第25話 教授の助言
ひと晩経って、大学へきても莉亜の気持ちが晴れる事はなかった。慶太の事もあかねの事も頭にこびりついて離れないのだった。
「浮かない顔しているね」
見上げるとそこには文学教授が紙で包まれたものを手に握ってそこにいた。
「あっ教授……」
「そこ席いいかな?」
と、小野寺教授は爽やかな微笑みで、莉亜の隣の席を催促した。
「――――どうぞ」
莉亜がそう言ってから、自分の荷物をよけて席を空ける。苦笑いする彼女の隣に教授が座った。
いつもと様子が違う莉亜をもう一度うかがい見る教授。
「さてと、どうかしたのかい?」
「えっ」
「前に言っただろ? 時間ならあるって」
「そうでしたね―――――――」
莉亜は話をするのを躊躇して、少し間をおく。また何か自分が余計な事を話さないように、よく考えるのだった。
「ふむ、これはうまい」
と、大きな口を開けるとホットドッグにかぶり付く小野寺。
その姿を少し呆れたような戸惑ったような顔で莉亜が見る。
「君も飯を食わないのか?」
「ちょっと、食欲が……」
小野寺教授がそう言った莉亜のご飯を物欲しげに見た。それに気づいた彼女は苦笑いで勧める。
「食べますか?」
「いらないのなら、頂こうか」
仕方ないというような素振りで、小野寺は莉亜の食べ残したざるそばを音を立てながら食べ始めた。
莉亜がそんな小野寺教授の行動を冷ややかな目で見る。
(って、冗談なんだけどな……)
「で、食欲がないのはどうしてなんだ?」
小野寺教授が意外と話をちゃんと聞いていたのに驚き答える莉亜。
「えっ――――――ああ。さっきのちゃんと聞かれていたんですね」
食べ終わった小野寺教授は自分のマイお箸を箸箱に片付けてから答える。
「意外か? ふむ……意外と人の話をちゃんと聞くタイプなんでね」
ため息にも似た声で、考えながら話し出した莉亜。
「どう――――――話したらいいのかな。友人らを……怒らしてしまったらしく――――――」
「ふむ……」
莉亜の言葉に返事をするが、次への言葉に対して少し沈黙する小野寺教授。
「――――――人には話たくない事や、隠しておきたい事もあるだろう。特に大事に思っている相手には、ね」
「大事かは、わからないけど、態度からすると触れられたくないのかなって」
「だとしたら、君が逆に触れる事で解決すんじゃないのか?」
「そんな事できないし――――――――したくないです」
「いや、相手は意外と」
小野寺が最後まで言わない内に莉亜が、怒りにも似た声を出した。
「無責任な事……言わないで下さい」
「俺から言わせてもらったら、君のがよっぽど無責任だろ? 君は既に相手を怒らせた。なら、君自身気がついていないだけで――――――相手の世界に足を踏み入れたんだよ、もう」
※第18話参照




