第23話 リピートする、うわごと
少し日差しが柔らかくなってきた頃、莉亜と慶太のふたりは榊本家がよく利用している大型スーパーにやって来ていた。それは普通のスーパーよりも規模がでかい有名なところだった。
店舗は5階まであり、その上は立体駐車場になっている。
そして、1階は品揃えが豊富な食料品売り場。2階は日用・生活雑貨・化粧品。3階は衣料品・子供服。4階は紳士服・婦人服・小規模な電化製品売り場だった。
ちなみに5階は和洋中を取り揃えたレストラン街になっている。
駐車場に車を止めて、ふたりは店内にあるエレベーターで、食料品がある1階の売り場へと移動するのだった。
慶太がカゴを乗せたカート押して、その隣に莉亜も並んで歩く。こんな風に並んで歩いた事もなければ、楽しくふたりでおしゃべりしたこともない。
莉亜は改めてそんな事に気づくと緊張しているのが自分でもわかった。
慶太もこれまで兄弟以外の人間と共に行動するなど、ほとんどなく、勉強以外の事には正直興味がわかなくなっていた。
そんな状態の現在に至っているが、過去のある時期を除いて。過去はもっと他人に対して、今よりかはまっしな態度だった。
久しぶりに誰かと共に行動している事で、急に戸惑いやら色んな感情が自分を襲う。真っ白な顔で黙ったまま、淡々とカートを押しながら歩く。
慶太にはそれがやっとの事だった。
隣にいる莉亜がふと、慶太の顔から冷汗が噴き出ているのに気づいた。それで彼の体調がおかしいと感じると声を掛ける。
「慶太さん、顔色が悪いみたい。少し休憩した方がいいと思う」
慶太は自分を気づかう莉亜をみて、素直に頷いた。
「悪い……後から俺も休憩したら、合流するよ」
「うん」
それでふたりはそれぞれわかれるのだった。
慶太が押していたカートを莉亜が受け継ぐと食品売り場へ消えていく。
莉亜の後ろ姿を見送ると慶太は休憩できそうな場所へと移動した。
別行動から15分経過するが莉亜は必要な食品のメモを片手に独り店内を物色中。
しばらく、商品の棚の通路を行ったり来たりしながら、5人分×1週間の食料品が気がつけば、カゴの中てんこ盛りになっているのだった。
手にしていた品物を最後溢れんばかりのプラッチクのカゴにそっと落ちない様乗せる。
「これで買い物は終わりみたいだから、清算しないとね」
と、ひとり言を言うと莉亜はレジへと並ぶのだった。清算も終了して、袋へと食品を詰め込み終わるとやっとそこで気づくのだった。今だ慶太の姿が現れない事に。
莉亜が気づいたと同時に店内アナウンスが流れる。
「本日も当店にご来店頂きましてありがとうございます。お客様にご案内申し上げます。榊本慶太さまのお連れ様がいらっしゃいましたら、至急1階インフォメーションカウンターにお越し下さい。
繰り返します。榊本慶太さまのお連れ様がいらっしゃいましたら、至急1階インフォメーションカウンターにお越し下さい」