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辺境生まれのトンデモ聖女は、王都の生活を満喫します  作者: 満原こもじ


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第26話:ギガトードのから揚げ

 ――――――――――ネスカワン王国国境の町イルートの食堂にて。アナスタシウス元大司教視点。


「……なかなか美味いではないか」

「だねえ。あたしも気に入ったよ」


 国境を越えてすぐの町イルートで、昼食をいただいている。

 何が気に入ったかってギガトードのから揚げがだ。

 カエルの魔物がこれほどの美味とは。

 魔物の両生類のと偏見を持っていた自分を恥じているところだ。


「味覚は人ごとにそう変わんないじゃん? 美味いって他国にまで噂が届くようなものは美味いんだよ」

「ふむ、真理だな」

「しばらくこの町に滞在しようよ」

「構わんが?」


 何か目的があるのか?

 母の実家を頼るつもりだったが、そう決めていたわけではない。

 イルートはウートレイドに近いので、いざという時動きやすい利点はあるな。


「ふつーに魔物肉が提供されてるようなところじゃん? すぐ近くに狩場があるんだろうし、だったら冒険者の組合かギルドかもあるんじゃないかな」


 そういう視点か。

 パルフェはよほど冒険者がやりたいとみえる。


「結構大きな町なのがありがたいね」

「国境を通る者が多かったろう? ウートレイド側に大きな町がないので、国境を越えてイルートまで商売しに来るのだ」

「なるほど、この辺の拠点になってる町だな? いよいよ都合がいい」


 いたずらっぽい顔だなあ。


「早めに宿決めとく? おっちゃんは休んでるといいよ」

「さすがにまだ時間が早過ぎる。パルフェはどうするのだ?」

「冒険者としての登録だな。時間あれば鍛冶屋さん教えてもらって武器注文したい」

「後学のために、冒険者登録とはどういうものか知りたいな」

「じゃ、一緒に行こうか。おばちゃーん、ごちそうさまっ!」


 食堂の女将がニコニコ愛想がいい。

 よく食べたからなあ。

 勘定を支払う。


「おばちゃん。この辺で冒険者の登録ってどこでできるかな?」

「冒険者? 聞かない言葉だねえ」

「マジか。じゃあギガトードは誰が狩ってるの?」

「ああ、それはハンターの仕事だよ。魔物専門の狩人さ」

「へー、そんなもんがあるんだ。余計な仕事がなくて魔物だけ狩りゃいいのは楽だな」

「アハハ、元気な子だねえ」


 魔物だけ狩りゃいいのは楽というパルフェの発言は冗談と取られたらしい。

 さもありなん。

 本人は大真面目でそう思ってるんだろうが。


「あたしもハンターになりたいな。どこへ行けばハンターになれる? 登録所とかあるかな?」

「ハンターギルドに行くといいよ。通り沿いに五分も歩けば着く。間違えようのない大きな建物さね」

「親切にありがとう!」


 食堂を後にする。


「近くてよかったな」

「そーだね。魔物は町の外にいるんだから、ハンターの溜まり場なんて門の近くにあるに決まってるんだけどさ。こっち側の門に近いのはラッキーだったねえ」


 ほう、言われてみるとなるほどだ。

 素直に感心する。


「これがハンターギルドか。大きい町のギルドは立派だなー」


 想像よりうんと大きいな。

 この町ではハンターが主要な職業の一つなのだろうか?

 それにしてはささくれた雰囲気があるが、そういうものなのか?


「こんにちはー」

「いらっしゃいませ。当ギルドは初めてでいらっしゃいますか?」

「うん、そーだよ」

「御用件は?」

「ハンターになりたくて」

「お嬢さんがですか? 年齢はおいくつでいらっしゃいますか?」

「一四歳だよ」

「年齢制限はギリギリクリアしていらっしゃいますね」

「年齢制限があったのか。危ない、トラップに引っかかるところだった」


 アハハと笑い合う。

 もう受付嬢と打ち解けてるじゃないか。

 驚くほど人と距離を詰めるのが早いな。


「お名前をフルネームで教えてください」

「パルフェ・カナンだよ」

「魔物退治の経験はございますか?」

「ありまーす」

「では、今まで参加した一番強力な魔物との戦いは何でしたか?」

「何だろ。アースドラゴン?」


 アースドラゴンだって?

 周りの冒険者達から失笑が漏れる。

 しかしおそらくパルフェは本当のことを言っているのだろうな。


「はい、これで登録完了です。パルフェ・カナンさんはF級ハンターになりました。F級は見習いですので、ランクアップしてE級になるまではどなたかとともに魔物退治を行うのがルールです」

「まだソロはダメってことか。誰か一緒に行ってくれないかなーちらっ」


 擬音まで口に出すから信用されないのではなかろうか?

 しかし一人の若い男が進み出てきた。


「ようようドラゴンスレイヤーの嬢ちゃんよ」

「あたしはドラゴンスレイヤーじゃないぞ? 一人でアースドラゴン倒したわけじゃない」

「実力を見せてくれねえと連れていけねえなあ」

「それもそーか。じゃ、あたしはこれで」


 受付嬢の使っていたペン?


「あんたから一本取る」

「面白れえこと言うじゃねえか」

「首の横にピタッと止めるから、そしたらあたしの勝ちでいい?」

「やってみろ」


 あれか、重力を操ってナイフを自在に飛ばすという。

 初見じゃとても避けられまい。

 おっと、人が集まってきたな。

 まるで見世物だ。


「行くぞー。いいかな?」

「いつでも来い」

「やっ!」


 パルフェの手を離れるペン。

 一見投げられてように見えるが?

 ペンがするっと生き物のように動いて相手ハンターの首元に!


「よーし、あたしの勝ち!」

「こんな手品が実力の証明になるか!」

「あっ、動くと危ないぞ?」


 ざっくり首が切れる相手ハンター。

 ただのペンで?

 騒然とするハンターギルド屋内。


「ヒール!」

「……大丈夫だ。血は止まってる」

「服が汚れちゃったけどごめんよ」

「ドラゴンスレイヤーの嬢ちゃん、今の技は何だい?」

「ドラゴンスレイヤーではないとゆーのに。土魔法の応用だよ。重力を操作してものを自由に動かすってやつ。こんな感じ」


 ひょいひょいと宙に浮いたペンを動かすパルフェ。

 確かに手品のようだ。


「ええ? 土魔法ってそんなことができるのかよ?」

「ペンで首が切れたのは?」

「もっと単純な理由だよ。風魔法付与して切れ味上げただけ」

「切れ味って……刃物じゃあるまいし」

「魔法の重ねがけって高等技術なんだろう?」

「そんなことより嬢ちゃん、回復魔法が使えるのか?」

「魔法の中では得意な方だぞ?」

「町の近くにオーガが一体現れたんだ! 駆除依頼が出ている!」

「オーガか。放っとくとメッチャ危ないね」

「回復魔法の使い手がいると助かる。同行してくれんか?」

「あたしナイフしか持ってないんだ。さすがにオーガには効果ないけどいいのかな?」

「回復魔法使えるだけでありがたい」

「じゃ、ついてく。おっちゃん、ちょっとここで待っててよ」

「うむ」

「行くぞ!」

「「「「おう!」」」」


 外に出て行くハンター達とパルフェ。

 怒涛の展開だ。

 口を挟む隙もなかった。


「オーガ相手にあたし含めて六人かー。ちょっと心配だけど、ま、いいや。フライ!」

「うわわわわ?」

「ひやっ?」

「ただの飛行魔法だよ。案内して」


 すっ飛んでった。

 説明してから浮かせばいいのに。

 先ほど首をケガした男が話しかけてくる。


「おいおい、あんた。あの嬢ちゃんの連れだろう?」

「いかにも」

「どうなってんだ? あの子の魔法は?」

「賢者フースーヤの弟子だそうだ。世界にもパルフェほどの魔法の使い手はほとんどおらんのではないか?」

「アースドラゴンを倒したってのは?」

「今まで聞いたことはなかったが、おそらく本当なのだろう。それくらいの実力はあると思う」

「マジかよ……」


 呆れたような顔をしている男と、パルフェ達が飛び去った方向を眺める。

 オーガは狂暴な巨人の魔物と聞く。

 無事に帰ってくることを祈ろう。

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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!
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