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辺境生まれのトンデモ聖女は、王都の生活を満喫します  作者: 満原こもじ


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第111話:フューラーの目論見

 ――――――――――某所にて。自然派教団フューラー視点。


「マルティン様」

「フューラーと呼びなさい」


 マルティン、それは王族としての生き方を諦めた時に捨てた名だ。

 所詮庶子に出番はない。

 捨て扶持で満足できないなら、実力で這い上がらねば。


「は、申し訳ありません」


 従士の服従の言葉に満足した。

 そうだ、私にはこの『声』がある。


「どうしました?」

「裏切者キーファーは死亡しました。処罰完了です」

「ああ」


 ウートレイド貴族のキーファー・ケインか。

 確か子爵の。

 彼のような腰抜けを信用したのは間違いだった。

 おかげで真の聖女ネッサは奪われ、自然派教団は反ウートレイド王家反聖教会の組織としては使い物にならなくなってしまった。

 今、自然派教団は名前だけの存在だ。


 ……もっとも自然派教団が骨抜きになったのは、ウートレイド治安当局の水際だった手法のせいだ。

 癪ではあるが、敵ながら天晴れと言わざるを得ない。


「自然派教団の地下組織化ですが」

「どうでした?」

「新しい組織を作った方が早いですね」

「やはり……」


 数十年をかけて用意した自然派教団がパーになったのは痛い。

 しかし自然派教団にも限界があったのだ。

 王都コロナリア以外では、どうしても勢力を広げることができなかった。


「フューラー、自然派教団の教義に問題があったのでしょうか?」

「さて、ウートレイド特有の矛盾点として指摘できるのは、国防結界と聖女だけですので」

「基本的に土地は豊かですよね」


 頷かざるを得ない。

 だからこそウートレイドは『始まりの国』なのだ。

 初代聖女が国防結界を張ってまで国家を創建したのには、肥沃な土地だったからという単純な理由がある。


「地方へ行くほど住民は国防結界の重要さがわかっているんですよ。自然回帰を唱えてもバカこくでねえ、と一蹴されてしまう」

「ええ。国境から遠い王都民だけが国防結界の恩恵を知らないというのもまた矛盾ですが……」


 王都でしか自然派教団が育たないなら、一度蜂起して官憲の注意を引きつけ、弾圧させる計画だった。


「自然派教団は迫害され地下に潜伏する、はずだったのですが……」

「私も驚きでした。自然派教団が懐柔されてしまうとは」


 蜂起前日に主だった者が捕らえられ、大した罰も与えられなかった。

 そして教団員は徐々に聖教会に取り込まれつつある。

 どうしてそんなことができるのか?

 正直報告を受けた時は開いた口が塞がらなかった。


「キーファー・ケインの裏切りがあったとはいえ、ローダーリック王がこれほどの手腕を見せるとは思いませんでした。侮れませんね」

「そのことについてなのですが、フューラー。どうも聖女パルフェの関与が大きいようなのです」

「聖女パルフェの関与?」


 二年前突如現れたイレギュラーな聖女。

 思えば計算が狂ったのはそこからだ。

 調べさせれば、生まれ故郷のハテレス辺境区では有名な少女だった。

 あくまで冒険者としての実力が、ということでは。

 全魔法属性と莫大な魔力を持ち、かつ各魔法属性を独立に扱えるという、俄かには信じがたいスペックではあるが……。


「関与とはどういうことでしょう? 聖女であっても政治や取締りに携わる権限があるわけではないのでしょう?」

「はい。しかし王太子クインシーの婚約者として国王夫妻に可愛がられているようで」

「そこに答えがあるではありませんか」


 王家は統治力を高めるために聖教会を取り込みたかった。

 ちょうどそこへ王太子と同い年で、国民的人気のある聖女が現れた。

 おそらく平民聖女を王太子妃とすることに、貴族の反発があるのだ。

 だから聖女の実績を喧伝するために、さまざまな事件の解決に聖女パルフェが関わっているように見せかけているのだろう。


「なるほど、フューラーの慧眼、恐れ入りました」

「聖女といっても王都に来て僅か二年。一六歳の少女なのでしょう? 聖女パルフェ自身の影響力が各方面に及ぶと考えるよりも、ウートレイドないしその王家の思惑絡みで実像より大きく見せていると考えるのが自然でしょう」

「納得いたしました」


 となると自然派教団に対する措置を考えれば、ローダーリック王が思ったより切れ者なのか。

 あるいは女傑だという噂のスカーレット王妃の意見を多く取り入れているのか。

 さすがに王宮の考えは直接探れない。

 動向から推測するしかないな。


「小僧からの報告ですが」

「小僧? ああ、留学生として潜り込ませているローゼンクランツ公爵家の子ですね?」

「はい」


 名はラインハルトと言った。

 王冠のようにも見えるクセのある金髪が特徴的な、見栄えだけはする少年だ。

 雷属性の攻撃魔法を使えるので、いざという時自然派教団と協力させれば、一定の戦力になるかもしれないと考えられてはいた。


「自然派教団を使えぬ今となっては連携させることができません。浮いた駒は拘束されてお終いですね」

「戦力としてはフューラーの仰るとおりです」

「諜者としては役に立っていますか?」


 役割上、なるべく警戒されてはいけない駒だった。

 自然派教団との連携が消えた今は無意味になってしまったが。

 派手に動くな、王太子クインシーと聖女パルフェの様子だけ伝えてくれればいい、とだけ伝えてあったがどうだろうか?


「聖女パルフェについての報告が際立って多いですね」

「ほう、王太子クインシーでなくてですか?」


 意外だ。

 王太子クインシーに張り付いているものと思っていた。

 いや、あの容姿で聖女パルフェをたらし込んだか?


「聖女パルフェは戦いとなれば危険な戦力になりうると。一人でドラゴンを倒せるくらいの実力者で、一度に千人に身体強化魔法クラスの祝福を授けることができると」

「何ですと?」


 本当なら規格外だ。


「フューラーはどう思われますか? とても信じられませんが……」

「いえ、頭から否定するのは危険です。ハテレス辺境区で名を馳せるほどの冒険者ですから。話半分としても、戦闘力はバカにしたものではないかもしれません」


 もっともローゼンクランツ公爵家はウートレイドとの戦争に反対する立場だ。

 報告を鵜呑みにすることはできない。


「ただし個としての戦闘力があったとしても、軍人でもない王太子妃を戦場に連れていくというのはちょっと考えられないですね」


 聖女パルフェは我が儘だという情報もある。

 戦場で勝手を許したら指揮系統が崩壊しかねない。

 個人の武勇が全体の勝利に直結するわけではないのだ。


「それから王太子クインシーは、凡庸ではないにしろ英傑ではないと。ウートレイド並びに聖女パルフェの弱点となり得ると」

「ふむ?」


 聖女パルフェの弱点というのは、言いたいことがよくわからない。

 しかしウートレイドの弱点となり得るというのはその通りだろう。

 王太子の警護が甘いわけはないが、開戦前ならどうか?

 考慮というか、気付きを与えてくれた報告かもしれない。


 従士が聞いてくる。


「ウートレイドと開戦することになるのでしょうか?」

「間違いなくなります」

「自然派教団が無力化しましたが、それでもですか?」

「自然派教団は陽動です。使えず終いだったのは残念ではありますが、元々戦力としての計算に入っていません。正攻法で叩き潰します」

「正攻法、ですか?」

「戦力の多い方が勝つ、という意味ですね」


 従士の言いたいことはわかっている。

 今回ミナスガイエス帝国の仕掛ける戦争の半分は、従来型の戦のやり方ではない。

 私の『声』による奇策だ。

 しかしそれによりウートレイドは存分に翻弄されるだろう。


「報告ありがとう。あとは指令待ちですね」

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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!
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