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31ー②

 二階の廊下で高原学とすれ違う榊本祐大。

 学の背後から声を掛けるのだった。


「ようっ」

「えっと……」


 学は陽気な声の方へ振り返るがなかなか名前が出てこなく、すぐには真面な会話ができない。自分の額に手をやると悩むような素振りで話すのだった。


「――――――――たしか、……大さん――――そうっ祐大さんでしたよね?」

「ああ」


 祐大の快い返答に学も笑顔に変わるのだった。


「よかった、名前あってて。ご兄弟多いいから名前がすぐには出なくて……すみません」

「ああ、んな事いいのいいの。それよりか――――――――」

「はい?」


 キョトンとした顏で祐大を不思議そうに見る学。


「男同士話でもするか? それとこれからはタメでいいから」


 そう言うと祐大が有無も言わさずに学の肩をガッチリと捕まえる。そして、ふたりは祐大の部屋に行くのだった。


 ベットにはこの部屋の主である祐大が腰を落ち着かせている。その目の前には机とセットになっているイスがある。そこへ学は座らされていた。


 柔らかい素材で出来たイスの背もたれに腰をあずけたら、後ろに少しだけそれが傾いた。座り心地が良くてすっかり安心する学。

 その様子を見ていた祐大が話を切り出した。


「部屋わりに満足してんのか?」

「えっそれは――――――もちろん。下宿させてもらえるだけでありがたいと思ってるからね」

「たくっ情けねぇーな。それでも男か、お前?」

「何が言いたいのか、わかんないなぁ……」


 相も変わらず学はキョトンとした表情で、祐大のしかめっ面の顔を見つめる。

 祐大はその態度が余計にイライラするのだった。


「だから、わかんねー奴だな。彼女と同じ部屋じゃなくていいなんておかしいだろって、話だろ?」


 祐大から答えを催促されると部屋の床を見つめた学。そして、顏を赤くしてからもごもごと曖昧な態度。


「同じ部屋はやっぱり……」

「何、照れてんだよ。気持ちわりーな」

「あはは――――でもさ、実は……僕たち、まだ――――――」

「ああ、知ってるぜ。まだらしいなキスも」

「ていうか、手もまともにつないだ事もないからね」


 呆れた口調で答えた祐大に学は自分の頬を指でポリポリとバツの悪そうな顔でかいた。


「あのなぁ~女っていう生き物はだな……もっと、こう――――――なんて言うか……」

「なんて言うか、の……続きは?」

「こう、肉食的な猛獣をだな……求めてんだよっいつだって」

「肉――――食……的な猛獣―――――」

「ホントわかんねーヤローだな。もっと積極的にリードしてやれって、言ってんだよっ」

「リードってどんな風に?」

「っんな事っテメーで考えろっ――――――――まっ俺だったら、押し倒すくらいするけどな」

「そっそんな事できないよ……僕には」

「じゃっ自分で考えろ」


 祐大が呆れた表情をしたと思えば、そう言うと口を閉じた。

 学も感慨深いような面持で悩み出した。すると、口を閉じていた祐大がまたも言葉を発する。

 

「それに、お前らお互い好意があるなら、どうすればいいかは自然にわかるだろ? その感情通りに動けばいいんだよ」


 祐大の言葉が妙に心に響いた学。ポツリと彼の言葉を無意識的につぶやくのだった。


「感情通りに――――ね……」

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