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33ー②

「あっごめん、リアちゃん」


 学の申し訳なさそうな声に、莉亜が顔を上げると目の前には当惑した顏。

 それはいつもと違う様子で自分を愛おしそうに見つめる眼差し。それでいて瞳の奥が不安そうな、自信のなさそうな感じだった。


 莉亜は緊張で身体全体に力がはいった様子の彼に対して、リラックスさせる為に、笑顔で答える。


「ううん、大丈夫だよ」

「よかった。でも、こうやってふたりで話す事ができるなんて夢みたいだよ」

「どうして? 大袈裟だよ、学くん」

「そんな事ないよ。僕が友達からでいいから付き合ってほしいって言った時はこうなるなんて想像もしなかったよ。あれから勇気出して告白してよかった。今、ホントにそう思うんだ」

「なんだか――――――その頃が懐かしいね」

「うん。それに昔からふたりきりになる事なんてないしね。まして――――――今みたいにリアちゃんの部屋で話したこともないだろ……僕たち?」

「そうだったね。いつもなんだかんだで周りに友達とかいたしね」

「それに、リアちゃんが付き合い始めてすぐに日本に行っちゃったから、ホントはすごく不安で仕方なかったんだ。でも、今はこうしてふたりきりになれた――――――」


 そう言った学は黙ると次に隣にいる莉亜へ視線を向ける。そして、彼女の頬に手をそえる。無言のままそっと瞳を閉じた。

 莉亜の唇にふれかけた、その時、彼女がおもむろに立ち上がる。


「あの、あたし……その――――――まだ」


 その声でキスをしようとした体制のままの学。空中に浮く自分の腕をおろしてから、ゆっくり瞳を開ける。


「まだ…………ダメなの」


 もどかしいと言った様子の学がそう呟く。

 それには何も答えられない莉亜。戸惑ったまま立ちつくすのだった。

 学はその彼女を見上げると、ゆっくり立ち上がった。何も言わず、ただ悲しそうな瞳で彼女を見る事しかできないのだった。


 莉亜もどうすればいいのか、わからない。


 恋愛をするって事が一緒にいて楽しいだけじゃダメだなんて、自分には理解できない。恋人って事がキスもそれ以上の事も含まれるのなら、どうしてそう言った事を求められるのかもわからない――――――今のあたしの気持ちじゃ、次に進めない。


 そう思い悩んだ莉亜は自分なりの答えを出した。


「もう……少しだけ――――――――」


 そう言った莉亜の腕をまた学が掴む。


「ねぇ、リアちゃん……前から聞きたかったけど、僕の事をホントに恋人として好き?」

「当たり前だよ、学くんの事好きに決まってる」

「だったら――――――感情のまま」


 それ以上何も言わなくなった学の方を莉亜が見上げる。すると、学はそのまま莉亜の唇へと自分のくちびるを重ねた。


 何が起こったのかわからない莉亜はただ状況が飲み込めないで、何度も眼を瞬きさせて固まる。そんな莉亜の反応で彼女の唇を自分から解放した学。それでも彼女を抱き寄せたまま、目の前にいる彼女をみつめた。


「――――――こういう事だから」

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