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辺境生まれのトンデモ聖女は、王都の生活を満喫します  作者: 満原こもじ


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番外編:今日の日を忘れない

 王立学院二年生時のお話です。

 ――――――――――王都コロナリアにて。ネスカワン王国第一王子ジャスティン視点。


「迷ってしまった……」


 友好国のウートレイドに、親善のために来ている。

 王都コロナリア市内を視察中に、ちょっとした茶目っ気で従者を撒いたはいいが、ぼくだって王都に詳しいわけじゃない。

 というかコロナリアは古い町だから、造りがややこしいんだよな。


 大人しく従者達に連れられてあっちこっち見て回った方が楽しかったのかなあ?

 隣国の王子がこんなとこフラフラしてちゃいけないだろう、普通に考えて。

 従者達に怒られるし、従者達も怒られる。

 いいことないじゃないか。

 ぼくは何やってるんだろう?


「どーした、ぼくちゃん」


 不意に声をかけられた。

 ぼくよりちょっと年上だろうか?

 ニコニコした黒髪の女の子だ。

 それと騎士?


「迷子かな?」

「……うん」


 迷子だ、人生の。

 なんてね。

 せっかくはるばるウートレイドまで来たのに、ちょっと気分が浮き立たなかっただけなんだ。

 バカなことをしちゃったのかなあ?


 騎士の隊長が言う。


「パルフェ様、この方ひょっとすると……」


 パルフェ?

 えっ、聖女パルフェ?

 あの有名な?

 なるほど、平民っぽい振舞いにも拘わらず、騎士を護衛に連れているのももっともだ。


 しかしぼくの身分もバレてしまったようだ。

 迷子と知ったなら当然連れ戻されてしまうか。

 つまらない。


「まあまあ、マイルズさん。素性を詮索するのも野暮じゃないの」

「「えっ?」」


 見逃してくれるのか?

 いや、放置されても困るんだが。

 こう考えてみると、今から自分がどう扱われると正解なのか、ぼく自身でもわかってないのか。

 何故か急に心細く感じた。


「君は聖女パルフェなんだな?」

「うん、麗しの聖女パルフェだよ。聖女としてはぼくちゃんに慈悲をくれてやりたいわけだ。どうしたいの?」

「……どう、ってことはないんだが、できれば有意義な経験がしたい」


 意味が欲しい。

 ウートレイドに来た意味が。

 ぼくが従者から逃げた意味が。

 むしゃくしゃしてつい無分別な行動を取ってしまったことは、既に反省している。

 でもただ叱られるのは割に合わない気がするのだ。


「じゃああたし達について来る?」

「どこへ行くんだ?」

「『魔の森』だよ。魔物退治するんだ」


 聖女パルフェが言葉の足りないぼくに正確な答えをくれた気がした。

 魔物退治?

 ぼくはもちろん魔物なんて見たことがない。

 随分刺激的な提案じゃないか。

 ワクワクするなあ。

 

 しかし騎士はわかるが、聖女パルフェが直々に魔物の湧く『魔の森』に出向くのか?

 ということはおそらく、『魔の森』の調査と浄化を行うんだろうな。

 偶発的に魔物が出たら倒すということだろう。

 ぼくが今まで経験したことのないことだ。

 面白い。


「ぜひ行きたい!」

「よーし、行こうか。お昼御飯は御馳走するからね」


          ◇

 

「ふんふーん。今日は絶好調だなー」

「……」


 何これ?

 ぼくの認識が間違っていた。

 ただの調査なんかじゃない。

 どんどん魔物を退治していくんだが。


 もう一つわけがわからないことがある。

 魔物退治するなら騎士が行うものかと思っていたら、聖女パルフェの独壇場じゃないか。

 騎士は魔石を回収して魔獣を運んでいるだけ。

 本当にどういうこと?


「ぼくちゃんどーしたかな? 面白くない?」

「いや、そんなことはないよ。逆に面白過ぎるというか。ただ何から何まで常識とかけ離れているので、戸惑ってるかもしれない」

「ふーん、どこの国の常識?」

「ネスカワンだ」


 あっ、つい口に出してしまった。

 騎士達がやっぱりって顔してる。

 まあいいか、ぼくがネスカワンの王子だってことはわかってたんだろうし。


「ネスカワンか。ギガトードの国だね」

「ギガトードの国?」

「ぼくちゃんはギガトードを知らなかったか。ネスカワンたって広いもんな」

「ぼくは都のマークル住みだが、ギガトードというのは聞いたことがない」

「カエルの魔物だよ」

「魔物……」


 ネスカワンが魔物の国と認識されていることに衝撃だ。

 しかもカエルの魔物?


「ウートレイドとの国境近く、イルートの町の名物なんだ。から揚げにするとメッチャ美味いんだよ」

「魔物を食べるのか?」

「ぼくちゃんは魔物肉を食べたことがなかったか。今日のお昼にごちそーするからね」


 いや、さっきから魔獣を解体してはお肉だ昼御飯だと喜んでいたから、食べるんだろうなとは思っていたけど。

 ……魔物肉を食べるのか。

 とても恐ろしい気がするが仕方ない。

 これも滅多にできない経験だ。


「新鮮でうまーい魔物肉だからね。味の方は保証するよ」

「うむ。その飛ぶナイフの技は何なのだ?」


 魔物が現れたと思ったら、あっという間に首が刎ねられる。

 鮮やか過ぎて不思議なほどだ。


「これ? 風の付与魔法で切れ味をよくして、重力を操る魔法で操作してるんだよ」

「見たことのない技だ。すごい」

「ハハッ、パルフェ様の専売特許ですからな」

「あたし以外に魔物退治に使う人いないからな。『魔の森』に住み着いてる程度の弱い魔物だと、これで十分なんだよね」


 十分不十分の問題なのか?

 いや、本職の魔物退治とはこういうものなのかもしれない。

 それが証拠に、聖女パルフェにも騎士達にも一切の緊張が見られない。


「もう一つわからないことがある」

「何だろ? 好奇心旺盛な少年の疑問にはなるべく答えようじゃないか」

「全然警戒しているように見えないのだが。何というか、自動的に魔物が倒されているように思える」

「自動的にというのは、言い得て妙ですな。パルフェ様は常時感知魔法を使っておられるのですぞ」

「感知魔法?」


 感知魔法で魔物の居場所を突き止め、ナイフを飛ばして仕留めているということなのか。

 考えられない熟練の技だ。

 いくつ同時に魔法を発動しているのだろう?

 これが聖女パルフェか。


「ぼくちゃんを街中で見つけたのも、感知魔法に引っかかったからだよ。何とゆーか、所在なさげにしてたから」

「そうだったのか」

「まあでも危ないからね。立場のある人が一人で歩き回るのはよろしくないんで、誘拐したんだ」

「誘拐って」

「楽しんでもらえたかな?」

「うん」


 にこっと微笑む聖女パルフェが可愛くてドキッとした。

 もうすぐウートレイドのクインシー第一王子と婚約するのではないかという観測を聞いた。

 クインシー殿下が羨ましい。


「さて、そろそろ帰ってお昼御飯にしようか。ぼくちゃんには飛行魔法を経験させてやろう。飛ぶぞー」


          ◇


 鮮烈な一日だった。

 聖女パルフェの魔物退治の技は、音楽を奏でるような美しさを感じた。

 魔物肉はビックリするほどおいしかった。


「世話になった」

「いいんだよ。あたしも楽しかったからね」


 既にぼくらしい少年を預かってるという連絡を、ネスカワンの使者一行に入れてくれていたようだ。

 身代金を請求しないといけないからねと、聖女パルフェは笑っていたが。

 帰るやいなや従者達に泣かれた。

 心配かけて悪かった。


「聖女パルフェ」

「何だろ?」

「ぼくの名前はジャスティン。ネスカワン王国の第一王子だ」

「うん、町をフラフラしてた時と比べると、随分いい顔になったね」

「そ、そうか?」

「色々考えることはあると思う。今日の経験を大事にしてちょうだい」


 聖女パルフェは全てを察して、魔物退治という経験でぼくをもてなしてくれたんだ。

 とてもありがたい。

 聖女パルフェと知り合えたことは、今日という忘れられない一日の一番の収穫だ。


 将来ぼくはネスカワンの王になる。

 きっとウートレイドとは親密にやっていけるだろうと確信した。

 ぼくはこの日を忘れない。

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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!
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