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辺境生まれのトンデモ聖女は、王都の生活を満喫します  作者: 満原こもじ


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番外編:大物釣りだ!

 本編第98話と第99話の間のお話です。

 ――――――――――カメハメハ近海にて。マイク視点。


「いいじゃん。マイク君も魚食べたいと思わない?」

「思う」


 昨日モアナ嬢とその侍女キキさんをカメハメハに送った。

 二日後に迎えに行くと約束したんだけど、聖女パルフェの無節操というか食に対する探究心というか。

 魚のおいしさが忘れられない、また食べたいからカメハメハ行こうだって。

 夏季休業期間を充実させるのモアナちゃんとの親睦は大事だのって、取ってつけたような理屈はいらないよ。

 オレだってカメハメハの新鮮な魚を食べたいんだから。


 かくして約束もそこそこに、今日もカメハメハへゴーだ。


          ◇


 カメハメハ王宮に着いたらすぐに連絡が行ったのか、モアナ嬢が飛び出してきた。

 聖女パルフェとぎゅー。

 仲いいなあ。


「パルフェはどうしたにゃ? 迎えは明後日のはずじゃなかったかにゃ?」

「そのつもりだったけど、美味い魚が忘れられなくて今日も食べたいって、マイク君が言うもんだから」

「おうい! 確かにオレも食べたいけれども!」


 アハハと笑い合っているとモアナ嬢が面白いことを提案してくれた。


「魚釣りはどうかにゃ?」

「釣り?」

「やったことあるかにゃ?」

「川魚なら故郷の辺境区で。マイク君は?」

「釣りはやったことないなあ」

「デカいやつを釣ってみたい気がするね」

「決まりだにゃ。海で大きな獲物を釣って食べようにゃ」


 今日も面白い体験ができるなあと思って、ただ今漁船にて洋上だ。

 オレの竿にもモアナ嬢の竿にも入れ食い状態なの。

 釣りは面白いなあと思った。

 にも拘らず聖女パルフェには当たりすらないんだ。

 どういうことだろう?

 聖女パルフェは何事もそつなくこなすし、魚釣りなんか大得意だというイメージだけどな?


「聖女様。今日は不調なの? ツイてない日?」

「あたしの正義の行いはお天道様が見ているから、ツイてないとかではないんだけどさ」

「全然魚がかからないのにゃ。心配だにゃ」

「いや、心配はしてくれなくても大丈夫。感知魔法は雷魔法じゃん?」

「「は?」」


 何で突然魔法が出てきた?

 聖女パルフェの話はどこへ飛ぶかわからんなあ。


「竿から糸へふつーの感知魔法を伸ばしてるんだけどさ」

「そんなことしてたのか」

「どーも水の中だと感知魔法特有のピリピリ感が増幅されちゃうのかもな。魚に避けられてるっぽい」

「ダメじゃないかにゃ」

「いや、些細なことを気にしない大物ならかかると思うんだ。今日は大物を釣りに来たわけじゃん?」

「ええ?」

「まあパルフェは好きにするがいいにゃ。お昼御飯はもう確保できてるんだにゃ」

「ハッハッハッ。あんた達は小物で満足しているがいい。あたしは大物を釣るぞー!」


 天下泰平だなあ。

 モアナ嬢の言う通り、十分食事分はあるんだから全然構わないけど……。


「釣れなくなってきたね」

「潮目が変わったかにゃ?」

「……いや、いる」


 聖女パルフェが真剣になってきた。


「ようやく来たぞ。待ちに待った大物だ。あたしの獲物だ!」

「皆竿を上げるにゃ。パルフェに釣らせてやるにゃ」


 モアナ嬢の指示で船員達が竿を引き上げる。

 もちろんオレも。

 さっきのお天道様が見てる理論からすると、聖女パルフェの竿に大物がかかるかもしれない。

 でも竿も糸も皆の使っていたものと同じだよ?

 他の魚が逃げてしまうような大物がかかったら、糸が切れちゃうんじゃないかなあ?


「モアナちゃんありがとう。そーら、お前に見えている食べ物は、あたしの竿の針先についているエサだけだわ。おいでおいで」


 言われてみれば。

 じゃあ大物は食うのかな?


「よしよし、来たぞ来たぞー。もう少しだ」

「パルフェが喜ぶくらいの大物なのかにゃ?」

「大物だね。この船くらいの大きさはありそう」

「「えっ?」」


 そんなのかかったって釣り上げられるわけないじゃないか。


「何考えてるにゃ!」

「この大物の味だね。きっと食べるところたくさんあるから、皆さんにもごちそーするよ」

「そういうことを言ってるんじゃないにゃ!」


 うん、モアナ嬢正論。

 でもきっと聖女パルフェは何とかする算段があるんじゃないかな?


「よーし、エサを食べてる。せーの、どっこい!」


 聖女パルフェが大きく合わせた!

 竿がグイッとしなる!


「わわわ?」

「そーか、ここまでの大物だと船が揺れちゃうのか。計算に入ってなかったな」

「何で糸が切れないの! 竿が折れないの!」

「魔法で強化してるからだね。付与魔法の理屈だよ。ちなみに足場も強化してるから、いくら踏ん張っても壊れない」

「計算が緻密! なのに揺れは考えてなかったんだ?」

「何事にも抜けはあるもんだ」


 聖女パルフェは達観しているけど、引っ張られる引っ張られる!

 強化魔法があるなら船は壊れないかもしれないけど怖い!

 聖女パルフェの竿には何がかかってるんだ?

 獲物が浮かび上がってくる。


「く、クラーケンだにゃ!」


 クラーケン?

 名前だけは知ってる。

 海棲の魔物では最強とも言われているやつ!


「クラーケンか。魔物学選択者であるマイク君の意見を聞こうか」

「イカやタコの類の強力な魔物だよ。とんでもなく大きくなるとされているんだ。この船と同じくらいだとすると、小さい個体だと思う」

「クラーケンは本来遠洋にいるんだにゃ。でも幼体は近海で育つのか、カメハメハにも稀に現れるのだにゃ」

「つまり子供か。つまらん」

「落ち着いている場合じゃないにゃ! 船が転覆するにゃ! 早く糸を切るんだにゃ!」


 転覆の危険があるのか!

 でも聖女パルフェは否定する。


「もう怒らせちゃったからさ。マイク君、クラーケンって頭いい?」

「いや、わからないけど」

「魔物学は当てにならんな。もしやつが人間にやられたことを覚えてたりすると、今後海に出る猟師さんが復讐されるかもしれない。ここで倒しちゃったほうがいい」

「どうやってにゃ!」

「竿と糸を通して魔法を叩き込む。サンダーボルト!」


 雷の攻撃魔法をアレンジしたものか。

 やっぱり聖女パルフェはすごい!


「おお、手応えあり。雷魔法は効くな」

「大暴れしてるにゃ! 大変だにゃ!」

「バカめ。海面より上に姿を現したな? ウインドセイバー!」


 強烈な風魔法だ!

 クラーケンが縦に真っ二つ!

 断末魔の声を上げてクラーケンの亡骸がぷかりと浮かぶ。

 船長船員連中から大歓声!


「やっつけたかにゃ?」

「うん」

「クラーケンは再生能力が高いって言われているんだけど」

「いや、急激にプレッシャーがなくなったでしょ? あれは攻撃が魔石にヒットして壊れた時に起こる現象なんだ」


 魔石についてもわかってないことはあるのだけれど、魔物が必ず持つ魔力を多く含む石だ。

 魔石が壊されるとその魔物は生きられないと言われている。

 高価なものなのでわざわざ狙って壊したりしないし、そもそも狙うなんてできないと思うけど。


「ちょっと避けたつもりだったんだけど、船が揺れたもんで魔石に当たっちゃって」

「魔石のある場所がわかるの?」

「感知魔法でわかる場合が多いね。体表面が魔法防御の高い鱗なんかで覆われているとわからんけど」


 聖女パルフェは魔物学で教わらないようなこともよく知っているなあ。


「さて、釣り針に引っかかってる半分だけでも持って帰って食べてみようよ」


          ◇


 聖女パルフェのクラーケン退治は、カメハメハの人達に面白おかしく伝えられたらしい。

 らしいというのは、オレはカメハメハ語を理解できないから。

 でも皆さん大歓迎だから間違いないと思うよ。


 そうそう、クラーケンを食べてみた聖女パルフェの感想は『うーん、悪くないけど大味』だった。

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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!
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