30-③
このお話は加筆執筆した部分。2019年3月6日新たな追加のストーリー。
最新話ではないのでご注意ください。
龍之介の様子を気にしながら、ちさとはぽつぽつと自分のこれまでの恋愛話をし始める。
「あたしの初恋はね、12歳の時だったの」
「どんな奴だった?」
「天邪鬼な奴。毎年ある会社のパーティーで会ったのが初めて」
「そう」
「その男の子と会ったのは小学校入学した頃だったな、いつも意地悪でね」
「それって、典型的な好きな子の気を引くやつだね」
「女子ってそう言うのわからないから、ホントにイジワルされてるっと思うのよ」
ちさとが龍之介もしてたのっという様な表情で彼の顔を確かめ見る。
「俺はしないよ」
「そうなんだ。それでね、その子と会うと毎回喧嘩してたの。でもある時あたしが大事にしてる洋服が、その男の子を外に追いかけた時に、枝に引っかかって破けてしまったの」
「それでどうしたの?」
「あたしは追いかける事も忘れて大泣きしたのよ。男の子は乱暴な優しい言葉で慰めるのよ。その様子が必死であたしは途中涙が止まったわ」
「そしたら?」
「そしたらね、その子がね――なんだよ嘘なきじゃん、心配して損したって。嘘なきじゃないって訴えたのよ。でもそれで涙が引いたの。彼と喧嘩するのに」
「それって泣くのを止めたくて、考えたんだな」
「ええ、いかにも天邪鬼な彼らしかったわ。最後帰る時、おもちゃのネックレスをくれたわ」
「どんなネックレスだったの?」
「バラの花の部分だけのもの。真っ赤じゃなく少し落ち着いた色味で凄く素敵だったし可愛かったわ」
昔の恋を懐かしむちさとの顔はとても綺麗でそれでいて愛おしかった。龍之介は黙って彼女の話を頷きながら聞いていた。
「それにね、渡し方が。お前はその服に合あわないから、これやるよってね」
「上から目線だな、随分」
「でしょ、彼はいつだってそうだった。でもねそれを最後に沢山いた子供たちから姿を消したのよ」
「どうして?」
「わからない。全くわからなくて、その次の年あたしが13の時、彼にお返しをもってパーティーに行ったけどそれっきり会わなくなったの。これで初恋の話は終わり」
「それで終わったの?」
「ええ、遠い昔話。今と比べればね」
「もしかして、俺にそれを言いたかったの?」
「――さぁ、どうかな。言える事は今を大事にしよ」




