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辺境生まれのトンデモ聖女は、王都の生活を満喫します  作者: 満原こもじ


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番外編:恋愛談義と祝福

 王立学院三年生時のお話です。

 ――――――――――王都コロナリア聖教会本部礼拝堂にて。アナスタシウス大司教視点。


「会議を始めまーす」


 またパルフェがおかしなことを始めた。

 しかし会議だと?

 参加者が私とゲラシウス殿しかおらんのだが。


 ゲラシウス殿が言う。


「吾輩何も聞いていないのであるが」

「何も言ってないから。会議というか、恋バナ?」

「「は?」」

「ここのところお姉ちゃんがお休みしてるじゃん? どうしてるかな、と思って」


 パルフェがお姉ちゃんと慕うシスター・ジョセフィンは私の妻となった。

 現在産み月も近くなっているから、聖務を休んでいるのだ。

 つまり話のネタにして楽しみたいということか。

 いかにもパルフェらしい。


「シスター・ジョセフィンはエインズワース公爵家邸に帰っているのであろう? 妹のユージェニー嬢から様子を聞いているのではないであるか?」

「もちろん聞いてるけれども。情報は多い方がいいじゃん」

「何の情報だ?」

「いや、お産の時にはあたしも立ち会うつもりだからさ」


 ちゃんと考えてくれてるんじゃないか。

 癒し手の手配はもちろんしているが、聖女パルフェがついていてくれるなら確かに心強いな。


「で、お姉ちゃんの様子はどうなのよニヤニヤ」

「極めて順調という、医師の見立てだな」

「そんなこと聞いてるんじゃないんだよ。素敵な旦那に愛されて幸せとか、今実家に帰って旦那と離れてるから切ないとか」


 まったくパルフェは下世話なのだから。


「ちょうど一ヶ月後に出産の予定だ」

「情報量が極めて少ないな。これではゲラシウスのおっちゃんも御不満の模様です」

「否である。おめでたとは周りが温かく見守るものなのである。騒いではいけないである」

「おお? 意外と常識人」

「当然である。誰かとは違うのである」

「ふーん、誰だろ? ゲラシウスのおっちゃんの周りには、非常識な人もいるんだねえ」


 非常識な聖女が何か言ってる。


「オーケー、予定通りなら一ヶ月後ね。不測の事態があるようなら、あたしが学校にいる時でも使いを寄越してよ」

「うむ、よろしく頼む」

「どーんと任せて」

「ジョセフィンにもパルフェが任せてと言ったことを伝えておこう」


 パルフェがこう言ってくれたとなれば、精神的にも落ち着きが得られるのではないか?

 聖女というのは大したものだ。

 パルフェの実績あってのことだろうが。


「小娘はどうなのであるか?」

「どうと言うと、クインシー殿下との仲がってこと?」

「無論である」

「今日は大司教のおっちゃんがどうして長らく独身主義者だったのかを掘り下げるつもりだったんだけどな」

「む? 吾輩も興味あるであるが」

「可愛いあたしがどうだかの方が気にはなるだろうから」

「王太子殿下が気になるのである。ウートレイド王国の行く末に関わることであるからな」


 うむ、これは気になる。

 パルフェはいつもニコニコしているから、特に問題が起きているなどとは思えないが。

 というかクインシー殿下とパルフェなら、問題の起きようがないのでは?


「殿下とお茶会も催しておらぬだろう?」

「ああ、そういう視点があったか。ゲラシウス殿はさすがだな」

「普通に仲良しだよ。だってクラスが同じでクラブも一緒じゃん?」

「今以上会おうとは考えぬのか?」

「うーん、殿下もあたしも忙しいしな? ちょっとムリがあるとゆーか」


 確かに。

 特にパルフェは普通の聖女だったらしていないはずの、学院高等部でのクラブ活動と『魔の森』の魔物退治を行っている。

 正直時間があるとは思えない。


「ま、あたしと殿下のことはいいんだ。穏やかな愛を育んでいるから。今日の本題についてだけど」

「今日の本題?」

「本題があるのであるか?」

「あるよ。殿下と会う時間すら取れないあたしが、ただの遊びでおっちゃんズに集まってもらうわけないじゃん」

「おっちゃんズ……」


 パルフェの言う通りではある。

 おっちゃんズはともかく。


「パルフェが重視する本題とは何だ?」

「ネッサちゃんのことだよ」

「ネッサ?」

「ネッサちゃんの相手が誰になるかということは、聖教会で把握しとかなきゃいけないことなんじゃないの? 準聖女なんだから」

「もっともなことだ」

「一理あるである」


 盲点ではあった。

 だが準聖女ネッサが聖教会にとっての重要人物であることは間違いない。


「学院ではどうなのだ?」

「ネッサちゃん元々誰かと親しいということがなかったんだよ。自然派教団から交友を深めるなって言われてたのかもしれんけど」


 準聖女ネッサは自然派教団に囲われていた。

 本来の聖女でありながら不幸なことだが、時間は巻き戻せない。

 今後が重要だ。


「今もあたし達のグループ以外の誰かと親しくしてるの見たことないな」

「ではマイクはどうであるか?」


 修道士マイクは聖女パルフェの付き人ポジションにある。

 適任かも知れない。


「マイク君はダメなんだよ」

「何故であるか?」

「ユージェニーちゃんとくっつくと思うから」

「「えっ?」」


 いや、以前パルフェはマイクはお勧めだと言っていた。

 本心だったのか。


「マイクとユージェニー嬢は親密なのであるか?」

「ユージェニーちゃんと一番仲がいい男子だね。ユージェニーちゃんはすごく大人しい子なんだけどさ。マイク君は当たりが柔らかいじゃん?」

「うむ」

「おまけにかなり打たれ強いからさ。エインズワース公爵家の婿としては最適だと思う」

「打たれ強いのは、お主がマイクを構い倒すからである」

「要するに鍛えたあたし偉いってことだね」


 王弟の私とエインズワース公爵家長女のジョセフィンが結婚した関係で、公爵家を継ぐユージェニー嬢は比較的下位の貴族から婿を取るべきなのではとも考えられている。

 王太子殿下の婚約者であるパルフェに近いということも含めて、スイフト男爵家の出であるマイクがユージェニー嬢の婿というのは、ウートレイド王国の安定のためにベストかもしれない。


「いや、あたしは流れるようにクインシー殿下の婚約者になっちゃったからよく知らんのだけどさ。一般に聖女は低い身分の出身なのに偉いってことになってるから、結婚事情は案外難しいんじゃないの?」

「うむ。例えば前任の聖女ヘレン様は男爵家の出であったが、結局生涯独身であった。歴代の聖女はほぼ平民であったから、さらに状況は厄介であったと思うである」

「よろしくないなー。ネッサちゃんが売れ残っちゃうよ」

「ネッサの出身のケイン子爵家ではどう考えているのだろう?」

「前子爵のキーファーさんは、現在の子爵の何とかさんと養女のネッサちゃんを娶わせるつもりだったみたいなんだ。でもネッサちゃんは子爵家を出てきちゃったじゃん?」

「子爵家とは切れたと考えていいのか。もっとも王都にいなければならない準聖女が、領主貴族の妻というのも具合が悪いな」

「クインシー殿下の側妃という手もあるであるぞ」

「側妃なんかいらんわ。あたしがバンバン子供産むわ」


 あれ? パルフェは独占欲が強いのか?

 意外な面を見た。


「卒業までまだ一年以上あるから、ネッサちゃんもいい人見つけるかもしれんけどさ。おっちゃんズも気にはしといてよ」

「了解だ」「了解である」

「あたしもネッサちゃんのお相手決まったら祝福したるわ。あれ? ネッサちゃんって祝福覚えたんだっけ?」

「報告は受けてないな」

「もー、ヴィンセントさんったらサボってるんだから」


 しかし祝福を教えるのは聖堂魔道士長のヴィンセントより、パルフェの方が適任だろう。

 祝福されることより祝福することが先とは、準聖女も因果なことだ。


「本日の会議は以上でーす」

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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!
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