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辺境生まれのトンデモ聖女は、王都の生活を満喫します  作者: 満原こもじ


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第19話:聖女パルフェの噂

 ――――――――――約二ヶ月後、夜会にて。アナスタシウス大司教視点。


 私は聖教会に所属する前も、社交はあまり得意ではなかった。

 上辺だけの付き合いは気疲れするから。

 そして聖職者になったといえども、社交界とは縁が切れぬものだ。

 王族で聖教会大司教であるという私の立場が、貴族社会との繋がりを求められるのだから仕方ないことではある。


「どこの色男が風を友にしているのかと思えば、大司教猊下ではないですか」

「やや、これはイーフレイム殿ですか。御無沙汰でしたな」


 テラスで一人酔いを醒ましていると、イーフレイム・クーリッジ伯爵が陽気に声をかけてきた。

 洒落者として名を馳せ、また社交界の事情通として知られる男だが?


「猊下と話をする機会が欲しかったのですよ」

「ええ? 怖いですな」

「ハハッ、何を仰る。最近の聖教会の評判は大層よろしいようじゃないですか」

「そうですか?」

「何といっても新聖女が見出されたことが大きい。パルフェ様でしたか」


 やはり新しい聖女についてか。

 パルフェのことはあちこちで聞かれる。

 私が辺境区から連れてきたということも知れ渡ってしまっているからな。

 貴族が新聖女パルフェの情報を得ようと思うと、やはり私からということになるだろう。


「聖女候補を見つけた宮廷魔道士の手柄ですよ」

「猊下自身が聖女の存在を知ってすぐ辺境区に飛んだという、その迅速な行動に対しても皆が好意的ですよ。私を含めてね」

「恐縮ですな」


 ニヤッと口角を上げるイーフレイム殿。

 そう言われると悪い気はしない。


「ふむ、パルフェは平民聖女ですからな。庶民からの評判ということであれば良いようなのですが」

「貴族からの評判は悪いと?」

「あれは不躾で我が儘ですからな。上流階級からのウケはよくないのですよ」

「しかしフェリックス様は随分と聖女様を買っておられるらしいじゃないですか」

「そうですね。気が合うようだとの報告は受けています。ありがたいことです」


 イーフレイム殿は話が上手い。

 とはいうものの新聞記者のようにガツガツしてはいないので、こっちをいい気分にさせてくれる。


 そしてフェリックス殿の話題が出た。

 そろそろ突っ込んだ話題になるか?

 イーフレイム殿が左手に持ったワイングラスをクルクルと転がす。


「失礼。好みのワインだったものですから」

「ハハッ、最近の社交の場での話題は何が中心ですかな?」

「それは新聖女様についてに決まっていますよ」


 えっ? 話題の一つじゃなくて中心なのか?

 それは意表を突かれたな。

 少々情報を流しておくのもパルフェのためにいいかもしれない。

 イーフレイム殿なら悪いようにはしないだろう。


「クインシー王子殿下の目を治療したのは聖女だと、まことしやかに囁かれておりますぞ」

「さて、どうですかな?」


 陛下の義父フェリックス殿の話が出たのだ。

 外孫であるクインシー殿下の話に移行するのは当然といえば当然。

 魔法医のマネ事はしないというパルフェの意向があるので積極的に肯定はしないが、特に否定せずともいいだろう。


「いや、クインシー殿下の目が治ったことは事実なのですよ。殿下の家庭教師をしている者に知り合いがおりましてな」

「ほう。ということは、特に不自由なく過ごされているということですな?」

「さようです。やはり猊下もそこは気になるでしょうからな」


 苦笑せざるを得ない。

 私と兄陛下が不仲であることは有名だ。

 甥であるクインシーの近況も聞いていないという、伯爵の判断だったのだろう。

 確かにありがたい情報だ。


「家庭教師ですか。クインシー殿下は勉強に精を出されているようですな」

「年齢的に来年が学院高等部入学の歳でしょう? 間に合うようにと、急ピッチで進めているようですよ」


 兄陛下と仲が悪くても、クインシーは可愛い甥だ。

 盲目となって闇に閉ざされていた前途が開けたことは喜ばしいことだ。

 そういえば、パルフェとクインシー殿下は同い年だったな。


 イーフレイム殿が何げなく言う。


「騎士シリル・アーロンの左腕も歩けなくなっていたスモールウッド家のクローディア嬢も、聖女パルフェ様が癒したのでしょう?」

「えっ?」

「おや、これは御存じない? ガセネタだったかな」

「いや、面目ない。パルフェはヴィンセント聖堂魔道士長の監督下にありますのでな。私では把握しきれていないところもあるのです」

「ヴィンセント殿の。そうでしたか、ありがとうございます。用事を作ってヴィンセント殿の話も聞かねばなりませぬな」


 ハハハと笑い合う。

 声を潜めるイーフレイム殿。


「となるとこれも猊下の御存じないことかもしれませんな。実は聖女の治療を受けたくば、ゲラシウス枢機卿に相談せよという噂があるのです」

「ゲラシウス殿の?」

「出所が一つではなく、しかも信用できる筋です。まず間違いのない情報だと私は思っているのですが」

「そうですか。いや、聞かせていただいてありがたいです」


 初耳だ。

 いや、フェリックス殿とクインシー殿下の件で、ゲラシウス殿がパルフェとの間に入ったという話は聞いているが、それ以降に何があったかは知らない。

 本当だとすると、ゲラシウス殿は何を考えているのだ?

 聖女の魔力の私的活用は望ましくないのではなかったか?


「パルフェは魔法医じみたことは好きでないようなのです。聖女の魔力は広くあまねく使うべきだと。だから治療したことも内緒にしてくれと言っているくらいなのですよ」

「ああ、それで確かな話が表に出てこず、噂ばかりが先行するのですな。ようやくわけがわかりました。しかし?」


 聖女の治療を受けたくばゲラシウス殿に相談せよというのが本当ならば、パルフェとゲラシウス殿が影でコソコソ活動していることになる?

 べつに治療行為が悪事というわけではない。

 しかしパルフェとゲラシウス殿が結託というのは考えづらいのだが。

 性格が合うと思えないものなあ。


 イーフレイム殿が首をすくめる。 


「ゲラシウス枢機卿は苦手でしてね。尊大なところがあるでしょう?」

「ハハ、まあ確かに」

「ヴィンセント殿のほうが遥かに喋りやすいです。会って話をしてみますよ。おっとそれからもう一つ。どうも水面下でクインシー殿下のお相手に聖女パルフェ様をという動きがあるようですぞ」

「えっ?」


 お相手って、婚約者と言うことか?

 パルフェを事実上の王太子妃に?

 平民の上、野生の聖女だぞ?

 相当ムリがないか?


「……本当ですかな? いや、私はパルフェを低く評価しているのではないが……」

「私もどこまで信憑性があるのかわかりません。が、聖女パルフェ様を王立学院高等部に入学させよ、という話が浮上するなら、かなり真剣に検討されているのではないかと考えられますぞ。クインシー殿下も来春入学ですから」

「あっ、つい二日前に学院から推薦入学の打診が来たところです!」

「ほう! 大変に面白い!」


 無責任な!

 あの傍若無人なパルフェを階級社会の原色見本みたいな学院に放り込んでみろ。

 貴族の子弟のネチネチした嫌がらせに嬉々として反撃するに違いない。

 半殺しのあとにヒールをかけて、ごめんねにこっで済ませそう。

 伝統ある学院の秩序が崩壊する!


「では猊下、これにて失礼仕ります」

「ああ、イーフレイム殿。一つ頼まれてくれませんかな?」

「何なりと」

「クインシー殿下に頑張れ、と伝えてもらいたいのです。知り合いだという家庭教師の方からどうか」

「ハハッ、お安い御用です」


 去ってゆくイーフレイム殿。

 さて、大変だ。

 パルフェの学院入学について対策を練らねばならぬ。

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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!
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