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辺境生まれのトンデモ聖女は、王都の生活を満喫します  作者: 満原こもじ


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第118話:下見ハイキング

 ――――――――――ウートレイド王国王宮にて。クインシー視点。


「帝国軍がウートレイドに向けて進軍を開始した」


 父陛下の声が響き、緊張が場を包む。

 王宮の会議室にはお母様の他、大臣級の文官と近衛兵の主だった面々、ユースタス憲兵隊長、ガルガン宮廷魔道士長がいる。

 また聖教会からはアナスタシウス叔父と聖女様が召集されている。


「兵力はまだ不明。しかし相当な大軍と思われる」

「既に我が国に対して宣戦布告済みですか?」

「いや、国境を厳密に定めたいという名目だ」

「国境を?」

「古来よりライン川がミナスガイエス帝国との国境とされているであろう? しかし長年の内には流路も変化する。この際キッチリ定めておきたいということだ」


 理屈としてはわからなくもない。

 でもそれで大軍を引き連れて来るというのは相当露骨だ。

 ウートレイドを支配したい魂胆が見え透いている。


「戦時体制に移行する。予自身が総司令官として親征し、ランスロット近衛兵長を総指揮官とする」


 お父様が親征?


「その間フィリップ近衛兵副長が近衛兵長職を代行せよ」

「はっ!」


 あちこちから声がかかる。


「陛下の親征は必要ありませぬ!」

「危険ですぞ!」

「私が総指揮官として赴くのであれば、交渉と測量担当の者がいれば用は足ります」

「マジで戦争になれば各国から援軍が来るんでしょ? 采配のために王様は王都に残ってた方がいいと思うがな」

「王都コロナリアはクインシーに任せる!」


 あっ、ボクの器量を見せろという意図だったか。

 皆も察したようで、視線がボクに集まる。

 堂々としていなければ。


「確と承ります」

「その心意気やよし。大臣高官はクインシーを支えよ!」

「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」


 気持ちが高揚する。

 やらなければ。


「既に先遣隊を向かわせているが、予自身もまた今から現地を視察してくる」


 えっ? 今から?

 お父様何を言っているのだろう?


「聖女パルフェよ。連れていってくれ」

「オーケー。ライン川河畔で大軍を展開できるのって、地図で見ると一ヶ所しかないからそこだよね?」

「うむ。ランスロットもついて来い」

「はっ!」

「陛下、拠点となる場には魔法の結界を張る必要があると考えられます。レックス宮廷魔道士を推薦いたしますのでお連れください」

「わかった。本日は解散!」


 まだ判明していることが少ないからということもあるけど、ほぼ戦争があるという通告だけだ。

 お父様はせっかちだから、会議が終わるのも早いなあ。


          ◇


 ――――――――――国境のライン川に向けて飛行中。ランスロット近衛兵長視点。


「この飛行魔法は実に快適だな!」

「でしょ?」


 陛下が御機嫌だ。

 しかし最初は足元が不安定な魔法だと思ったが、慣れてみると愉快だ。

 陛下が快適というのもわかる。


「予には覚えられぬか?」

「そーきたか。王様の持ち魔法属性は何?」

「土だ」

「じゃ、飛ぶところまではできそうだな」

「本当か!」


 私の魔法属性も土だ。

 修行次第で飛べると思うと、年甲斐もなくワクワクするな。

 最近トリスタンが魔法にも打ち込んでいるから、私も興味があるのだ。


「ユージェニーちゃんがやっぱり土属性でさ。重力系の魔法が好みらしくて覚えてる。ちょっと届かないものを取り寄せたりするのに、上手に使えるようになってるんだよ」

「ふむ?」

「ただ同じ重力系でも、飛行魔法は普通の浮遊魔法よりちょっと難しいんだな。ユージェニーちゃんもまだやってないと思う」

「客観的にイメージしにくいからということか」

「そうそう。ふつーにものを持ち上げるイメージで自分を浮かせようとすると、大体バランス崩してひっくり返るね。重心を引き上げる感じじゃないと」


 重心か。

 わかるぞ、剣術でも重心は大事だ。


「それにあたしの飛行魔法は風の防護魔法を重ねがけしてるじゃん? 防護魔法なしでこのスピードだったら、寒くて一分と飛んでられないね」

「そうか、飛べても実用的じゃないのか。つまらんな」

「でも王宮のバルコニーからひょいっと下に降りられるとか、そーゆー使い方はできるよ。楽しいっちゃ楽しい」

「おお? なるほど」

「重力系の魔法は便利ではあるよ」


 それにしても聖女殿は陛下と友達のように話をするのだな。

 同行の宮廷魔道士レックス殿が驚いているが。

 陛下は身分が尊い以外に圧が強いということがあるので、年下の女性で陛下とまともに話せる者などほとんど記憶がない。

 本物の親子のようだ。


「帝国が面倒なことしてくるからさ。王様嫌んなっちゃった? 気分がくさくさしてるでしょ?」

「わかるか?」

「まあ。別に今日王様が下見行く必要ないしなーとは思ってた。指揮官のランスロットさんや結界の都合のあるレックスさんは、現地見とくべきだとは思うけど」

「見逃してくれたのか」

「王様に必要なのは下見じゃなくて息抜きの時間だろうからね」


 それで王妃スカーレット様や聖女殿は、陛下が視察すると言った時に異を唱えなかったのか。

 陛下のストレス発散のために?

 事前に打ち合わせなどしていないだろうに、細かいケアだと感心する。


「そろそろ国防結界だよ。越える時少しショックがあるけどビックリしないでね」

「うむ、わかった」


 緩く押し戻される様な感覚を一瞬感じた。

 これが国防結界か。


「王都外壁の結界は飛行魔法では越えられんのだろう? 国防結界は越えられるのか?」

「王都の結界は厳密だよね。国防結界は範囲が広いから、対象を絞って魔力を節約してるんじゃないかな。レックスさんどう思う?」

「聖女殿の言う通りです。国防結界と王都の結界はともに結界の基石から供給されていますが、国防結界のみだと魔力の消費は半分ほどだと思いますよ」

「マジか。何であたしが追放食らってた時、王都の結界切って時間稼げって話が出なかったんだろ?」

「いや、それは難しいですね。『魔の森』の魔物の狂暴化が予想されますので」

「あ、そーか」


 ふむ、レックス殿は結界に詳しい魔道士なのだな。

 ガルガン宮廷魔道士長の推薦だけある。


「さーて、川が見えるぞ。そろそろこの辺りだと思うけど」

「うむ、着陸してくれ」

「りょーかーい」


 フワリと着地する。

 実に見事な制御だ。


「あれがライン川か」

「まだ先遣隊も到着していないようですな」

「ふーん。ここ魔物の本だと『魔の森』程度の魔物が出現するってことだったんだ。けど魔物の生息密度は相当低いな」

「魔物が嫌うタイプの結界の方がいいですかね?」

「少なくとも帝国が布陣するまでは、そっちの方が魔力をムダにしなくてよさそう」


 結界は専門外だ。

 聖女殿とレックス宮廷魔道士に任せておけばよかろう。

 私は戦術を考えねば。


 本当に帝国が攻めてくるとなれば、圧倒的な兵力を送り込んでくるだろう。

 ライン川両岸の兵力差はいかんともしがたい。

 おそらくはこの場で睨み合いながら、上流下流から少しずつ兵を渡すのだろう。

 それを阻止する兵力は我が軍にない。

 他国の援軍を組織化できるまでは決戦を避けて、少しずつウートレイド領に引き込むべきか。

 ライン川で敵兵糧運搬路を断てれば最高だが、難しいだろうな。


「大体いいかな? 帰ろうか」

「聖女パルフェよ、待て」

「王様どうしたん?」

「帰りは転移魔法なのだろう?」

「そーだね」

「せっかくだから昼は魔物肉を食いたいではないか。何とかせよ」

「え? そーいえばあたしも食べたい気がするな。少し狩って帰ろうか。ちょっと待ってね。お肉の魔物探すわ」


 ハハッ、陛下はもう少し息抜きの時間を長引かせたいようだ。

 聖女殿も付き合いのいいことだ。

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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!
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