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7ー②

「みんな、今日もしっかりと稼いでくれ。今週も龍之介が売り上げNO.1だ」

 

 マネージャー(店の責任者)が何処となく嬉しそうに言うとフロア全体に観衆の声と拍手が響く。


「今日もにぎやかなようですね」


 突然男性の声が、マネージャーの背後にいつの間にか長身で三十代前半のグレーのスーツを着た男性が、スラリと立っている。斜め後ろ横には20代後半くらいのキレイで清楚な女性がたたずんでいた。


「オ、オーナー、高科オーナー。これはこれは、今日はなんのご用でございますか?」

「自分の店に来るのに理由がないと来てはいけませんか?」

「いえ、そうではないのですが……」


 マネージャーが言葉に詰まるとオーナー(店の所有者)と呼ばれた男性はフっと嫌味な感じで微笑む。


「近くに来たものですから、寄ってみたのですが」

「今日は奥様もご一緒で。今日は一段と華やかでお綺麗です」

「ああ、たまの休日で一日一緒に珍しく過ごしているのですよ」


 にこやかな感じの高科は傍にいる女性に視線を向け、まるで名前を慣れ親しんだ人を呼ぶ様な口振で声をかけて見せる。


「なぁ、ちさと」


 そのオーナの様子とは裏腹に呼ばれたにも関わらず無言のまま、返事をしようともしない女性。

 

「今はどうやらご機嫌ななめのようでね」

「はぁ……」


 気のない返事をしたマネージャーがふたりの様子に戸惑いの色を隠せない模様。

 ちさとの態度はいつもの事で、気にも留めていない高科はそれ以上彼女の事に触れる事はなかった。

 この場の嫌な空気を変えたいマネージャーが額の汗をハンカチで拭いながら高科へ声を掛ける。


「オーナ、今回もこの店がどの店舗よりも売り上げが良くてですね……」

「――――この店舗にとても優秀なホストがいるとききましが」

「そうなんですよ、オーナー。榊本龍、のす」


 得意の話題に飛びついたマネージャーが、龍之介の名前を言おうとした瞬間、何かに気づき、表情が凍りついた。


 それ以上言葉が出ないマネージャーの唇からはうるおいが無くなって、喉はカラカラの様だ。

 静かなフロアにはマネージャーの生唾を飲み込む音だけが響く。

 口ごもるマネージャーに会話の続きを言わせようと、白々しい態度の高科。


「どうされたのですか? 遠慮せずにその先を話して頂けませんか?」 


 マネージャーは自分へと発言を促す高科を横目にチラっと見る。尚も声が出ず、また生唾を飲み込むだけしかできないのだった。


 冷静かつ無表情な顔の高科。すぐそばで凍りついたマネージャーに代わって発言する。顔色変えずに嫌味な口調で発言するのだった。


「まぁ――――――いいでしょう。貴方が何を言おうとしていたかはわかりますよ。私も一応ココのオーナーですからね」


 高科の発言少し余裕ができたマネージャーは、ハンカチでまた汗を拭うと生返事を返した。


「そ、そうですか……オーナー」

「そうですよ。一番売り上げに貢献しているのが榊本龍之介と、言いたかったのでしょう。それじゃあ、今後もせいぜい頑張ってくれたまえ、榊・本・龍・之・介くん」


 先程、ちさと――――――と、呼ばれた女性はその名前に反応しては、ハッと顔を一瞬変化させた。

 ちさとの表情を高科が横目で確かめ見ると、何かを核心した様子。


 険しい表情の龍之介が高科の顔を睨み、誰もがわかるくらい、明らかに彼を敵視する。


「はい、頑張りますよ――――高科オーナー」 


 龍之介には言葉をかける事無く、面白くないという様な表情の高科。


「行くぞ」


 その場に居るの事が苦痛に感じたのか、眉間にしわがよる。一緒にいる数人を引き連れ、高科は気に入らないといった感じにその場を去って行くのだった。


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