桃子ちゃん
人離れた小高い海が見える診療所。
そこに桃子ちゃんはいる。
コンコン
賢一「桃子ちゃん。僕、横井、横井賢一だよ。
入っても良いかな?」
桃子「?よ、横井?賢一君?
、、、思考が追いつかない、、、!
ダメダメダメ!絶対ダメ!」
賢一「そ、そっか、、、ごめんね。突然来ちゃって、、、帰ります。」
桃子「、、、いやいやいや!そこは、もう少し頑張ってよ!会いに来たんでしょ!」
賢一「、、、じゃあ、入るよ。」
桃子「だから!ダメだって!、、、
ち、ちょっと待って!」
暫く廊下で待つ。
廊下の小さな窓から海が見える。
季節は12月張り詰めた空気が何故か心地良い。
桃子「、、、賢一君。いいよ。」
賢一「、、、お邪魔します。」
僕は扉を開けて部屋に入る。
全体が真っ白の部屋に小さな机とテーブルがあり
桃子は頭から爪先まで布団を被っている。
賢一「そんなに布団被っていたら顔が分からないよ。」
桃子「当たり前!突然来て起き抜けの顔見せたくないの!」
僕は少しホッとする。
賢一「どう。調子は?」
桃子「大丈夫だよ〜元気いっぱい!何の問題も無いよ!」
賢一「、、、桃子ちゃん。ありがとう。
僕は貴方のおかげで生きる事が出来ています。
生きる意味を知りました。」
桃子「そうだよ!私が神様に頼んだんだから!
賢一君は生きなきゃ駄目!」
賢一「、、、約束、覚えている?僕が治ったら
付き合ってくれるって。」
桃子「私は別に付き合ってあげても良いけど
後悔するよ!」
賢一「、、、どうして。後悔なんてしないよ。」
桃子「いや、絶対後悔する!」
賢一「しないってば!」
桃子は被っていた布団を退けると上半身を起こす。
桃子「、、、これでも?」
桃子の体はやせほそり。頬も痩けていた。
ニコリと笑うとまた布団を被る。
全然大丈夫じゃないじゃないか。
あんなにガリガリに痩せてしまって
強がりにも程がある。
僕はゆっくり桃子の被っていた布団を剥がすと
桃子の上半身をゆっくり起こす。
賢一「桃子ちゃん。お待たせ。僕は元気になったよ!桃子ちゃんは約束通り僕と付き合うんだよ。」
僕は桃子ちゃんの小指と自分の小指を絡ませる。
桃子ちゃんは真っ赤な顔で。
「しょうがないなぁ〜!約束だもんね〜。
よし!今から賢一は私の彼ピッピです!」
桃子は溢れそうな笑顔で話す。
僕達はぽっかり空いた穴を1つづつ埋めるように
沢山会話をした。
暫くすると疲れたのか桃子は横になる。
桃子「賢一、、、手を握って。」
賢一「こう?」
桃子は顔を布団に埋めて
「幸せ〜!次目覚め無くても悔いなしです!
と言うと深い眠りについた。」
僕は改めて思う。
こんなに小さな女の子が自分の死を受け入れる
事がどれだけ辛い事か、、、
僕は桃子の顔を見ながら声を出さずに溢れる涙を
堪えきれない。ずっとずっと涙が止まらなくかった。




