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辺境生まれのトンデモ聖女は、王都の生活を満喫します  作者: 満原こもじ


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第107話:文化祭始まる

 ――――――――――学院高等部教室にて。サブリナ視点。


「ふんふーん。もー灰汁出ないな。あとは余熱でオーケー。柔らかくなあれっと」


 朝から聖女様が手伝いに来てくれている。

 マイク様も一緒だ。

 マイク様はどうやら連絡係のようで、時々一組の様子を見に行っている。


「よいしょっと」


 鍋その一とその二を入れ替えてスタンバイ完了、魔物肉を投入して煮立て始める。

 それにしても見事な浮遊魔法だこと。

 聖女様は何でもないことのように行っているけど、炊き出し用の鍋はとても大きい。

 中身が入っていると、聖女様の浮遊魔法以外ではとても動かせない。


「魔物肉料理ってこんなに手間がかかるのね?」

「おいしく作ろうと思うとね。骨でスープ取ると一味違うから。せっかくだからお客さんに喜んでもらいたいじゃん?」


 鍋その一で骨を煮てスープを取る。

 鍋その二で骨を煮てスープを取る。

 鍋その一の骨を取り出して肉を煮る。

 鍋その二の骨を取り出して肉を煮る。

 今はここだ。

 ポンポン火魔法を生み出して急速に煮立てていく聖女様。


「薪だけじゃなかなか煮えないのね?」

「そうそう。煮立ったやつをキープしとくにはいいんだけどね」


 細かいノウハウがあるみたい。

 全然知らなかった。

 魔物肉だけ用意してもらっても、もし聖女様が手伝ってくださらなかったら、三組のメンバーだけじゃお客さんを捌けなかったんじゃないかしら?


「これねえ。火魔法の使い方にコツがあるの」

「そうなの?」

「うん。火っていうより、熱の塊を放り込んでいく感じ?」


 と言われてもよくわからない。

 聖女様は機嫌よさそう。


「ふんふーん。灰汁が出る出るー」


 マイク様が戻ってきた。


「聖女様、あと二〇分くらいだって」

「わかった。余裕だなー」


 聖女様の一組は今日、午前中から講堂で劇を披露する。

 それなのにギリギリまで手伝ってくれるみたい。

 昨日肉の確保に赴いた男子がすまなそうに言う。


「パルフェさんと聖騎士の魔物退治についてったんだけど、何もできなかったよ」

「そんなことないない。ちゃんと運搬係を務めてくれた」


 思い出したようにつけ加える聖女様。


「サブリナの父ちゃんが魔物退治について来た時はひどかったぞ? すぐに腰を痛めて、運搬係すら務まらなかったわ」

「そうなの?」

「そうそう。あまりにも使えなかったから一回でクビにした」


 もう、お父様ったら。

 太り過ぎなのですわ。


「少しは魔物退治の役に立つかと思っていたんだ」

「危ないことはさせられないな。あたしは雰囲気だけ味わってもらうつもりだった。見るだけでも経験になるからね」

「聖女様のナイフを飛ばす技は見事だったろう?」

「ああ。あんなことができるとは思わなかった」

「ナイフを飛ばす技?」

「サブリナ嬢はゲラシウス様から聞いてないかな?」

「魔物の首が飛ぶ、神技に近いとは聞いてるけど」


 ナイフがどうのという話は知らないわ。


「風の付与魔法で切れ味を増したナイフを浮遊魔法で飛ばすんだよ。そーすると簡単に魔物を倒せるの」

「「全然簡単じゃないよ!」」

「聖女様は直接攻撃魔法も使えるんでしょう? 魔法で魔物を倒すってそういうのを想像するんだけれど、直接攻撃魔法は使わないの?」


 難しそうな顔をする聖女様。


「うーん。あんまり好きじゃないんだよね」

「どうして?」

「直接攻撃魔法はどうしても余波が出ちゃうんだ。森が傷つくの。おいしいお肉を産んでくれる森は大事にしないといけないから」

「肉がボロボロになっちゃうから使わないって言ってたじゃないか」

「そーゆー側面もあるな。ただどっちが聖女らしい理由かというとモゴモゴ」


 アハハと笑い合う。

 聖女様は『魔の森』を大事にしているんだなあ。

 私からすると怖い場所に思えるけど。


「だから聖女様は直接攻撃魔法を教えてくれないのか」

「いや、それは単に練習場所がないからなんだけど」

「使い勝手もよくないということなの?」

「そゆこと。直接攻撃魔法なんていつ使うのよ? 戦争の時くらいだぞ?」


 戦争?

 思わず顔を見合わせる。


「一対一の対人戦ならまず使われない。素人魔道士さんくらい」

「ふうん、そうなんだ?」

「そうそう。間合いが近きゃ近接戦闘に長けた者に絶対勝てないし、間合いが遠きゃ避けられちゃう。剣士の人が魔法は使えないって言う根拠はその辺にあるんじゃないかな」

「パルフェさんは魔法は強いと思ってるんだよね? あのトリスタンが勝てないくらいだし」

「魔法も使いようだって。直接攻撃魔法の使い道が多くないってのは同感だな。まあでも魔法は物騒なことに使おうとするより、便利なものだって思ってた方が楽しいよ」

「オレは今、聖女様に収納魔法を教わっているんだ」

「「収納魔法?」」


 収納魔法って、亜空間にものをほぼ無限にしまっておけるという高等魔法?

 マイク様ってすごいのね。


「まだ一抱えくらいのスペースを確保したくらいだ。それも全然安定していなくて」

「収納魔法の難しいところは、亜空間っていう取り留めのない場所の一部を自分のスペースだって決めなきゃいけないところなんだよね。相当イメージ力がいる」

「イメージ力が足りないとどうなるの?」

「自分のスペースが確立しきれていないということだから、収納しておいたものもどっかいっちゃう。もう二度と戻らない」


 収納魔法ってそういうものだったの?

 便利は便利だけど、なくしちゃうこともあるのね。


「ちなみにあたしの収納魔法は時間も止めてるから、中に入れておいたお肉が腐らないという利点があるんだよ」

「聖女様すごい!」

「でも聖女様、収納魔法をあまり使わないよな。肉関係だけ」


 目を逸らす聖女様。

 やましいことでもあるのかしら?


「収納魔法はトラウマなんだ」

「トラウマ?」

「今こそ明かそう、秘められた真実を。収納魔法って容量が大きいほどものをたくさんしまえて便利だと思うじゃん?」

「思います」

「だから王宮くらいの大きさを自分のスペースとして確保するじゃん?」

「王宮?」


 オチがわかった気がするわ。


「デカい容量を確保して調子に乗って何でもかんでも収納してると、どこに何をしまったかわからなくなるの」

「ははあ、普通はそんなことあり得ないだろうけど」

「まーいーかと思って適当に詰め込んでたんだ。でもある時、あたしが預かってたアースドラゴンの魔石を出せってことになって」

「出てこなかったんだ?」

「出てこないじゃすまされないから、中に入ってたもの全部出して皆で探した探した。丸一日かかったね。メッチャ怒られた」

「丸一日も? 何を入れてたらそんなことになるんだ?」

「セミの抜け殻。当時集めるのがマイブームでさ。ちょっとビックリするくらい入ってた。魔物学を選択してるマイク君は知ってるかもしれないけど、アースドラゴンの魔石はセミの抜け殻と色がよく似ているのだ」

「知らないよ、そんなこと!」

「抜け殻に紛れてなかなか魔石見つかんなかったなー。あたしは賢いので、それ以来収納魔法の中にものを溜め込むのはやめたんだ。短期で食べちゃうお肉を一時的に入れとく時くらい」


 フフッ、聖女様のトラブルって笑い話みたい。


「よーし、こっちも灰汁取り終わり! もう一回鍋を入れ替えてと。味付いてるから、野菜入れて煮えたらお客さんに出せるからね」

「わかったわ、ありがとう」

「劇終わったら戻ってくるよ。もし万一最初の鍋が空になったら、二つ目の鍋の中身を小分けにして煮立てて、あたしが来るまで時間稼いでね。間違っても二つ目の鍋を持ち上げようなんて思わないで」


 本当に親切だこと。

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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!
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