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辺境生まれのトンデモ聖女は、王都の生活を満喫します  作者: 満原こもじ


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番外編:僕の婚約破棄宣言その1

 本編が終了して一五年後くらいの出来事です。

 ――――――――――クリフトン・ダンブルフロウ侯爵令息視点。


 今年のウートレイド王国はすごくめでたい年だと言われているんだ。

 先王ローダーリック陛下が退位して、その長男クインシー陛下が即位したから。

 今後はクインシー陛下とパルフェ聖女王妃殿下が国内をしっかり治め、先王陛下とその妃スカーレット殿下が各地を回り、外交に力を入れるんじゃないかと言われている。

 ウートレイド王国の黄金時代の始まりであり、より一層の世界平和と発展が夢から現実になる第一歩なんだって。 


 ウートレイド王国建国以来一番の問題点とされていたのが、国防結界であったことは言うをまたない。

 人類を凶悪な魔物から守っていたのは国防結界だから。

 国防結界を維持する魔力は純粋な聖属性でなければならず、それは現実問題として聖女しか供給できなかったから。

 聖女が国防結界の維持、ひいては世界の平和を担っていた一〇〇〇年間は、現在では『薄氷の平和の時代』と言われているの。


 でも五年前に聖女パルフェ様と宮廷魔道士達のチームが、無秩序な魔力から聖属性のものだけを単独で取り出すことに成功。

 聖女なしで国防結界を維持することができるようになった。

 画期的なことだよね。

 またこの各属性魔力を単独で抽出する技術は、転移装置等他の大掛かりな魔道装置にも応用が利くとされ、研究が進められているの。

 だから人類の発展というのは新王に対する期待値だけじゃなくて、最早確定の未来だとされているんだ。


『草食魔獣の肉は美味いよ。聖女ウソつかない』


 これは聖女パルフェ様の言葉とされている。

 似たようなことを聞いたという者が何人もいるから、本当に言ったことはまず間違いないみたい。

 どうということのないセリフだが、人が魔物に脅える時代から本格的に魔物を狩る時代に転換した、象徴的なスローガンとしてよく知られている。


 とにかく時代の変わり目なんだ。

 大きなうねりの中なのだということからすると、とてもちっぽけなことなのかもしれない。

 でも僕からすると重大な事件だったんだよ。 


          ◇


 ――――――――――王立学院初等部の卒業パーティーの会場にて。


「アイナ・ツィルハーマン侯爵令嬢! 僕はあなたとの婚約を破棄する!」


 言った、言ってやった。

 心臓がドキドキする。

 だらけた雰囲気になりかけたパーティーの会場が静まり返る。

 これなら間違ってもなかったことにはできまい。


 アイナは可愛らしくてすごく才能がある女の子なんだ。

 家格が合う、そして幼馴染だというだけで僕みたいな凡人と婚約するなんて間違っていると思う。

 そりゃあ僕は嬉しいけど、そんなのはただのエゴだ。

 アイナを自由にしてやれるのは僕しかいない。


 沈黙を破り、学院長先生が言う。


「ホッホッホッ、大層元気のいいことじゃの。クリフトン・ダンブルフロウ君」

「は、はい」


 学院長先生の声でやや冷静さを取り戻す。

 皆の晴れの日でもあるのに、えらいことをしでかしてしまったという気持ちはある。

 でも初等部卒業の今日しかなかったから。

 高等部に入学すると人間関係はかなり変わると聞いた。

 今婚約をチャラにしておけば、アイナは十分やり直せる。


「パーティーを台無しにしてしまって申し訳ありません」

「いやいや、台無しなんてことはないぞよ。ハプニングに弱い者など、ものの役に立たんからのう。いい機会を生徒諸君に提供してくれたと、あえて礼を言おうではないか」


 学院長先生の言葉でざわざわし始める。

 なるほど? 

 何事も人生経験ということか。

 さすがは学院長先生だなあ。

 公開婚約破棄の現場なんて、経験しようと思ったってできないだろうし。


 そうだ、初等部卒業パーティーの様子は高等部のクラス分けの参考にするという話もあったな。

 高等部は二学年からは成績順に振り分けられるけど、一学年は結構人間関係も重視するんだって。


「皆の者! せっかくクリフトン君が面白い舞台を拵えてくれたのだ。存分に楽しもうではないか!」

「「「「「「「「パチパチパチパチパチパチパチパチ!」」」」」」」」


 拍手?

 学院長先生のおかげで助かったけど、おかしなことになったぞ?

 何をするつもりなんだろう?


「そもそもクリフトン君がアイナ君を嫌うのは何故じゃな? ともに侯爵と家格も合っておるし、お似合いだと思うが」

「それは……」


 嫌ってなんかいない。

 アイナを見る。

 よかった、落ち着いてるみたいだ。

 アイナは僕にはもったいなさ過ぎる。

 美人だし淑女だし成績優秀だし。

 僕が婚約者でさえなければ、アイナにはもっといい人生が待っているはずなんだ。

 僕はアイナの邪魔をしたくない。


「……アイナはいつも取り澄ましているんだ。きっと僕なんかバカにしている」


 あっ、アイナが悲しそうな顔をしている。

 ごめんよ、傷つける気はなかったんだ。

 僕の胸が痛い。

 一方で学院長先生はいたずらっぽい顔だ。

 何なのだろう?


「オークションじゃ! オークションを始める!」

「えっ?」


 オークション?

 学院長先生は何を言い出した?

 意図が全くわからないんだけど。


「アイナ嬢は婚約破棄された! 言わば傷物令嬢じゃ。しかしそんなことはない、アイナ嬢は素晴らしい。婚約者として欲しいと思う者は名乗り出よ! 我こそはと思わん者は集え!」

「「「「「「「「うおおおおおおおお!」」」」」」」」


 ええ? 何これ。

 アイナの人気すごい!

 いやわかる、だってアイナはそれだけの価値のある令嬢なんだもの。


「支度金オークションじゃ! どれほどの支度金を用意できるか、己の覚悟を金額で示せ!」

「「「「「「「「うおおおおおおおお!」」」」」」」」


 つまりたくさん支度金を用意できた者にアイナはもらわれるってこと?

 学院長先生の言ってることがゲスい!

 あっ、でも愛情とか打算とかひっくるめて必要性を測る指標ってお金なのかな?

 僕にはよくわからないよ!


「一〇〇万ゴールドからスタート!」

「一五〇万!」

「二〇〇万だ!」


 卒業パーティーには保護者は参加していない。

 卒業生だけだ。

 しかしいかに貴族の子弟とはいえ、一〇〇万ゴールドは結構な大金だ。

 もちろん本来アイナと婚約しようとする支度金としては全然足りないんだろうけど。


「三五〇万!」

「ええい、三八〇万!」

「四五〇万だ!」


 まだまだ全然止まる気配がない。

 アイナはすごく美人な上にお淑やかだもの。

 当然だろうなあ。


「七〇〇万!」

「七三〇!」


 アイナをお金で買うなんて冒涜だと思う。

 でも仮に僕だったらいくら出せるだろう?


「九一〇万でどうだ!」

「九二〇万!」

「一千万ゴールド!」


 そうだ、僕の個人の資産ではおそらく一千万ゴールドが限界だ。

 誰だろう?

 一千万ゴールドなんて。

 あっ、ヒューバートか。


 聖教会大司教アナスタシウス様の長男で、クインシー陛下の従弟に当たる。

 そして王位継承権持ち。

 王家直系ではないけど王子様には違いないものなあ。

 うん、アイナにはヒューバートがお似合いかもしれないよ……。


 ……本当にそうか?

 僕とヒューバートの差って何だ?

 僕だってダンブルフロウ侯爵家を継ぐ者だ。

 差を理解していないまま、負けだけを自覚するなんてことでいいのか?


「一千万と一〇万ゴールド!」

「一千万飛んで五〇万ゴールド!」


 ヒューバートと競ってるのは豪商の息子コービーか。

 突っ張ってはいるけど、相手が悪いだろう。

 アイナはヒューバートのものとして決定しそうな雲行きだな。

 誰もがヒューバートならって思っていそうだ。


 ……僕はいいのか? それで?

 アイナをヒューバートにさらわれて。

 アイナの幸せを人任せにして。

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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!
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