13ー②
龍之介はいつまでもキョトンとしている莉亜に声を掛けた。
「正真正銘、俺は龍之介だよ。で、何か言いたい事は?」
それで気を取り直したのか、莉亜は飛行機で会った時とは雰囲気が違う龍之介を、改めて、くまなく見た。この間よりもラフな格好の彼の全身を。
「だって、初めて会った時と顏の雰囲気が、違うし……」
「カラコンと髪型のせいだな」
「うん。それと服も、かな」
「――――かもな」
「でも、どうして?」
「俺もココの学生だから」
「そういう事じゃなくて――――」
「どういう意味だ?」
「だから……龍之介くん、あたしの事をどうして、助けたの?」
「その事か――――困っている人間がいたら、助けるのが、人として――――だろ?」
「フッ、そうだったね」
あの時の空港での事を思い出し、莉亜はおもいだし笑いをした。(※第4話②参照)
そんな莉亜のクッシャクッシャの笑顔をみて、表情が柔らかくなる龍之介。
「やっと笑ったな」
龍之介の優しい視線に、フッと笑うのを止める莉亜。見つめられると、なぜか胸がドキドキし始めた。
「にしても、あんたはトラブルでも背負ってるのか?」
いつもと変わらないトーンに戻った龍之介の声、それで莉亜もいつもの調子を取り戻す。
「そんな事ないもん、トラブルが勝手にくるの」
「トラブルがね――――まっ俺らの事で、怖い思いさせて悪かったな」
莉亜は意外な龍之介の言葉に、目を何度かパチパチと瞬きする。
「……ビックリ」
「何がだよ?」
「あたしに、謝ってくれるなんて」
「俺はな、自分が悪いと思えば、ちゃんと謝るんだよ。誰かさんと違ってな」
「はいはい、そうですか」
龍之介に対して、あまりに無関心な返事をする莉亜。
素気ない莉亜のリアクションが、ものすごく鼻につく龍之介は、もっと彼女をいじめる事を決意した。さっきの出来事すべてを見透かしたような口ぶりで話す。
「そう言えば、話は変わるけど、誰が兄妹だって?」
「信じてくれたから、あの人たちに、妹って言ってくれたんじゃ……」
「なわけないだろ。どんだけミクロな脳してるんだよ、このっアンポンタンが!」
「いくらなんでも……そこまで、言わなくても、いいじゃんか」
頭に来たらしく莉亜が、鼻の穴を膨らませてヒクヒクとさせるのだった。それでも龍之介はさらに言い続ける。
「大体あんたが俺らの妹なら、もっとグラマーで美人なはず」
「グラマーで美人じゃなくて、悪うございましたね」
莉亜がいじけながら言った言葉に、彼女の全身をくまなく見てから、ものすごく納得したご様子の龍之介。
「ホント~に、な」
「でも、でも、でも、でも、でも、で――――」
とてつもなくうるさい声が、急に途切れた――――莉亜の口を、龍之介がふさいだからだった。