第6話 ウリフタツな彼女
2階から意気消沈気味にドッと疲れた様子で降りてきた良人。
気分を変える為、キッチンへ移動する。キッチンの様子をドアから覗く。すると、中に誰か人がいる気配。
「あれ?」
人影に近づいたら、朝大学へ行った慶太がキッチンのテーブル近くにいる。
ついさっき帰宅したばかりの慶太はキッチンで、用事を済まそうと何かしていたようだ。
「あれ? いつ帰ってきてたの慶太?」
「今さっきだけど――――」
そう言って振り返った慶太は、今度は何か思い出している模様。
「ん~と、確か――――誰かさんが女の子の寝込みを襲い掛けてた時かな」
「+※×#*」
「……驚き過ぎだよ。別に何しようと勝手だけど」
「う、うん……」
「合意の上での事じゃないとしたら――――」
「じゃないとしたら――――?」
慶太の言葉に喉仏が上下に動かし、ゴクっと生唾を飲み込む良人。そんな彼を冷たくみてから、自分の指で支え軽く顎を触る。
「まぁ――――犯罪者になるだけだから」
「……」
「俺に迷惑かけない範囲なら、良人が何しようと興味はないけどね」
「……」
慶太の一方的な言葉が深く突き刺さった。参ったな、という様子の良人。
良人の顔が青ざめる。そして、手で顔を覆い隠した。自分の軽はずみな行動にとてつもなく反省する。
「その、なんて言うか。つぎは気をつけますです……ハイ」
「別にキミの問題で俺には一切関係ないからね」
冷笑する慶太は何事もなかったかの様にまた用事をし始める。
良人はあんまりにも恐ろしい慶太の冷笑に、身体が強張るのを感じずにはいられなかった。
「そ、そうだね――――ははっ」
その場にいるのがより一層恐く感じる良人。強張った身体を無理に動かして、移動しようと試みる。思う様に身体が動かせず、テーブルに身体をぶつけたりしながらも、キッチンをやっとの思いで脱出するのだった。
良人の態度が可笑しくてたまらない慶太。笑うのを必死にこらえる。その表情を見られないよう、床に顔を伏せた瞬間、視線の先に何かあるのが、わかった。
落ちている物を拾い取る。
「これ……良人の学生証」
手に取った瞬間、ヒラヒラと1枚の写真が落ちてきた。 (※ 間話USAより愛を込めて参照)
「ん――写真?」
裏返っている写真を拾い見る。そこに写った女の子の姿を見て驚く。
写真には家族に囲まれて微笑む莉亜の姿があった。
「慶太~そこに学生証落としてない?」
廊下から良人の声。
声に反応したのか、青ざめていた慶太が素早く写真を学生証に挟み、もとの落ちていた場所に戻す。
「し、知らない」
探しながら部屋に入って来る良人。彼の目線の先に学生証が無造作に落ちているのを発見した。学生証を拾い上げてから慶太の方を見る。
彼はなぜか身体を小刻みに震わせながら、顔が強張っていた。
「なんか顔色悪くない? それに震えてる様だし」
「別に……なんでもないから」
「そう。気分が悪いなら病院にでも行くといいよ」
「ああ、そうだね」
と、蒼白な顔色の慶太はその一言しゃべるのがやっとの様子。まるで、さっきとは同じ人物とは言えないくらいだった。そして、一歩ずつ足取りを確かめるように、キッチンを出て行った。