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辺境生まれのトンデモ聖女は、王都の生活を満喫します  作者: 満原こもじ


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番外編:天国にごあんなーい

 王立学院三年生時のお話です。

 ――――――――――『魔の森』にて。マイク視点。


「ここが『魔の森』の入り口です。足元にお気をつけくだされ」

「さすがに魔素の湧く森、中はおどろおどろしいな……マイルズ様、どうしたんです?」

「いえ、ごく真っ当な感想を久しぶりに耳にしまして。初心に帰ると言いますか気持ちを新たにすると言いますか」


 今日は準聖女ネッサ嬢も込みで『魔の森』の魔物退治だ。

 マイルズ聖騎士団長がネッサ嬢のピュアな感想に合掌している。

 マイルズさんが合掌するのはたまに見るなあ。


 ネッサ嬢が魔物退治に同行しているのにはこんな経緯がある。


          ◇


 ――――――――――昨日、学院の教室にて。


「ふんふーん。明日は楽しいお肉の日だ!」


 聖女パルフェの機嫌がいいなあ。

 魔物狩りの日をお肉の日って言っちゃうのはどうかと思うけど。


「パルフェさんは仕事熱心だなあ」

「あたしは聖女のお給料分は働くと決めているからね」

「聖女様は魔物狩りを仕事に数えてないだろう?」

「バレたかー。ちょっとしたハイキングみたいなものだね。あとでおいしい御飯を食べられるおまけつき。こんなに素晴らしいことがあるだろーか?」

「ふうん、マイク様は『魔の森』に行ったことがあるのか?」

「あるよ」


 オレも一度だけ『魔の森』の魔物退治に同行したことがある。

 高等部一年生の文化祭の前の、魔物肉の試食の時だ。

 あの時はクインシー殿下とトリスタン、ダドリーが一緒だった。


「マイク君は前日楽しみでよく寝られなかったって言ってたね」

「そんなこと言ってないって」

「あれ? 怖くて寝られなかったんだっけ?」

「よく寝られたよ!」

「マイク君は大物だから」


 ケラケラと笑う聖女パルフェ。

 本当に機嫌よさそうだこと。


「ネッサちゃんは『魔の森』という名の天国に行ったことなかったんだっけ?」

「天国なのか?」

「天国だねえ。魔素が湧くおかげで、いくら狩ったところでお肉がいなくならないの。ウソみたいな本当の話」


 聖女パルフェのニコニコした顔を見ていると、本当に魔物が『魔の森』が天国みたいに思えてくるなあ。

 ネッサ嬢が言う。


「私も一度、『魔の森』に行ってみたいな」

「えっ? どうして?」


 聖女パルフェを別にすれば、自分から『魔の森』に入りたいなんて言った女性はいないんじゃないかな。

 罰則のためにムリヤリ連れてった自然派教団の信徒を除けば、そもそも女性は魔物退治に参加してないと思う。

 あれ、でも聖女パルフェは乗り気だな。


「いいじゃんいいじゃん。ネッサちゃんを天国にごあんなーい!」

「ありがとう。明日癒しの施しの当番なんだ。誰かに代わってもらうことにする」


          ◇


 ――――――――――再び『魔の森』にて。


「ところでネッサちゃんはどうして『魔の森』に来たいなんて言い出したの? お肉の誘惑に耐えられなくなった?」


 肉の誘惑って、聖女パルフェじゃあるまいし。

 ただどうしてネッサ嬢が魔物退治に興味を持ったのかは、オレもちょっと疑問だ。


 そりゃあ聖女パルフェの飛ぶナイフの技は、芸術的と言ってもいいほど見事ではある。

 一見の価値はあるとオレは思うけれども、魔物退治って血生臭い行為だからなあ。

 令嬢向きかと言われるとどうだろう?


「『魔の森』の魔物退治は、聖教会に課せられた大事な聖務なんだろう?」

「もちろんですぞ。『魔の森』の隔離地帯から魔物が溢れると大変なことになります。三年近く前のことになりますか。自然派教団の破壊工作で魔物除けの札が剥がされ大柵が壊された時、大きな被害が出なかったのも、まめに魔物退治を行っていたからです」

「まめにお肉を狩っていたからだね」

「正直当時、パルフェ様が王都にいらっしゃる以前の魔物管理の体制だったら、どれほどの被害が出ていたか、考えたくはありませんな」


 マイルズさんがここまで言うほどなのか。

 『魔の森』の魔物退治って大事なんだなあ。

 あっ、また合掌してる。


「パルフェさんはいつも魔物退治のことを楽しそうに話すけど、実際は大変なお仕事なんだろう?」

「「「「「えっ?」」」」」


 聖女パルフェと聖騎士全員がポカンとした顔してる。

 多分全員心当たりがないから。

 聖女パルフェは本当に肉狩りが楽しいんだと思うよ。


「私も大事な聖務、厳しい現実というものを知りたく思ったんだ。だからムリを言って今日は参加させてもらった」

「マイルズさんマイルズさん、大変だ。ネッサちゃんは大きな勘違いをしているようだよ」

「どうやらそのようですな」

「あたしはネッサちゃんの希望に応えられないよ。厳しい現実なんてどうやって見せたらいいんだ」

「うろたえてはなりません。パルフェ様に可能なことを精一杯なさればよろしいのです」

「つまり楽しい現実とおいしい現実を見せればいいんだね?」

「さようです」


 何これ、コントかな?

 聖女パルフェが真剣になる。


「……本日一匹めの魔物だな。ウサギだ」


 角を持つウサギの魔物アルミラージか。

 どこだろう?

 聖女パルフェが指差す。


「二股に幹が分かれてる木の下の藪だよ。まだ向こうも警戒してないな」

「あんな遠く? あっ、感知魔法?」

「そうそう。倒しちゃうぞー」

「パルフェさん、魔物の姿を見せてもらうわけにはいかないだろうか?」

「じゃあ近寄ってみようか。ウサギの魔物は草食魔獣のクセに狂暴だから要注意だよ」

「注意の必要でない魔物なんていないよ!」


 オレは魔物学を選択してるし、以前アルミラージを見たこともあるから知ってる。

 一定の距離以内で目が合うと突撃してくる、危険な魔物だ。


「マイク君、ウサギ突っ込んできたら、水の盾で防いでみ?」

「お、オレが?」

「うん。実戦も大事だからね」


 聖女パルフェがニコニコしている。

 確かに実戦で使えない水の盾の魔法なんて意味がない。

 オレは剣術に縁がないから、せっかく習得しても実戦で使う機会がなかったということもある。

 これはチャンスだ。


「あたしも結界張ってやるから、少々盾のイメージが甘かろーがタイミングが遅れよーが、マイク君の安全は保障しよう」

「わかった、やってみる」

「よーし、頑張れ男の子!」


 皆で藪に近付く。


「頭出したぞ?」

「わあ、可愛い!」


 あっ、聖女パルフェの目が点になってる。


「マイルズさんマイルズさん、ネッサちゃんったら、魔物を可愛いだって」

「新しい視点ですな」

「魔物はおいしいか不味いかで分類するものだと思ってたよ」


 普通は強いか弱いかだよ!

 あっ、突進してきた!

 水の盾!


「お見事!」

「おー、マイク君上手」


 バッチリイメージ通りだ。

 アルミラージがオレの展開した水の盾に激突し、よろけている。


「よーし、仕留めちゃうぞー」

「すごい!」


 ネッサ嬢が興奮してるけど、よくわかる。

 聖女パルフェの飛ぶナイフは生きてるみたいだから。


「ネッサちゃん大丈夫かな? 気持ち悪くない?」

「ありがとう、大丈夫だ。解体まで自在なんだなあ」

「首をスパッと斬り落とすと血抜きが簡単だし、毛皮が丸々使えるんだよね」

「なるほど」

「ウサギだと売却できるのは角と毛皮と魔石なんだ」


 肉は売却できる部位に数えないんだなあ。

 さすがと言おうか徹底してると言おうか。


「これがパルフェさんの魔物退治なのか」

「楽しかった?」

「ああ、とても」

「ネッサちゃんは案外魔物退治向きの性格だなあ」


 オレも思った。

 ずっと楽しんでる感じだもんな。

 文化祭の時は魔物肉って言うだけで引いてたのに。

 今日はネッサ嬢の意外な面が見られた気がした。


「さあ、どんどん魔物を狩っていこうか。あたし達の戦いはこれからだ。頑張っていきまっしょい!」

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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!
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