第16話 新しい友人
莉亜が良人に言われた食堂へ、自分の転入手続を済ませ行くと、食堂には予想以上の学生たちがいる。
「結構、人多いいな」
人を避けながら、食堂を進む。キャンパスを一望できるガラス張りのカウンター席が、莉亜の目に飛び込んできた。
「あそこ、良さそう」
莉亜がそう言って、いくつかある椅子のひとつに座る。
隣には男性にとって、すごく魅力的な女性がいた。
莉亜は今後の自分の為に、その彼女を勉強がてら、観察する事にした。
女性に気づかれないよう、最新の注意を払いながら、横目でチラッと女性を見る。
髪は短めで、色はミルクティー色の髪の毛。目がパッチリして、唇なんかは、自分と違って、すごくプックリとしている。
まるで某セクシーハリウッド女優でも想像させるぐらいに――――――服装はというと、適度に露出があり、セクシー系のブラックが、基本のスタイル。つるんと長くて綺麗な細い足がショートパンツから、堂々とお目見えしている。
莉亜は背丈・体型が、まったく自分とは違う事に、思わずため息が出るのだった。
「ハァ」
「ため息なんかついて、どうかした?」
「えっ、ううん、なんでもないの」
「そっ」
他愛ない会話を終えるふたり。
だが、莉亜の顔を見て女性は何かを思い出した様子。そして、マジマジと莉亜をのぞき込んでから、言う。
「あれっ貴女……例の――――良人んちの」
「いえ、違います」
例のと言う言葉をきいた莉亜は、反射的に横顔を手で隠す。
「でも、さっき一緒にいなかったっけ、か?」
「それ、ものすごく人違いです」
おもむろに女性が立ち上がって、莉亜の席に近づく。
「ねぇ、そんなに警戒しなくても、大丈夫だから」
「全然警戒だなんて、してません。人違いなのにする訳ないじゃないですか」
莉亜の背後辺りから、女性が肩に手を置いた。力いっぱい自分の方に振り向かせる。
椅子がクルンと勢いよく回って、ふたりの目と目が合った。
「なら、なんで顏がそんなに強張ってんのよ」
何も言わず、ゆっくりと莉亜は立ち上がって、一歩踏み出した。
横には女性がまだいるのに、突如逃走を図る莉亜。
「黙って、逃げるな。話をきけ!」
あえなく失敗。 逃げようとする莉亜の首根っこを掴む女性。
両腕をジタバタ動かし、抵抗する莉亜。
「だから、人違いですってば」
「フゥ――――あたしなら、良人の幼馴染だから。安心してよ」
女性がそう言って、掴んでいた莉亜の首根っこを放した。その反動で彼女は、勢い余ってずっこける。
「いったぁぁぁぁ」
「あっ悪い。わざとじゃない」
床に、はいつくばる莉亜を、女性が上から見下ろして言うのだった。自分の顔の前で両手を合わせてから、莉亜へすまなさそうに手を差し伸べる。
「……ほら」
腰を擦りながら、莉亜は差し出してくれた手を掴んだ。
「ありがとう……」
「悪かったね」
「もう、いいですよ」
「じゃあ、気を取り直して。あたしは鈴木あかね。そっちは?」
「あたし?」
莉亜が自分を指差した。
鈴木あかねは莉亜をみて、軽く頷いた。
「――――――あたしは」
イカレタ集団の事もあって、ほんの少しためらう莉亜。
「……片瀬、莉亜」
「カタセリア、ね。莉亜でいい? あたしはあかねでいいよ」
「あたしも、それでいいよ。じゃあ、改めてよろしく」
軽く笑って莉亜は、鈴木あかねに手を差し出した。
莉亜の手にあかねは改めて触れるのだった。
「こちらこそ」




