、後はおふたりさんだけで」
それだけ言い残すとふたりの前からいなくなる祐大。
学も莉亜と面と向かって話したい様子。キッチンにいる彼女の方へ歩いて行く。
そして、莉亜の前にたどり着いた時点で、彼女の方から口を開いた。
「さっきの事で、学くんと話す事なんて……ない」
「あるよ、明らかに祐大さんと話す話題じゃない。当事者同士で話す事だよ、どうして避けるの?」
「避けてないよ、ただ……わからないの。どうして、一緒にいるだけじゃダメなの?」
「ダメじゃないよ。でも、好きな人に触れたり、その事で今よりもふたりが親密になれたらって、僕は思ってたよ――――――前から」
「…………でもね、その事を昨日今日会った、よくも知りもしない……祐大くんに言われてするなんて……」
「それは、たまたまだよ。僕自身、君と離れて二か月以上も経った今、すぐにでも……って思ってた。だから、背中を押された僕には、今日がそのタイミングだったんだ」
莉亜はうつむいたまま何も答えない。その様子で学は自分のした事を後悔し始めるのだった。
「でも、怖がらせてごめん。その事は反省するよ。もう勝手に暴走したりしないから」
「――――――――ごめんなさい、タイミングがどうとかじゃ…………ごめんね、今、色々言われても……なにも考えられない」
そう言った莉亜が学との話を終わらせた。




