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辺境生まれのトンデモ聖女は、王都の生活を満喫します  作者: 満原こもじ


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第21話:聖女に相応しくないですの! その1

 ――――――――――数日後、王都聖教会本部礼拝堂にて。マイルズ聖騎士団長視点。


「パルフェ様は聖女に相応しくないですの!」


 外回りの多い我はシスター・ジョセフィンと絡みが多いわけではない。

 が、最近のシスター・ジョセフィンはこの手の愚痴ばかりだと聞いている。

 美女は強い口調であってもたおやかな調べだと思うが、何が不満なのだろう?

 パルフェ様はいつもニコニコスーパー聖女なのに。

 やはり高位貴族から見た平民の許せない部分というやつなのだろうか。

 嫌だ嫌だ。


 おそらく比較的暇なゲラシウス殿と我が付き合わされてしまったのだろう。

 ああ、パルフェ様と楽しく魔物狩りがしたい。

 合掌。


「シスター・ジョセフィン。そう言ってやるな。あやつが無礼なのはその通りであるが、それなりに聖女の仕事をこなしていることも事実であるのだ。癒し手の技術を向上させたのも大きな功績であるし、また王都一般市民からの評判は悪くないと聞いているである」

「存じておりますけれども!」


 ゲラシウス殿も辟易してるだろうに。

 しかしシスター・ジョセフィンを蔑ろにするわけにはいかない。

 聖教会での序列はゲラシウス殿や我の方が上ではあるが、何と言ってもシスター・ジョセフィンはエインズワース公爵家の御令嬢だ。

 貴族社会では大きな影響力があり、王位継承権も持っている。

 パルフェ様がおいでになるまでほぼ独力で国防結界を支えていたという、動かしがたい実績もある。


「ゲラシウス殿の言う通りです。つけ加えるならばパルフェ様は『魔の森』の魔物退治に毎回御同行くださいます。パルフェ様の働きは凄まじく、『魔の森』の危険度は激減していると言ってよろしいです」

「それを否定するわけではないですけれども!」


 これは決して大げさではない。

 パルフェ様がほぼお一人で魔物を倒しているのはもちろんのこと、我々聖騎士に魔法を御教示くださっているのだ。

 聖騎士団の戦力の底上げをなさっていることに等しい。

 我以外にも、実際に持ち魔法が実戦レベルに近付いている者がチラホラ出始めている。

 一年後には聖騎士団の実質戦闘力や索敵力が飛躍的に伸びていることが考えられ、非常に楽しみなのだ。


「パルフェ様には品がないですの!」


 シスター・ジョセフィンがなおも文句を言う。

 美しい女性はそういう姿も美しいのであるが。


「うむ、品はないであろうな。欠片もない」

「反論できませんな」


 パルフェ様は平民であるしな。

 非難しながらも様付けを忘れない公爵令嬢が納得するだけの気品はなかなか。

 ただパルフェ様は下品とは言えないと思う。

 何故なら我らが気付かない部分であっても、配慮してくださっていることがあるからだ。


「私のことを『お姉ちゃん』と言いますの!」

「「えっ?」」


 ちょっと何言ってるかわからない。

 品の話ではなかったのか?

 『お姉ちゃん』と呼ばれることにまずいことでもあるのだろうか?

 我もパルフェ様に『お父ちゃん』と呼ばれたいくらいだが、シスター・ジョセフィンは気に入らないのか?


「そこは『お姉様』でしょう?」


 あっ、ゲラシウス殿の目が点になっている。

 愉快な顔を見ることができたので今日はツイている。

 合掌。


「そ、そうであったか。しかしあやつは言えばわかるのだぞ? 最近は吾輩のことも『ダンディなおっちゃん』と呼ぶようになっておる」

「誤魔化されていますわ! 『ゲラシウス様』とお呼びすべきでありますのに」

「そ、そうか。そうだな」


 何これ? コントかな?

 ゲラシウス殿が相当混乱しておられる。

 実に面白い。


「私にはパルフェ様と同じ年齢の妹がおりますの」

「そうでありましたな。ユージェニー嬢でしたか」

「妹は私のことをきちんと『お姉様』と呼びますのよ? パルフェ様にも見習ってもらいたいのです」

「「……」」


 どゆこと?

 つまりパルフェ様に姉扱いされていること自体に不満はない。

 呼び方を直してくれってだけのこと?

 シスター・ジョセフィンは貴族派の修道士修道女の意見を代表する存在で、パルフェ様嫌いの急先鋒かと思っていたのだが?


「おまけに私をお肉で誘惑してきますの」

「肉?」

「とても新鮮で臭みの全くない、それでいて味わい深いお肉ですわ。魔物の肉だと聞きましたが……」


 トロンとした目つきのシスター・ジョセフィン。

 ははあ、パルフェ様は肉でシスター・ジョセフィンを誑し込んだのか。

 目のつけ所がさすがだ。

 我もあの肉には抗える気がしないしな。


「パルフェ様が『魔の森』で魔物退治をしておられるのは、先ほど申し上げた通りです。その時の獲物である草食魔獣の肉でありましょう。聖騎士団では大人気で、焼けた端から奪い合いになりますぞ」

「吾輩も聞いておるが、魔物の肉とはそれほど美味いものなのか?」

「いえ、魔物の肉だから美味いのではなく、パルフェ様の血抜き・解体は完璧なのです。その日の晩には食卓に上るものですから、新鮮なのも当然ですな」

「ふむ、新鮮な肉か」


 ゲラシウス殿は興味ありげだな。

 アナスタシウス大司教猊下は頑なに食べようとしないのだが。

 魔物肉を拒否するのは、人生損しているレベルだと我は思う。


「パルフェ様は個々の魔物の肉付きや年格好を見て、最高だと判断された部分を御自分で持っていかれます。食中毒を起こすと大事になるので我々にはすぐ食べるように仰いますが、本当は少し熟成させた方がより美味いそうで。おそらく『お姉ちゃん』と慕うシスター・ジョセフィンの元へ届けられる肉は、最高に美味い個体の最高に美味い部位を最高に美味い状態にパルフェ様御自身が調整した特級品だと思われますごくり」

「そ、そうでしたの? 道理で食べたことのないような芳醇なお肉だと……」


 完全に同意。

 肉と言えば臭みのあるものだと思い込んでいた。

 それでも煮込めば美味いし、干し肉でもそれなりに美味い。


 ところがパルフェ様の肉は全然別物だ。

 ただ焼いて塩を振っただけなのに考えられないくらい美味い。

 肉の真のポテンシャルを知ったのはパルフェ様によってだ。


 しかし高位貴族であるシスター・ジョセフィンが食べたことないくらい芳醇な肉なのか。

 正直パルフェ様は魔物狩りに専念して肉を販売した方が、教会の運営に貢献すると思う。

 聖騎士はそう思っている者が多いのではないかな。

 我々が美味い肉にありつけなくなるのは嫌なので、誰も言わないけれども。


「そんなに価値のあるお肉だったとは……」

「肉食魔獣は不味いものとして、パルフェ様は肉の範疇に入れていないのです。しかしそれはパルフェ様が美味い肉を知り尽くしているからであって、実はそこそこ食べられるのではないかと、最近聖騎士連中は話していますな」

「マイルズ団長、吾輩も魔物肉を食してみたいのだが」

「通常のものでよろしければ、魔物狩りの日に騎士団寮へお越しくだされ。御馳走いたしますぞ。特級品についてはパルフェ様御自身に相談せねばなりませんな」

「うむ、そうか」


 こんなことで満足げなゲラシウス殿可愛い。

 パルフェ様の仕留めた肉を食べればイチコロですぞ。

 その大きくせり出したお腹を満足させなされ。

 合掌。


「シスター・ジョセフィンは最初から魔物肉を忌避されていなかったでしょう?」

「はい。孤児院でいただいて、大変美味だったものですから」


 やはり。

 孤児院へ魔物肉を運んだ際に、シスター・ジョセフィンが慰問に訪れていたことがあった。

 魔物肉と聞いて躊躇しなかったはずはないが、そこは気品ある公爵令嬢。

 心の内を表情に出さずに食し、その美味さを知ったに違いない。

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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!
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