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その繋がり、絶ちませんか?〜人間関係終了同盟〜  作者: 葛葉燐太郎


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依頼1件目「退職代行依頼 飲食店アルバイトS」2話

人間関係終了同盟宛てに訪れた最初の大きな依頼。それはレストランのオーナーが自分の店のアルバイトの退職代行をしてほしいという依頼だった。依頼者の思惑とは…?

 5月8日の17時34分。

 桃香が招き入れた依頼者が口にした依頼は違和感しか感じ得ないものだった。

『私の経営しているレストラン、「ファム・ド・アルル」の”アルバイトの退職代行”を依頼したいのです。』

「…えーと、”貴方自身”ではなく、”アルバイトの”退職代行依頼、でしょうか?」

『はい。その通りです。』

「どーゆうこと??」茶を運ぶためのお盆を小脇に抱え、首を傾げる桃香は彼に説明を求めた。

『まずは名乗っておくべきですね。私はレストラン「ファム・ド・アルル」のオーナーを務める肥前(ひぜん) (のぼる)と申します。』

「人間関係終了同盟の代表、園田士郎です。では、改めて依頼内容の詳細をお伺いできますか?」

 お互いに軽い自己紹介をした上で、依頼者、肥前が依頼内容の詳細を話し始めた。

『私の店では一人の学生アルバイトを雇っているのですが、そのアルバイト君に自主的に退職してもらえるよう促す、もしくは退職せざるを得ない状況を貴方たちに生み出していただきたいのです。』

 詳細を聞いたものの、いまいち本質が見えてこない。彼はレストランのオーナーだというが、であればアルバイトの退職を願うのであれば、自ら告げるべきなのではないだろうか。

「通常であれば、退職代行というのは、精神的、または身体的に勤務先への退職の意向を伝えるのが困難な方が代行業者を利用し、退職の手続きを業者に委任するものです。」

『ええ。存じております。』

「同じ職場であるとはいえ、依頼者ではない第三者の退職手続きを我々が代行することはできかねます。ですが…」

「そうそう!辞めてほしいならクビにすればいいじゃない!」言葉を続けようとした士郎に桃香が割って入ってくる。

 その横で章介がスマホを見ながらも声を上げる。

「…アルバイトの不当な解雇は法律違反だよ、桃香。」

「え、そうなの!?」

『その通り。我々経営者がアルバイトを理由なく解雇することは労働基準法に違反してしまう。』

 法律周りの問題は肥前も理解していた。

「何か、アルバイトを辞めさせたい理由があるのですね?」

 それでもなお、肥前にはアルバイトを辞めさせたい理由があるのだ。士郎はその理由を肥前に問いかけた。

『彼は至って真面目な子です。しかし、私の店にお越しになるお客様は一癖も二癖もある国のお偉い様方ばかりだ。まだ若い彼に、汚い世界に染まったお偉い様(おとなたち)の接客をさせるのは酷なものでした。』

「…「ファム・ド・アルル」。ビジネス街にあるフレンチレストランだね。」

「知ってるの?章介。」

「…かつては賑わっていたけど、とある国会議員と大規模反社会勢力に目をつけられ、現在は要人の入り浸る店との評判が広まっている。」と章介は口コミサイトとブログ記事を士郎に見せてきた。

「うげ、入りづらそう…」

「オーナーの前で失礼ですよ、桃香。」士郎が後ろに立つ桃香に振り向く。

 その言葉を耳にした肥前は顔色ひとつ変えず『いえ、事実なので構いませんとも。』と手を横に振った。

『彼はまだ大学生だ。社会経験をするにしても私の店は適していないだろう。だから、彼にはもっと健全な、別の職業を経験してほしいのです。』

 肥前は少し辛そうに顔を下げた。

「ーそれは、本人が望んだことなのでしょうか?」

『…え?』

 士郎の一言で肥前が下げていた顔を上げた。

「そのアルバイトの方は退職を望んでいるのでしょうか?肥前様、今のお話は貴方の独善的な考えに過ぎないのではないでしょうか?」

『…そう、なのでしょうか。』

 肥前はまた俯いてしまった。

『私は、彼ならば私の店にいらっしゃるお客様の対応をもって、この腐った大人達に屈することなく社会を生き抜いていく力を育んでくれるのではないか、とそう思っていたのです。ですが…』

 肥前が太腿の上に置いた手をきつく握りしめる。

『彼がこの前の3連休の勤務を終えた後、更衣室でこう漏らしているのを聞いてしまったのです。』

『「あんな客しか来ないなら辞めようかな…」と。』

「…なるほど。先ほどの考えに至った理由はちゃんとあるということなのですね。」

 決して肥前の独断専行ではなかった。奥歯を噛み締め、若干震えた声で肥前は話を続ける。

『彼の面接をした時に一番に感じたのは、彼の純粋さ、そして真面目さだった。彼はまだ大人の狡さを知らない。理不尽さを知らない。そう確信したのです。』

『私は彼のような純粋な人間が、社会に出たときに狡猾な大人に利用されたり、気圧されたりしてほしくなかった。この店で、私の責任のもと彼には強くなってもらいたかった。しかし、私は彼自身の気持ちを蔑ろにしていたのかもしれない。結局彼はそんなことは望んでいなかった。きっと、ただ彼は学生生活の間の生活に必要なお金を稼ぐだけのアルバイトとして私の店(ここ)を選んだだけだったのです。』

「…」

 3人は肥前の話をただ静かに聞いていた。桃香は唖然とした表情で固まり、章介は表情は変えず、だが手に持ったスマホを下ろし、そして士郎は少し疑問を持ちながら何かを考えるようにーーーそして暫しの逡巡の後、ようやく士郎が声を上げた

「わかりました。お受けしましょう。」

『…え?』

 士郎が立ち上がると肥前はそれを見上げるように顔を表にした。

「この度のご依頼、私達”人間関係終了同盟”が引き受けましょう。」

「…え?え!?どういうこと!?」

 固まっていた桃香が声を上げた。

「ただし、”退職代行依頼”でお受けするわけではありません。もっと別に”終了”させなければならない人間関係があると私は判断しました。」

『どういうことでしょう…?』

「肥前様、恐らくですがアルバイトの方は”貴方のレストランを辞めたい”わけではありません。それを確かめるために明日、貴方のレストランへお伺いしたい所存です。」

『ええ、と…彼と話をされたいということでしょうか?』

 肥前は鳩が豆鉄砲を食ったような顔で士郎に問いかける。

「それが第一の目的です。が、もう一つの目的もあります。」

 士郎はそう言うと潜入捜査などで使う時しか使わないであろう自前のサングラスをすぐそばの引き出しから取り出しこう切り出した。


「貴方のお店の客層の調査もさせていただきたいのです。」

葛葉燐太郎です。仕事が辛いです。

アルバイトくんの気持ちすげえわかりますよね。はい。

さて、次回は士郎達が依頼者肥前のレストランに乗り込みます。果たして士郎が終了させる人間関係とはなんなのでしょう!?乞うご期待!

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