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第5話 おいしいシュチュエーション

主要人物たちの周辺人物が少し登場。4兄弟の現在と過去の恋愛を少しだけ絡ませ、主人公と4兄弟のファーストコンタクト、そして、同居生活へと繋がります。

 カフェを後にした男性は人気ない静かな場所に移動する為、空港から出る。

 男性は先程の落ち着きぶりはどこへいったのか、ソワソワ落ち着かない様子で、比較的静かな道路で携帯を取り出した。携帯画面にはメールのマークが1通の表示。

 男性がメールを開けてみると、期待していた相手とは違う相手からだった。


「良人のメールか……」


 落胆した男性はメールにサッと目を通すだけで、返信もせずに携帯をとっとと片付けたようとした時、手に持った携帯からメロディーが鳴る。タイミング良く今度は電話の着信。彼はうっとうしそうにボタンを押して、電話に出る。


「もしもし、俺だけど。良人か?」

「うん、もう空港に着いたよ。どこにいるの?」

「今空港の近くの道路にいるから」

「わかった、こっちは空港の駐車場にいるよ」

「OK、そっちにいくから、待っててくれ」

「了解」


 しばらくして空港の駐車場で待っていた良人の目に人影が。遠目に見ても目立つ服装に髪型。

 その動きのある無造作ヘアーに綺麗に流した長めの茶髪を揺らしながら現れた。


 服装の方は到底良人では着こなせないようなファッション。

 白い柄物シャツに黒い細ネクタイをして、黒い綿パンに白いベルト。モデルのようなスタイルに身のこなし。

 その男性の身なりで誰なのか確心できた良人は少し遠目にいた彼の名前を読んで呼び寄せた。


「龍っ!」


 名前を呼ばれた男性が声のする方に目を動かした。そこには見慣れた人間が大げさに腕を伸ばし、手を振り自分にアピールしているのだった。

 


「待たせたな、良人。荷物はこれだけだから」


 そう言って、男性は榊本良人に旅行カバンを差し出した。受け取った荷物を車に積み終わってから、男性の方を振り返る良人。


「うん。俺も下宿しに来た彼女迎えに行くよ」

「なら、話は早いな」

「じゃあな、龍之介」


 龍之介と呼ばれた男性も同じ様に去ろうとしている中、良人に返事をした。


「ああ。俺も仕事に行くな」


 榊本兄弟はお互い話し終わるとそれぞれ別の方向に歩いて行くのだった。

 良人は莉亜が待つ空港の方へ。地下からエレベーターに乗って空港のフロアへと。

 龍之介は仕事に向かうため空港とは反対の方向へ。

 

 しばらく榊本龍之介が見慣れない道を歩いていると空港近くの駅に着く。改札に切符を入れると電車に乗って仕事場へと向かった。

 窓から流れる景色をジッと凝視したまま、電車に揺られる事、数十分。

 目的地に到着。電車を降りて駅を出ると辺りは薄紫色に染まっているのだった。


◆◇◆◇◆ 


 龍之介が去った後、取り残されたままの莉亜が、ソファーで口を半開きの状態で数回瞬きをする。

 汗をかいたガラスコップに手を伸ばし、ストローを掴んだ莉亜。凄まじい勢いでミルクティーを飲み終える。気分がそれで落ち着くと時計を確認した。


「そろそろココでゆっくりしてる場合じゃないよ」


 急いでテーブルを片付け始める莉亜。それが終わると、カフェの返却口に向かう。食器を返し終わった時、視線が外へ。そこから見えるのは空港の外部に出るフロア。

 再び歩き出した莉亜はカフェを後にするのだった。



 フロアに出る階段を下りて、少し歩く莉亜。丸い大きな彼女の目には、ひとりの男性が映った。

 男性は手に布を持ち、それには何か文字が書いてある様子。でも、この場所からだと彼女には遠くて文字をよく読み取れない。


 莉亜はその事には気にも止めず、どんどんフロアを進む事にした。男性に近づくにつれて、彼の持つ布の文字が自然と読み取れてしまうのだった。それを見た瞬間、自分の目を疑がった。

 

 目の前には――――――――【片瀬 莉亜】の文字。


「う、うそでしょ……」


 ドラマとかで見た事あるけど、結構、これって恥ずかしいものなんだ、という思いが、莉亜の頭に駆け巡る。瞳が丸くなったまま、一歩もそこから動けなくなるのだった。

 莉亜のそんな気持ちをくみ取る事もなく、出入口付近にいた男性は彼女の方へ満面の笑みで駆け寄って来る。


「あの、片瀬莉亜さんですよね?」


 男性はそう言って、微笑んだ。

 悪い人ではなさそうな微笑みに、少し安堵すると莉亜は答える。 


「はい……えっと、はじめまして。これからお世話になります」

「こちらこそ、はじめまして。榊本良人です」

   

 お互い軽めに会釈して、古典的な日本の挨拶を済ませた。

 起き上がりざまに榊本良人と目と目が合った莉亜。それとなく愛想笑いをしてみせる。

 生身の莉亜を目の前にして、良人は彼女に釘付け状態。

 不自然な良人の様子を、莉亜がいぶかしむ表情で見た。


「あの、何かついてます?」


 良人も莉亜の態度に気づいて、視線を慌てて逸らすのだった。


「えっいやっ、何もついてないです」

「そう……、一瞬、見つめられた様な気がして」

「すごく笑顔がカワイイなって――――」


 莉亜はきき慣れない言葉に思わず、オウムの様に良人の言葉を繰り返した。


「っカワイイ……あたし、が、ですか?」 

「あっいやっ、その――――っハイ」

「その……社交辞令でも嬉しいです」

「いやっ社交辞令なんかじゃないよ、ホントに」


 莉亜の照れ笑いする顔がまた、なんともいえないくらい、たまらなくなる。良人も同じように頬を淡いピンクに染めるのだった。


「ありがとう、すごく照れるなぁ」

「そうだね――――ハハッ照れるよね」

 

 良人は普段なら口にしたりしない事を言ってしまって、後悔していた。


(俺、完全にチャライやつだって思われてる……よ)


 会話も一区切りしたふたりには沈黙が訪れた。

 気まずい空気から脱する為、良人が莉亜へ話し掛ける。


「あ~そろそろ、移動しよっか」

「ですね――――」


 莉亜も早くこの空気から逃れたいようで、即答した。

 良人が促がす方向へふたりは移動して、空港から出るのだった。


 空港下の駐車場へ車を取りに行く為、良人だけが駐車場に向かった。

 莉亜は良人に言われた空港前の道路で待つ事に。数分後、空港前の道路に車が止まり、車からは良人が降りて来た。


「ごめん、お待たせ」


 待っていた莉亜に駆け寄ると、良人が彼女の荷物に手を掛ける。


「この荷物は車の後部座席に入れるね」

「はい、お願いします」


 良人がコロコロと押してキャリーケースを車の後部座席に入れる。それが終わるとそれぞれふたりは車のシートに座るのだった。

 運転席には良人、助手席には莉亜が乗り込んだ。ふたりは同じ様にシートベルトを着用する。

教習所入校~第一段階→17歳 終了検定(仮免許取得)→18歳

第二段階→18歳 卒業検定→18歳 教習所卒業→18歳

車の免許は高卒と同時にとれるので、車がこれからどんどん登場していきます。


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