23ー②
「――――――んっ!!」
驚く気持ちとやっぱりと思った気持ちが莉亜を焦らせるのだった。カートをサービスカウンターに預けて急ぐ。そして、アナウンスで聞いた場所へと向かった。
あがる息を整えてから莉亜はインフォメーションカウンターの受付の女性に慶太の事を尋ねた。
「あの、榊本慶太の連れの者ですが――――――」
「榊本慶太さまのお連れ様ですね。医務室の方にご案内致しますので、こちらへ」
莉亜はそう受付の女性に言われると、ふたりいた受付嬢の内、1人が席を立ってから自分の前に出て来ると何処かへと案内する素振りをされるのだった。
受付嬢に促されて莉亜が連れて来られたのは、聞き間違いではなく、やっぱり医務室だった。その言葉が自分の聞き間違いではなかったんだと、改めて思い知らされる莉亜。
自分を落ち着かせる為に口から息をはく。そして、入口のドアを開けると一番最初に視線がいったのは小さな四角い灰色のワゴン。
その上には簡単な消毒のキッドが置いてあった。
医務室の中に入ると消毒液のニオイが莉亜の鼻をおおう。見渡すと他に部屋にあるのは大人が1人やっと寝れるかぐらいのベッドと1人掛けのソファ。壁も天井も白を中心で清潔感溢れる部屋になっていた。
部屋の奥に進んだ莉亜が目にしたのは、ベッドで横になって眠る慶太。
慶太が横になっている姿を見た莉亜は、心配で思わず口から慶太の名前がこぼれる。
「慶太さん……」
「お客様のお連れ様でお間違いないようですね。お怪我はしておりませんのでご安心下さい。少しご気分が優れていない様でしたので、こちらへお連れ致しました」
「そうですか――――ホントにありがとうございます」
「どうか、お身体がご回復なされるまで、ご使用して下さい」
「ホントにホントにありがとうございます」
「それでは、わたくしは失礼致します」
受付嬢は莉亜に会釈してから、ドアを開けて、自分の持場へと戻った。莉亜も同じ様に彼女へ軽く会釈。そして、見送ってからベットの近くにあったイスを自分の方へ引き寄せて腰掛けた。
慶太はベットでいまだ熟睡。そんな彼を莉亜はただ見守る事しかできないでいた。
――――――――――――30分が経過する。いまだ目を開ける気配がない慶太。すると、何度も何度も繰り返してうわごとを言いながら、必死に何かを捜し求める。莉亜の方へ手を伸ばし、彼女の手を握った。
突然の出来事に抵抗する事も振り払う事もできないでいる莉亜。ただボー然とする中、彼女も慶太の白い手をそっと握るのだった。




