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辺境生まれのトンデモ聖女は、王都の生活を満喫します  作者: 満原こもじ


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第106話:文化祭前日

 ――――――――――文化祭前日、王都聖教会本部礼拝堂にて。ネッサ視点。


「ふんふーん。次の方どーぞー。ありゃ、もうお終いか。今日は暇だな」


 今日はパルフェさんと癒しの施しの当番だ。

 聖女と準聖女が出張るなんて贅沢な日と思うかもしれない。

 が、私達の当番は学院の休みの日になるので、パルフェさんと出番が被ることは比較的多いのだ。


「患者さんが少ない日だねえ」

「この季節にしては冷え込んでるからね。ケガするようなこともしないんだろう」

「まーあたし達の立場からすると、患者さんが少ないことはいいことだ。魔法医連の立場ではおまんまの食い上げだろうけど。似て非なるもの」


 ケラケラと笑うパルフェさん。

 いつも陽気だなあ。


「調子はどうであるか?」

「あっ、ゲラシウスのおっちゃん。こんにちはー」


 筆頭枢機卿のゲラシウス様が、大きなお腹を揺らしながらやって来た。


「どうしたの? 寒いから頭がカゼ引いた? カゼはヒールじゃ治んないぞ?」

「相変わらず失礼であるな」


 ゲラシウス様が薄毛でカツラを装着しているのは公然の秘密だ。

 口に出してはいけないはずなんだが、パルフェさんはあまり気にしていない。


「サブリナのクラス用の魔物肉を後で狩りに行くのであろう?」

「文化祭の話か。そうそう。だから今日の夜はお肉たっぷり食べられるよ」

「楽しみであるな。いや、そうではなくて」


 急に真顔になるゲラシウス様。


「よろしく頼むである」

「えっ? 何がよ?」

「文化祭では自分のクラスの出し物でもないのに協力してくれるのであろう?」

「まーそうだけど」

「普通では考えられないである」


 一組三組の相互協力はパルフェさんのアイデアだ。

 ゲラシウス様の娘サブリナ様が、三組で魔物肉を供する飲食店をやりたいと言い出したのが発端だが。


「うちのクラスもすげー手伝ってもらったんだ」

「ああ。飾りつけがかなり豪華になった」

「一組だけじゃあそこまでできなかったなー。ウィンウィンってやつだよ」


 大道具小道具でかなり三組の面々が手伝ってくれたのだ。

 とてもありがたかった。


「今日は三組の子達が魔物狩り手伝うって言ってるんだよ。午後ね」

「ふむ、荷運び要員であるか?」

「うん。騎士希望の人達だって。近衛兵や憲兵は魔物狩り訓練もあるじゃん?」

「雰囲気だけでも楽しんでもらおうというわけか?」

「そうそう。アトラクション。一応武器持ってくるらしいけど」


 アハハと笑い合う。

 随分気楽そうだなあ。


「魔物狩りが危険だとは全然考えてないんだね?」

「素人さんを危険な目に遭わせる気はないな。こっちのゆーこと聞いてくれれば特に問題はない」

「陛下が同行したときは冷や汗をかいたと、マイルズ殿が言っていたである」

「あれは王様が悪い。キラービーの巣に石投げやがるんだぞ? 一発で命中、見事なコントロールでした」


 パルフェさんの感想はどこかおかしい。


「ハチの魔物だね? 当然怒って向かってくるだろう?」

「そーなんだよ。結界張って撃退してさ。ただ咄嗟だったから結界を固定式にしちゃって、しばらく身動き取れなかったんだ。そしたら王様がつまらんミスを犯すではないかなんてバカなこと言うの。誰のせいだ。まったくどんな教育を受けてるんだか。頭きたから、また余計なことしたら結界の外に放り出すぞって言ったったわ」

「気持ちいいくらい無礼である」


 本当にそうだ。

 でも陛下もパルフェさんといる時はすごく楽しそうに見える。


「明日からだね。文化祭当日も三組に手伝いに行ってくるよ」

「いいのであるか?」

「魔物肉屋が忙しくなるのは、開店直前と昼時なんだよ。三日間のプログラム見たら、一組の劇とは時間が重ならないから全然平気」

「手伝い過ぎじゃないか?」

「かもしれんけど、去年と同じやり方でオペレーション回そうと思ったら、熟練の火魔法と浮遊魔法の使い手がいるんだもん」

「どういうことであるか?」

「開店前に炊き出し用のデカい鍋二つにあらかじめ火を入れて、肉を柔らかくしとくんだよ。片方の鍋が空になりかけたらさっと入れ替えて、もう一つの鍋にも野菜投入して仕上げるの」

「「えっ?」」


 中身の入ったあの大鍋をさっと入れ替える?


「持てないだろう?」

「だから浮遊魔法がいるんだよ。急速に煮立てるのは火魔法が必要だし。だから去年鍋で煮るのはあたしの担当だった」

「そんな技が必要だとは思わなかったである」

「特に鍋切り替えのタイミングでお客さんを待たせないようにするのが肝なんだ。ちょうど昼前後くらいになるはず」


 去年の魔物肉屋がそんなカラクリで動いていたとは。

 客を待たせない工夫をしていたなんて、外からじゃ全然気付かなかった。


「まー思った通りにならないと厨房は焦るし、お客さんだって怒っちゃうからね。不満が残るのは、文化祭成功のためによろしくない」

「すまぬである。うまく回らないと魔物肉屋をやろうと言い出したサブリナに文句が集中していたかもしれぬである」

「あたし達もたくさん手伝ってもらったからいいんだって。ところでネッサちゃん、魔法の練習してる?」

「えっ?」


 急に話題が変わったな?

 いや、確かにこれ以上文化祭について話すのは、一組の劇のネタバレになりそうだ。

 ゲラシウス様にはまだ内緒にしておきたいのかもしれない。


「夏休みからこっちはヒールくらいしか使ってない」

「バインドはどれくらい仕上がってるかな?」


 バインド。

 触っている相手に麻痺と沈黙を与える雷属性の魔法だ。

 去年の自然派教団蜂起未遂事件の際にパルフェさんが使っていた。

 パルフェさん仕様は遠隔で使えて範囲魔法化したものだけど、さすがにそれは雷の魔法属性持ちじゃないと習得が困難らしい。

 私が覚えたのは普通のバージョンだ。


「イメージ上ではうまく使えるつもりだよ。でも人に使ったことはないから、実際どの程度の効果があるかはよくわからないな」

「使ってみそ? ちょうどいい実験体がいる」

「実験体」


 ゲラシウス様のことか。

 実験体扱いはひどいなあ。


「何をするつもりであるか?」

「カンがいいね。今からネッサちゃんがおっちゃんに、麻痺と沈黙になる魔法をかけるよ。麻痺の感覚は面白いんだ。一度経験しておくことをお勧めする」

「何で吾輩で実験するであるか。小娘が実験体でいいではないか」

「対魔法結界を常にかけてるから、あたしにはかからんもん」

「結界を切ればよいである」

「グダグダ言わない。ネッサちゃんお願い」

「バインド!」


 かかった、イメージ通りだ。

 ゲラシウス様の大柄な身体が倒れてくるところを、パルフェさんが浮遊魔法で維持している。

 目を確認しているようだが?


「それは?」

「眼球の動きを見ると、本当に麻痺してるのかがわかるんだよ。うん、バッチリ。完璧だな。ついでに治癒魔法も練習しとこうか」

「キュア!」


 ゲラシウス様が目を開ける。


「どーだった?」

「頭は起きているのに身体が何一つ動かんである。金縛りとはこういうものではあるまいか」

「麻痺の状態異常ってそーゆーものなんだ。ただ気絶みたいに意識がないわけじゃない、ってのはあんまり知られていないの。もし麻痺かけられた時、周りで誰かが喋ってたら内容覚えといてね」

「何故であるか?」

「麻痺かけてくるよーなやつは敵に決まってるだろーが。敵の情報を得ることは大事」


 思わず緊張する。

 パルフェさんの言うことは実戦的だ。

 今私のバインドを確認するということは、使う機会があるかもとパルフェさんが考えているに違いない。


「さて、施しの時間は終わりだな。お昼御飯だ」

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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!
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