第17話 やっかいな同居人
重要なサブキャラなどがこれからの展開へと絡み、主人公が4兄弟との同居生活を順応しようと奮闘します。
高原学宛てにメールを莉亜は書いている。使い慣れたパソコンに、座り慣れた椅子に腰掛け、机の上にあるノートパソコンのキーボードを手慣れた手つきで弾く。
アメリカを旅立ってから、今日までの事を――――――高原学が心配するような事は除いて。
――――同居している家族の人も優しい人ばかりで、うまくやってる。
日本の生活は順調にスタートしたから、心配しないで。
最近は友達もできたし、学くんもそっちで頑張ってね――――
「これでヨシッと」
送信ボタンをマウスでクリックして送信を済ませた莉亜。立ち上がると身体全体で伸びをする。
「メールも送信したし、お風呂でもいこっかな」
お風呂の用意をして、2階から降りて、まっすぐに脱衣所へ向かう莉亜。何も疑わず、脱衣所のドアを開ける。
『ケース1 未知との遭遇』
「キャーーーーー」
悲鳴が、榊本家に響いた。
莉亜の悲鳴を聞いて、良人が一番最初に、脱衣所に到着する。
「片瀬さん、どうかした?」
廊下側に開きっ放しなった脱衣所の扉の下に、脱衣所の床を徘徊する未知の生物がいる。
それを指差した莉亜は、言葉にならない声で、良人に訴える。
「アッアッアッ」
腰を抜かした莉亜に、良人が駆け寄り、彼女が指差す生物を見る。
「なんで、こんなとこに?」
『ケース2 お約束』
「なんだよ、騒がしいな」
お風呂と脱衣所の間にある引き戸が、男の声と共に鈍い音を立てて開くのだった。
莉亜はその音につられたのか、お風呂の方を見る。
そこには鍛え上げられた筋肉美の男が――――何も隠さずありのままの姿で現れた。目の前には真っ裸な祐大の姿に、自分を目指して歩く未知の生物とのダブルショックで、莉亜はこと切れた模様。その場で気を失うのだった。
「祐大、頼むから、そのフルチ……んじゃなく、前隠してくれ」
「おっ、わりぃ」
良人に言われて気が付いたのか、タオルを腰に巻く祐大。脱衣所でサッとバスタオルで体を拭いた。
「にしても、良人、何があったんだよ?」
莉亜を抱えたまま身動きができずにいる良人は、顔で合図を祐大へ送る。
「原因はそれだよ、それ」
良人の視線を辿る祐大。そこには緑色の堅そうな皮膚をした生物がいた。
「コイツか」
緑色の物体を床から、持ち上げる祐大。じっくりと観察した。
「見た事ねぇな」
「じゃあ、迷い込んできたとか?」
ふたりがそんな会話をしていると、遅れて慶太が現れるのだった。
「ここにいたのか」
慶太はそう言って祐大から、緑色の生物を受け取る。
「何、そいつ兄貴のか?」
「ああ。今ちょっと預かっ――――」
慶太がそう言いかけた時、良人と莉亜のふたりの姿が目に飛び込む。この異常な状況に気が付くのだった。
「何かあったのか?」
「慶太が逃がした、そいつのせいで、ね」
「この女、そいつを見て気を失ったらしいぜ」
「ホントは他にも理由あるけどね」
誰にも聞こえない様に、小さな声で、良人は莉亜の顔を見たままつぶやいた。
※第2話参照




