17ー②
『ケース3 マイペースな彼ら』
「んっなんか言ったか、良人?」
「いや、なにも。それより慶太、それ何?」
「イグアナだけど、預かるのは問題ないよな」
「たぶん……今日みたく、逃がさなきゃね」
「今日は少し油断しただけだ。これからは逃げれないよう、ちゃんとする」
気に入らないといった表情の慶太が良人に言いたい事を言って、脱衣所を出る。
脱衣所に残ったふたりで、莉亜を床から、持ち上げようと試みるのだった。
「で――――この女どうすんだ、良人」
「とりあえず、肩かして。ふたりで立ち上がらせれれば、後は俺ひとりでも大丈夫だと思う」
「ったく、世話がかかる女だな」
祐大と良人の肩に、莉亜の腕を片方ずつ、ふたりの首に乗せる。
思い通り、床から莉亜を立たせる事に成功したふたり。
祐大は立たせたばかりの莉亜の腕をさっさと手放した。上半身が裸の彼は身体が冷えて震えている。
「ったく。お前らのせいで、湯冷めしたじゃねーか」
「まさかこんな事になるとは思ってなかったし」
「もう一度温もるから。言っとけよ、その女に」
「ちゃんと言っとくよ。ゆっくり入って」
脱衣所の扉をそう言ってから良人は、莉亜を背負いながら、どうにかドアを閉める。ひとりで、莉亜を脱衣所から2階の彼女の部屋まで連れて行くのだった。
◆◇◆◇◆
良人は最後の力を振り絞って、莉亜をベッドに寝かせる。
安堵のため息がひとつ、こぼれた。
「フゥ――――――」
卒倒した今もうなされる莉亜。その彼女の手を取り、ソッと握る。
「かわいそうに、よっぽど、驚いたんだな」
うめき声を出しながら、莉亜が目覚め始めた。
「……っん、んん――――ヴゥ~」
「目が覚めた? 大丈夫?」
「――――あたし、なんでココに?」
「脱衣所で、倒れちゃって」
ベッドから、莉亜は良人の顔を見上げながら、さっきの事を思い出そうとする。
「――――あたし、お風呂、入ろうと、思って……」
思い出したくないモノまで、思い出したらしく、莉亜はそれ以上話すのをやめた。
「何も思い出さなくて、いいから、大丈夫」
「う……うん」
「もうこんな事は、起こらない様にするから」
「うん――――――」
莉亜が捨て猫のような瞳で、良人を心細そうに見つめた。
助けを求める潤んだ瞳に、応えるべく良人は莉亜を元気づける。
「大丈夫、ちゃんと生活できるように工夫するから」
「――――うん」
「だから、もう心配しないで」
「いつも、ありがとうね。――――良人くん」
「ううん、そんな事気にしてたら、ココじゃ生活できないよ」
「……うん。そうだね」
「そうそう。今日は少し休んでから、お風呂行くといいよ」
「うん、そうするね」
「それじゃ――――――」
良人は立ち上がって、莉亜のまぶたを閉じるのを見てから、部屋を暗くして出たのだった。




