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第12話 ピンチには真っ赤な嘘を

 その頃、莉亜は構内を何の案内もなしに、歩いていた。


「あれ、ここじゃないんだ。文学部の教員室はどこなんだろう?」


 歩き疲れた莉亜は一旦構内から外に出る。

 外は講義を受けてない学生が、友達と思い思いに過ごしているようだ。

 莉亜はどこか休憩できる場所を探し、キャンパスを歩く。普通に歩いているだけのはずなのに、通り過ぎる学生たちが、自分を注目している。


「なんか視線を感じる――――気が」


 ほとんどが女性の冷たい視線。

 気にしないように莉亜が歩いていると、視線の先に女子大生の集団がこちらを見ている様子。通り過ぎようとした時、その集団のリーダー各っぽい人間が、腕を掴んだ。


「ちょっと、一緒に来てくれない?」

「えっ――あたし……ですか?」

「そうよ」

「嫌です。あたし先を急いでるんで」

「嫌とはよくいうじゃない」

「だって、あなた方の事知らないですし、急いでるんです」

「いいわ。じゃ、実力行使って事で」


 その言葉と同時に集団から、ふたりの人間が出てきた。


「――――へっ?」


 莉亜の間抜けな声と共に、彼女の両腕をがっちりと確保するふたり組。抵抗するまもなく、彼女を人目のないところに引っ張り連れて行く。彼女がいた場所には、彼女が引っ張られた痕跡だけが残るのだった。


「単刀直入にきくけど、貴女が、例の榊本家の居候?」

「だったら、どうなんですか?」


 莉亜は努めて強気に答えるが、人気のない場所に目をギョロギョロして、落ち着かない様子。


(例のって気になるけど、それよりもやっぱしやばいよね……この状況)


 耳をすませると、建物の向こう側にはたくさんの学生がいるようで、賑やかな雑踏に、うるさいぐらいの若い男女の会話が微かに聞こえる。イカレタ集団の目を盗んで、莉亜が周りをくまなく見る。何かされればいつでも逃げれるように、建物の間の逃走経路を探した。


「これから質問する事に、答えてくれればいいから」

「ちょっと、待って」


 莉亜は冷静を装った感じにふるまうが、だんだん焦り出してきていた。何度も辺りを見るが、頭がパニくって自分が通れるような逃走経路がなかなかみつけられない。


(落ち着かなきゃ、落ち着け、落ち着こう――――って、話をなんとか、長引かせなきゃ)


 莉亜が動揺する中、リーダー各の女性はいたって落ち着いた様子。


「でっ――何?」

「あたしも、聞きたい事が、あるかな」

「なによ?」

「あなたたちは、いったい、なんなの?」

「よく訊いてくれたわね、あたしたちファンクラブなの」

「誰の?」

「榊本四兄弟の」

「うそ――――だよね?」

「残念ながらホント。貴女こそ、榊本家のなんなの?」

「あたし? あたしは――――」

「返答次第じゃ、タダじゃすまないから」

「えっと――――」


(なんて、答えればいいのっ、刺激しないような答えって、ある?)


 視界に入る集団を見つめ、莉亜はこれでもかっと言うぐらいに自分の頭をフル回転させる。

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