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辺境生まれのトンデモ聖女は、王都の生活を満喫します  作者: 満原こもじ


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第112話:愛しのフィアンセにプレゼント

 ――――――――――学院高等部廊下にて。マイク視点。


「むーん?」


 三学期が始まった。

 建国祭からこっち、聖女パルフェの機嫌がよろしくない。

 いや、機嫌がよろしくないというか、何か常に考え事をしているような。

 聖女パルフェの頭を悩ますことって何だろう?


「最近聖女様思い詰めているようだけど」

「そーなんだよ。マイク君も観察力が優れてきたね」


 誰でもわかるんじゃないかな。


「それとも可愛いあたしのことはつい観察しちゃうせいかな。変な気起こしちゃダメだぞ? あたしはクインシー殿下のものだからね」

「起こさないよ」

「それはそれで少しは注目しろとゆーか」


 ケラケラと笑う聖女パルフェ。

 あ、ようやくらしくなった。


「何を考えているの? 最近すごく寒いから、女の子の大事なお尻が冷えてしまうとかいうこと?」

「着眼点がいいね。個人的には気になってるポイントだけど、今考えてるのはあたし個人のことではないんだ」

「じゃあやっぱりネッサ嬢の?」


 ネッサ嬢の父ケイン子爵キーファー様が、自領で殺されたという。

 その件についてだろうか?


「子爵が亡くなったことも、大きい括りで関係あると思ってるんだけどさ。モアナちゃんが言ってたじゃん?」

「えっ?」


 モアナ嬢?

 何か関係のありそうなこと言ってたかな?


「ミナスガイエス帝国が、カメハメハ産のナンゴクアマ刺繍糸を大量に買いつけていたことが判明したって」

「ああ、そういえば」

「どー考えてもあの秘密兵器のマントを大量生産してるんだろうなー。いや、マントじゃないかも知れんけど」


 大いに考えられることだ。

 

「きな臭い、ということか?」

「まあ。あたしも冬休みに一度故郷のハテレスに帰ったんだけどさ。帝国人冒険者の数が随分と減ってるの」

「減ってちゃまずいの?」

「冒険者って傭兵みたいな仕事もしてるからさ。聞いてみりゃ帝国で割のいい仕事が入ったってことなんだよ」

「つまり帝国が傭兵を集めている?」

「そゆこと。どう考えても戦争が近いね」


 戦争?

 国防結界のあるこのウートレイドが?


「国防結界が壊れたら大変なことになる! 人類全体が危なくなるじゃないか!」

「帝国は国防結界が壊れてもどうにかなると思ってるのかな? 試してみもせずに壊そうとするわきゃないか。じゃあ聖女がいればいいとか魔道技術で代わりが利くとか考えてるんじゃないの? 知らんけど」

「聖女様、まさか帝国に協力するつもりじゃないだろうな?」

「優先順位ってものがあるわ。あたしが協力しなきゃ初代聖女様以前の魔物の跋扈する世の中になるってゆーなら、相手が誰でも手を貸すに決まってるだろーが。そーゆー切羽詰った状況にさせないのは、あたしじゃなくてウートレイドのお仕事だわ」


 その通りだ。

 聖女パルフェの状況判断はいつも正しい。


「まーでもあたしはウートレイドからお給料もらってるからな。お金をいただいてしまうと義理が発生するのだ」

「それ以前に聖女様はクインシー殿下の婚約者だよ」

「帝国がウートレイド以上に国防結界について理解してるとも思えんしな。ウートレイドに味方しなきゃいけない条件がたくさん揃ってるわけよ」


 聖女パルフェの考え方はドライだなあ。

 ウートレイド国民だからウートレイドのために立ち上がる、という単純な理屈ではないらしい。


「モアナちゃんは逃がしといた方がいいかしらん?」

「そんな状況が差し迫っているのか?」

「傭兵は金食い虫だぞ? 雇ってる時間が長くなるほどムダにお金が出て行くから」

「そ、そうなのか。ラインハルトは?」

「ラインハルト君はそのままでいい。人質だし」

「人質って」


 聖女パルフェは大マジだ。

 本当に開戦間近らしい。


「どうして今なんだ?」

「ん? どゆこと?」

「聖女様は自然派教団が帝国のスパイ組織だと考えているんだろう?」

「そーだね。正確にはスパイ組織だったと考えてる。帝国と決めつけるのはどうかと思ってたけど、状況証拠の方向が全部帝国向いてるもんな」

「スパイ組織だった。過去形なんだ?」

「大分自然派教団の人達とはわかり合えたと思うけどなあ」


 昨年の自然派教団蜂起未遂事件に関わった連中は、奉仕罰の名目で『魔の森』を連れ回されている。

 聖女パルフェは、魔物の怖さと美味さを教えてやんよって言ってたけど。

 どうも自然派教団を手懐けて、敵の情報を得ようとも考えているらしい。

 何でそんなことがナチュラルにできるんだろ?

 聖女パルフェ怖い。


「自然派教団員ったって、同じ人間でふつーの王都市民だよ。話せばわかり合えるもんだ」

「その自然派教団とわかり合えちゃったら、帝国のウートレイドに対する攻め手が減るじゃないか」

「それなー」

「なのにどうして今攻めてこようとするんだ?」


 オレには大きな疑問なんだが。


「時間が経つほど聖女準聖女体制が各国に認知されて、国防結界はウートレイドに任せときゃいいという考え方は強固になるよ。だから攻めるなら早い内ってのはわからんでもないの。でも自然派教団をなあなあでこっちの仲間にしたら、帝国もおかしなこと考えなくなるかなーと、あたしも思ってた」

「だけど帝国は止まらない?」

「そゆこと。帝国が覇道主義で世界を統一したいっていう思想を持ってるのは知ってるけどさ。各国のパワーバランスからすると、国防結界に仇なそうとゆーやつがいたら、ウートレイドの友好国が助太刀に来るはずじゃん?」

「帝国だけじゃ勝てない道理だ」

「うん。にも拘らず戦争起こそうとするのは、帝国は勝てる見込みが十分にあると思ってるってことなんだよね。その自信の根拠はサッパリわからんねえ。援軍が来る前にウートレイドを落とす秘密兵器があるのか、それとも友好国の中に裏切り者がいるのか」


 怖い予想だなあ。


「自然派教団がかき回さなくたって勝てると思ってるのか?」

「だろうね。とゆーか、元々自然派教団にはウェイトを置いてなかったんじゃないかな。帝国は軍事大国だから、物量で勝負できると考えてると思う」

「オレ達には何もできないのか?」

「そんなこともないよ。魔道具ケープの魔法陣はかなーり進化したぞ? 進化っていうか変化だけれども」


 文化祭で魔法クラブが展示していた改良型魔法陣ともガラッと考え方を変えた、新型魔法陣を携えて刺繍クラブに行く途中なのだ。

 新型は魔法に対する防御を捨てている。

 受ける物理攻撃を無効にし、かつ装備者の行う物理攻撃をトリガーにその威力を強めるというものだ。


「魔法に無防備というのは心許なくないかな?」

「自然派教団の持ってたマントを作った人もそう考えてたんだろうね。でもこっちのケープがどんな魔法陣を組んでるかなんて敵は知らないわけだから」


 弱点が魔法と知っていれば魔法で攻めようと考えるが、そうじゃないから十分に通用するということか。

 どの道白兵戦になれば攻撃魔法なんて使っていられないしな。

 物理対物理なら絶対的に有利だ。


「魔法防御捨てた分、魔力の効率がかなり上がったしなー。結構強いと思うぞ」

「実際に試してみないと、発動するかわかんないじゃないか」

「そりゃそーだけどさ。今まで失敗作メッチャ作ってきたから、これは多分発動するって感覚でわかるわ」


 聖女パルフェは魔法陣に魔力が行き渡らない失敗作もかなり作ってきた。

 そのたびに試験的に着用していたオレが犠牲になったわけだけど。


「試し終わったら愛しのフィアンセにプレゼントしよーっと」

「乙女だなあ」

「乙女なんだよ。うっふん」


 ちょっぴり頬が赤くなってる聖女パルフェも可愛い。

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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!
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