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第32話 彼らのたくらみ

 高原学は片瀬莉亜の部屋のドアノブを掴んで、ゆっくりひと呼吸する。そして、榊本祐大の言葉を思い出していた。


「俺がお膳立てしてやっから、うまくやれよ」


 と、言われたのを胸に学は部屋のドアを開く。中では莉亜が絨毯の上でくつろいでいる所だった。


「あっ学くん」


 そう言いながら、少し驚いている様子の莉亜。

 すぐにくつろいでいた姿勢を正して、学を見てから立ち上がった。


「あれ、急にどうかした?」

「うん――――なんか……ふたりで過ごしたくて」

「そっか。じゃ、飲み物か何か持ってくるね」


 そう言って莉亜が外へ出る為、学と入れ替わる様な形で部屋のドア前に移動した。そんな彼女に感謝を伝えようと、部屋から出ようとしている彼女へ声を掛ける。


「うん、ありがとう」


 その言葉に応える様に学へ微笑んだ莉亜。部屋を出て下の階にあるキッチンへ階段を下りるのだった。




◆◇◆◇◆




 キッチンでは良人が忙しく、夕飯を作るためか、冷蔵庫からいろいろ材料を取り出して、水で洗ったりしている所だった。

 

「良人くん、大変そうだね。よかったら、少し手伝おっか?」


 莉亜の言葉で良人が手に持っているブロッコリーを洗いながら、彼女の方を振り返る。


「片瀬さん、ありがとう。上で休んでたんじゃなかったの?」

「うん、そうなんだけど、いつもより忙しそうだったから」

「ああ。それは最近、人数が増えたからなぁ~」


 少しだけ眉を下に下げた、情けない顔で答える良人。その表情と言葉で莉亜は学たちの事だ、と察して、彼の傍へと莉亜が立つ。そして、彼女は学を手伝い始めた。


「ごめんね――――あたしが気が付いてれば」


 莉亜はか細い声でそ言うと、チラッと斜め上にある良人の横顔を上目づかいに見つめる。

 その彼女をポカンとした表情で良人もまた莉亜を見た。


「えっ、何が?」

 

 良人から目を伏せ気味に、莉亜は口を小さく動かす。


「んっと……学くんたち――――の事」

「ああ、いいのいいの。片瀬さんが謝る事じゃないよ」


 そう言葉を返すと良人は莉亜から視線を自分の手に戻した。そして、止まっていた手を動かし始める。

 良人の手が動くと莉亜も同じように野菜を洗うのに手を動かす。手に取ったレタスを見ながら、彼女はまた声を出した。


「でも、人数増えたのって――――――」

「許可したのは俺もなんだし。気にする事ないんだよ」

 

 良人が莉亜へ視線を戻してからそう言うと、彼女を見つめる瞳は柔和な目をしていた。

 穏やかな良人の瞳に莉亜も彼の考え方に触れられて、心の底から安心する。


「――――うん」


 見つめ合って微笑み合うふたり。そんなふたりが和んでいるキッチンに、野太い男の声がした。

 それは空気を一変させるのだった。

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