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辺境生まれのトンデモ聖女は、王都の生活を満喫します  作者: 満原こもじ


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第123話:やったらやられる

 ――――――――――三時間後、王宮図書館にて。クインシー視点。


「聖女パルフェ様が到着なされました!」

「すぐ通してくれ」


 聖女様が王宮に戻ってきた。

 聖女様は午前中、自然派教団の首魁を捕えて王宮で尋問していたのだという。

 その首魁は自爆して果てたというが、全然知らなかった。

 今日バタバタしていたのはそういうこともあったからなのか。


「こんにちはー」


 聖女様はいつもニコニコしているなあ。

 ガルガン宮廷魔道士長が問う。


「エストラントはどうでしたか?」

「計算通りだったな。ラッキーなことに、ちょうどワイバーンの群れに襲われ始めたところだった」

「ラッキーなんですかね?」

「考え方次第かな。二〇体くらいだった」

「わ、ワイバーン二〇体ですか?」


 ワイバーンと言えば強力な飛行魔物だ。

 国防結界設置以来のピンチなんじゃないか?


「ガシガシ国防結界に突っ込んでくるの。結構な迫力だった」

「ふむ、大変危険でしたな」

「ネッサちゃんがいてくれて助かったよ。ちょうど結界の基石のあるところだったから、魔力の残量も確認できてたんだ」

「ああ、都合がようございましたな」

「問題のワイバーンの群れはどうしたんですか?」


 聖女様とガルガン宮廷魔道士長の会話はいつも面白いんだけど、ピントがずれている気がする。

 肝心なことは脅威が去ったか否かじゃないかな。


「だいじょぶだいじょぶ。転移魔法でワイバーン全部帝国内に放り込んでやったわ」

「「えっ?」」


 予想外な解決法だった。

 でもトリスタンは大きく頷いている。

 何で?


「まー帝国の住民の皆さんにとってはどえらい迷惑だろうけどさ。その迷惑なことを仕掛けてきたのは帝国だからね。やったらやられるってことはわからせておかないと」


 厳しい処置だ。

 聖女様はいつでも優しいってわけじゃないんだなあ。


「ライン川に陣取ってる帝国軍に、ワイバーンが国内を襲ってるから帰った方がいいぞーって教えてやったら、すぐ撤退すると思うんだ」

「あっ、そうですね!」


 なるほど、聖女様にはそういうプランがあったのか。


「もうエストラントは問題なさそうですか?」

「多分。遅れてくる群れがいるかもしれないから、お昼寝しながら警戒してたんだけど、問題なさそうだから戻ってきたんだ。明日もう一回確認してくるね」


 お昼寝しながらって。

 あっ、魔力の回復のためか。

 聖女様には大きな負担をかけてしまっているなあ。


「とゆーわけであたしはこれからライン川行ってくるよ。でも王宮でも事件があったんだって?」

「あっ、そうなんです」


 帝国の侵入工作兵が王宮を襲ったことがどうのこうの。


「マジかー。そーゆー目論見があったから自然派教団がおじゃんになっても、ムリヤリウートレイドに攻めてこようとしたんだな?」

「王都コロナリアの撹乱要因ということですね?」

「そうそう」

「どうやら命令系統は自然派教団とは違うようですが」


 自然派教団はフューラーと呼ばれる首魁の完全な影響下にあった組織のようだ。

 ところが今日の侵入工作兵は、帝国軍の指揮下にあったことが自供によって判明している。


「クインシー殿下の拉致が狙いだったようなのです」

「当然って言えば当然だねえ」

「マリリン側妃殿下の関与が疑われているのですな」


 言いづらいことをガルガンに言わせてしまった。

 身内から裏切者が出るのは、あり得ることとはいえやるせない思いがある。


「……それ王様に報告しといた方がいい?」

「捜査が進むまでやめておいてくれとのことでしたぞ」

「わかった」


 自分の子であるエグバートを王位に就けたいという思惑があったのだろう。

 ボクの目が治ったことは単純に嬉しいが、治らなかったらエグバートが次のウートレイド王だったろうから。

 他人の運命を曲げてしまったかと思うと、どことなく窮屈な心地がする。


「まー仕方ない。でもエグバート殿下と、もう一人妹さんがいるんだっけ?」

「はい。四つ下にアメリアが」

「側妃様の関与がほんとなら厳罰やむなしとして、エグバート殿下とアメリアちゃんは無関係だろうから勘弁してやって欲しいね」

「ほう、無関係とわかりますかな?」

「愛する殿下やあたしに対して、エグバート殿下は特に隔意はないもん。そーゆーの感知魔法でわかるんだ」

「パルフェ殿の魔法は実に細やかですなあ」


 聖女様の魔法は魔力に物を言わせているんだと、知らない人は思ってるかもしれない。

 でも実際にはそのコントロールの技術が卓絶しているのだ。

 ボクらにも努力次第で魔法は便利に使えるんだと思わせるのは、それが理由だ。


「聖女様、ありがとうございました」

「えっ? 何だろ?」

「聖女様にもらったケープと魔石のおかげで救われたんです」

「嫌だなー。愛する殿下のためなんだから当然じゃないか」


 愛する愛するって臆面もなく言われると恥ずかしい。

 聖女様どこまで本気なんだろうな?


「でも残念ながらドラゴンの魔石は壊れてしまって」

「そーだったか。困ったな? ドラゴンはあんまり遭える魔物じゃないんだ」


 いや、魔石を請求したわけじゃないんだけど。

 今度はトリスタンも驚いてる。


「ワイバーン一匹くらい倒しとくんだった。失敗した」


 これは本気だ。

 聖女様はすごい。


「で、メインイベントだけど」

「何でしたかな?」

「ラインハルト君、どうなったかな?」


 意外だな。

 聖女様はそれをメインイベントと見るのか。


「逮捕させました」

「ラインハルト君は帝国軍の王宮襲撃のことは知ってたの?」

「いや、知らなかったようです。のんびりお茶飲んでたらしいですよ」

「やっぱりローゼンクランツ公爵家は完全に蚊帳の外みたいだな」


 確かにそういう印象を受ける。

 本来だったら襲撃者の拠点の一つとなるか、ラインハルトを帝国に逃がすかするべきだろうに。

 ラインハルトが生け贄だというお母様や聖女様の見解は正しいのだろう。


「ラインハルト君を大事にしといてくれる?」

「大事に、とは?」

「例えばしょっちゅうトリスタン君と訪ねてお茶してくるとか」


 えっ? ちょっとどういう意味かわからない。

 敵国の貴族令息なんだけど。

 聖女様が続ける。


「帝国とは大した戦いもないまま痛み分けになるじゃん?」

「ワイバーンの襲撃を知って帝国軍が撤退するとなるとそうですね」

「帝国との講和には、ウートレイドに好意的だとゆーローゼンクランツ公爵家が重要な存在になってくると思うんだ。その嫡男が無下に扱われると、帝国ではウートレイドなんかに肩入れするからだって言われちゃうでしょ? ローゼンクランツ公爵家のウートレイドに対する印象も悪くなっちゃう」

「……つまりラインハルトを持ち上げて、ミナスガイエス帝国内の親ウートレイド派を強くしろと?」

「そうそう」


 聖女様は戦後のことまで考えているのか。

 ラインハルトとローゼンクランツ公爵家を利用して、帝国との友好関係を樹立することを目標にしている。


「スカーレットさんも似た考えでいると思うんだけどさ。おそらく末端まで意図が伝わんなくて、敵国の貴族扱いになっちゃうんじゃないかと」

「だからボクが積極的に仲良くしてるところを見せろと」

「うん。そーすりゃ皆が間違いなくラインハルト君を大事にするから」

「わかりました」

「お願いしまーす。さて、あたしは王様んとこ行ってくる」

「わしも連れていってくだされ」

「ガルガンさんも?」

「ボクもお願いします!」

「殿下はダメだとゆーのに。お留守番してて」


 聖女様は厳しいな。

 トリスタンもダメって顔してるから仕方ない。


「じゃねー」

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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!
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