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辺境生まれのトンデモ聖女は、王都の生活を満喫します  作者: 満原こもじ


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番外編:僕の婚約破棄宣言その3

「しかし丸く元の鞘に収まったのですぞ」

「おめでとうございまーす。まー若い頃は過ちもあるわな。失敗しちゃいけない場面でミスるよりよっぽどいいわ。誰がやらかしたか知らんけど、レックスさんが仕切ってる場でラッキーだったね」

「さようですな。その過ちを犯したのが例のクリフトン・ダンブルフロウでありまして」

「クリフトン・ダンブルフロウって、例の聖属性持ちの侯爵令息?」

「はい」

「マジか。人生色々だな」


 本当に聖女王妃様が僕のことを知っている!

 顔が熱くなるのを感じる。


「確か婚約者がアイナちゃんだっけ? ツィルハーマン侯爵家の、成績優秀な?」

「よく御存じですな」

「しまったなー。あたしとしたことが、そんな面白い場面に遅刻してしまうとは」

「ハハッ、たまには間の悪いこともありますぞ」


 単にエンターテインメント好きなのかな?

 僕のほうをくるっと向く聖女王妃様。


「君がクリフトン君だね? 高等部に行くと魔道理論も教わるからね。あたしの研究にも協力してちょうだい」

「は、はい」


 僕の顔は知らないはずだと思うけど、どうしてわかったんだろう?

 あっ、聖女王妃様の感知魔法は特別製だって聞いたことがある。

 だからかな?

 持ち属性なんていう何の役にも立たないと思っていたことが、聖女王妃様と知り合うきっかけになった。

 自分の何に価値があるのかって、わかってないものなんだ。

 努力とか知識とか才能とか技術とか。

 そういうものを超えた何かもあり得るんだという気付き。


「聖女王妃様、卒業生諸君に訓示を垂れてくだされ」

「任せて。おいこら有象無象のモブ君モブちゃん達」


 ええ? 入りがすごい。

 親族のヒューバートもいるのに、十把一絡げにモブ呼ばわりだ。

 どうして聖女王妃様が卒業式に出ないで、父兄のいないパーティーのほうに来たのか理由がわかった。

 でも面白いなあ。

 皆の視線をいっぺんに集めて離さないもの。

 これが聖女王妃様の本領か。


「才能や運に恵まれないモブであることを恥じることはないんだぞ? あんた達はまだ初等部を卒業したばかりなんだからね。これから歩む道が重要なんだ。もっとも学院に通えている時点で恵まれていないとは言えないけど」


 ドキッとする。

 そうだ、アイナに何も勝てないことでいじけていたけど、僕は恵まれてないなどとはとても言えない。

 僕は他人と自分を比べることでしか、自分を把握できていなかったんじゃないかな?

 僕の了見は狭かった。

 まだまだできることがあるはずなんだ。 


「才能や運が足りなくても、大体努力と根性で何とかなっちゃうものなのだ。あたしの同級生に、初等部時代のスコアは真ん中以下だったけど高等部では最優秀クラスで卒業して、宮廷魔道士になって公爵家に婿入りした男爵家の三男坊がいるよ。あっ、それ以前にあたしは平民出なのに王妃だわ」


 ケラケラと笑う聖女王妃様。

 聖女王妃様は伝説的な存在だから参考にならないとしても、男爵家の三男で公爵家に婿入りってすごい。

 我が国の話だとすると、エインズワース公爵家当代女公爵の御夫君のことかな?

 穏やかな常識人で、聖女王妃様とも近しいと聞いている。


「努力したって自分の思うような結果が出ない時はあるよ? でも努力はムダにはなんない。思わぬところで役に立っちゃうこともある」


 努力したわけではないけど、今日の僕の聖属性持ちであるということがまさにそうじゃないか。

 自分の持っている何がどこで役に立つかなんて、自分じゃ決められないこともあるんだ。

 チャンスを逃さないことが大切なんだ。

 待てよ?

 とすると自分の持ちものが多いほど、チャンスが寄ってくる確率が高いという理屈なのか?

 考えろ、僕は何をすればいい?


「君達には時間がある。モブ君モブちゃんで終わっちゃうのか、少なくとも自分自身では褒めてやれるような人生を歩むのか。これからの四年間でほぼ決まるのだ。高等部に進学する諸君もしない諸君も。今この瞬間のままのモブ君モブちゃんで満足しようとすんなよ? 健闘を祈る!」


 ぶわーっと体温が上がったみたいな心地がする。

 聖女王妃様の言葉は熱量が尋常じゃない。

 アイナの顔も火照ってるじゃないか。

 やる気になってるなあ。

 よし、僕も!


「じゃー最後ね。唸れネギソード!」


 おかしな名前をつけているけど、取り出したのは杖だ。

 どこから出したんだろう?

 収納魔法かな?

 聖女王妃様のやることは規格外だそうだからよくわからない。


「天の神よ、地にあまねく祝福を!」


 派手に降り注ぐ光の雨。

 ああ、建国祭の時に見たことがある祝福の魔法だ。

 温かみを感じる。


「さらばだ諸君! 卒業おめでとう!」


 転移魔法で去っていく聖女王妃様。

 一陣の風のようだ。

 その間一〇分もなかったと思うけど、強烈な印象を残してお帰りになられた。


 学院長先生がパンパンと手を鳴らして、僕達の意識をパーティー会場に戻す。


「ささ、パーティーはまだまだ続きますぞ」


          ◇


 勝手な婚約破棄宣言は母様に大目玉を食らった。

 そりゃそうだよね。

 しかし父様は怒っていないようだ。

 むしろ父様が平然としているほうが意外だな。


「今後はアイナ嬢を大事にするんだぞ?」

「もちろんです。目が覚めました」

「ツィルハーマン侯爵家に詫びに行かねばならんな」

「申し訳ありません」

「痛い出費だが、クリフはいい子過ぎると思っていたのだ。男の顔になったではないか」

「男の顔、ですか」

「金は税金から出るというのを承知していなければならんぞ。その一億ゴールドで成長したところを見せつけ、よき領主にならねばならんということだ」

「はい」


 そうだ、ダンブルフロウ侯爵家を継ぐ者として、僕は領民に対して責任を持たねばならない。

 迷惑料一億ゴールドをただムダにしてはいけないんだ。

 大丈夫、僕はやれる。

 アイナとともに歩んでいくんだということを再確認し、聖女王妃様にやる気を注入されたから。


「聖女王妃様がクリフを知っていたというのは本当か?」

「はい。ビックリしました。そして研究に協力してくれとも言われました」

「ふむ、大きな収穫だな」


 父様は聖女王妃様の知遇を得たことを大きなプラスと見ているようだ。

 何たって世界最大の実力者だもんな。

 研究ということは魔道関係だよね。

 そうだ、最近婚約破棄のことばかり考えてたから、高等部でクラブはどこに入ろうか考えていなかったな。

 魔法クラブがいいかもしれない。


「そんなことよりアイナちゃんですよ」

「はい」


 そんなこと呼ばわりにもビックリだが、母様の言うことももっともだ。

 目先はアイナのフォローをしっかりせねば。

 だけど……。


「大丈夫なの?」

「大丈夫です」


 却って互いの理解が深まった気がする。

 いや、思い込みはよくないな。

 高等部入学まで一ヶ月ある。

 アイナも領に行かず王都に残ると言っていたから、より親睦を深めることに努力しよう。


 聖女王妃様も言っていたじゃないか。

 才能や運がなくても、大体努力と根性で何とかなるって。

 僕は努力すべきなのだ。

 何をもって努力というかも考えなくては。


「恋愛歌劇のチケットがありますよ。アイナちゃんと見ていらっしゃい」

「ええと、最近話題のやつですか? 見ていて恥ずかしくなるほど甘ったるいという?」

「そうですよ。クリフとアイナちゃんはもっとラブラブすべきなのです」


 思春期の男子にはツラいやつだ。

 あっ、父様が助かったって顔してる。

 父様母様で観劇に行く予定だったんだな?

 母様ラブロマンスが好きだから。


 仕方ない、アイナと連絡を取って都合を聞こう。

 精一杯の思いを込めた一文を添えて。

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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!
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