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無害な危険生物ですよ魔王様

旅の途中、ある山奥の村にたどり着いた。


「もうこの時間だと遅いですし泊めてもらいますか」

「はい魔王様。ただ宿屋は無さそうなので、馬車で寝ることになりそうですが」

「寒くない時期だったのは幸いですね」


そして村人に馬車を止めておいても問題ない場所を教えてもらい、そこで眠りについた。

翌朝、お礼を言いに行こうとした。

昨晩は気が付かなかったが、村があわただしい様子だった。


「何かあったんですか?」

「ところであんたらここに来るまで大丈夫だったか?」


村人が集まっていたのでそのうちの一人に聞いてみたが、逆に心配された。

どういうことかと詳しく話を聞いてみると、この村のそばにある種のモンスターがいて、最近トラブルがあったそうだ。

大型犬より少し大きいそのモンスターは村の人々は正式な名前はわからないものの「大毒おおどく」と呼んでいる。

数も多くなくおとなしい性格で、普段は木の実を食べており全く無害なのだが、驚いたりすると猛毒を含む液体を辺りにまき散らすらしい。

その猛毒がかなり強力で、皮膚にかかっても命に別状はないものの、激しい痛みが長時間続くという。

さらに、飛び散った毒は周囲の土地を汚染し、かかった場所は数十年もの間、草木が生えなくなるそうだ。

一応解毒薬や浄化薬はあるのだが、それを用いても症状が緩和するだけで痛みはなかなか取れず、土地の浄化にかかる時間が1割ほど短くなる程度らしい。

そのため、普段は出会っても脅かさないようにしてそっと離れるようにしているそうだ。


「そのようなモンスターとは出会いませんでしたね」

「そうか、それはよかった…」

「そのモンスターが街を襲ってきたんですか?」

「いや、そういうわけじゃないんだが…」


村の人は頭をかいた。


「あいつらキラキラ光るものが大好きで、森の中で拾うと巣に持って帰る性質があるんだ」

「そういう鳥もいますね」

「そうそう。そんな感じ。で、ある日どうも村の中に迷い込んできたやつが一匹いて、あそこに見える小屋の中にある、魔晶石を用いた装置のコアの部分を持って行っちゃったみたいなんだ。足跡もあったしね」


そう言ってその男はまた頭をかいた。


「え!?あんなものを引きちぎっていったんですか!?」


重要なパーツなのでかなり頑丈に取り付けられている。そのため、簡単には取れないはずだ。

その「大毒」というモンスターはそんなに力が強いのだろうか。


「いやー、それがね…」


男は照れ臭そうに続きを答えた。


「実はメンテをサボっていてね…村の誰もがネジが緩んでいるのに気が付かなかったんだ…」


先ほどから村人の多くがバツが悪そうにしている理由がわかった。

確かにあの器具だと使う時期はもっと先なので、今の時期だとメンテを手抜きするのはあり得る事だ。

村人の話を聞いた後、小屋も見せてもらったが、管理がやや雑な印象を受けた。

ネジなどが何か所か外れているようだ。

さらによく見ると、妙な足跡も残っていた。

どうやらこれが村人の言う「大毒」の足跡らしい。


「コアだけ注文するのも高くつくし、何とか取り戻せないかなぁと考えていたわけで…」

「なるほど…」


私の記憶している限り、あのコアだけ別に注文すると結構な額になるはずだ。

もちろん本体丸ごと買い換えるよりは安いのだが。


「こっそり取りに行こうにも見つかって汁でもかけられたら大変だしね」

「退治するわけにもいかないのよね。寿命で死ぬと大丈夫だけど、こちらから攻撃すると、仮に死んでも猛毒まき散らすし…」

「なるほど厄介なモンスターですね…」


皆が頭を抱えてる中、アンナもじっと考え事をしているようだったが、近くにいる村人に質問をした。


「ところでその大毒とやら、こんな感じの姿をしていて、夜に見かけた事はありますか」


そう言って下手…いや、シンプルで味のある絵を見せていた。


「ああ、こんな感じだね。もう少し丸っこい感じだけど」


そして他にもいろいろな質問をして確認しているようだった。


「なるほど、だとすれば何とかなるかもしれません」

「ほ、本当ですか!?」


村人は驚いた。


「まず真っ黒な服と、目が粗く黒い布を用意してもらえますか?あとコアがどういう物かを絵に描いてください」


村人はどうするのかと疑問に思いながらアンナの注文通りの物を持ってきた。

そしてそれを受け取ると馬車に置いてきた。


「どうするんですか?」

「夜になったらそのコアとやらを取り戻してきます」


アンナがそう言うと村人はまた驚いた。


「だ、大丈夫?かなり危ないよ?」

「取りに行ってもらえるのならありがたいけど、あなたも危険よ?」


村の人々は皆アンナを心配していた。


「今すぐは無理ですけど、夜になれば大丈夫なはずです。その大毒とやらの巣の場所を地図で教えてください」


そう自信たっぷりに言うアンナを村人は期待半分心配半分というような様子で見ていた。

馬車に戻った後、アンナに色々確認したが、服に何やら魔法を施したり村人に貰った絵を見ながら、


「大丈夫ですお任せください」


と答えるだけだった。


そして日が落ちた。

アンナは馬車の中で先ほど受け取った真っ黒な服を着て布を頭に巻いて、黒ずくめの姿になった。


「大丈夫ですか?」

「はい、お任せください魔王様」

「私もついて行った方がいいですか?」

「いえ、この件に関しては私一人の方がやりやすいですし、魔王様を毒の危険にさらすわけにも参りませんので…」

「わかりました」

「では行ってまいります」


そう言って暗闇の中を音もなく走っていった。

村の集会場へ向かい、数名の村人とアンナを待つことにした。


「あんたのお連れさん、一人で大丈夫かね?」


村の人も心配なようだ。


「詳しくは教えてもらえませんでしたが、かなり自信はあるようでした」


とはいえ、どうやって取り戻すのかまでは詳しく聞いていないので、やはり心配になる。

それから30分ほど経った。


「ただいま戻りました。コアというのはこれでいいのですか?」


そう言って帰ってきたアンナは、手に装置のコアを持っていた。


「はい、これです!」


村長が大喜びでそれを受け取っていた。

他の村人も大喜びで、皆アンナに笑顔でありがとうと言っていた。


「では着替えてまいります」


皆が喜んでいる中、アンナは馬車へと戻り着替えだした。


「いったいどうやったんですか?」


着替え中に馬車でアンナに質問した。

するとアンナは防音魔法を馬車にかけた。


「我々の国でも同じモンスターおりまして…色は違うのですが…」

「そうなんですか?」

「はい。村人に色々聞いて、同じモンスターだと確信しました。おそらくですが、何らかの原因で離ればなれになったのが定着したのでしょう」

「なるほど」

「そのモンスターは夜目が効かず暗い所ではほとんど物が見えないようでして、夜にこんな感じの黒い服を着て歩くとほぼ見つからないのです」

「それで夜まで待ったんですね」

「はい。もちろん足音などに気付いて驚くと毒液をまき散らしだすのですが、足音や気配を消して歩けば大丈夫です」

「なるほど…」

「ただ、巣穴が狭い割に数が多くいたので、避けて歩くのはちょっと大変でしたが…尻尾でも踏んで起こしてしまうと…」


アンナはそういう訓練も受けていると言っていたのを思い出した。


「しかしずいぶん生態に詳しいですね」


そう質問するとアンナは苦笑いして答えた。


「村人もあのモンスターはキラキラしたものが好きで集める性質があると言ってましたよね?」

「はい」

「我々の国では人間の国と違い魔晶石が多いため、よく村にある魔晶石を持っていかれることが多いのです」

「魔晶石をですか」


魔晶石の多い魔族の国だと、キラキラした魔晶石が狙われやすいのも納得だった。


「はい。我々魔族にとってはそれほど貴重な物ではないですが、やはり持っていかれてストックが無いからとすぐに買いに行けるとは限らないですし、取り戻すためのやり方がどんどん進歩していったわけです」

「そういう事だったんですね」

「はい。人間の国を旅してまわった感じですと、おそらく我々魔族の国の方が生息数はかなり多いと思われます」

「なるほど」

「ですので、私も以前2~3度巣に乗り込んだ事はあります」


やはり魔族の国は文化が違うのだなと思った。


「解毒の仕方とかは開発されてるんですか?」

「分泌された毒を完全に無毒化する方法はまだありません。ただ、ここで村人に聞いたのよりはより強く解毒できるようになっています」

「やはり生息数が多い分被害も多かったわけですね」

「はい。地域によってはしょっちゅう盗まれてたようですしね…」


苦労がしのばれる話だ…


「我々魔族の間では、クリスタルホーダーという名前で呼ばれてました。天然のも含めて巣にかなり集めている個体も居ましたからね」

「魔族にとっては毒を出す事より魔晶石を持っていかれる方が多かったって事ですかね」

「そうですね」


こうして色々話を聞いて眠りにつき、朝になった。


「一応毒はかからないようにしてきましたが、念のため、この服はこうしてから燃やしてください」


アンナはそう言って、大毒の巣に乗り込むために借りた黒い服と布をいくつかの草や花、鉱石の粉を混ぜた水に漬け込んだ。

ブクブクと泡が出ていた。

アンナの話によると、毒がかかっていた場合は水が青っぽく染まるそうだが、漬けている水はずっと透明のままだった。

しばらく漬け込んだ後、もう一度普通の水ですすぎ、水を搾った後魔法で燃やした。

巣に乗り込んだ後の服は少しだけ毒が付いていることがあるため、こうやって焼いてしまう方が安全だという事らしい。

もっとも今回は水の色が全く変わらなかったので大丈夫だったそうだが。

仮に直接毒がかかってしまった場合は、服を数日間漬け続け、何日もかけてその漬けた水も無毒化する必要があるそうだ。

そのまま捨ててしまうと川や土壌が大変な事になるからだ。


「いや、助かりました旅の人」

「いえいえ、これからは戸締りとメンテを気を付けてくださいね」


そう言って村を旅立った。


「そういえば、あのモンスター、クリスタルホーダーですか?キラキラしたものが好きだという事ですが…」

「はい」

「家の窓ガラス何かは持って行ったりしないのですか?」

「そうですね。基本的に地面に落ちている、手で持てる小さめの物だけ持っていく感じで窓ガラスを外して持っていくような事はありませんね」

「ふむ」

「石を投げてガラスを割るような事はしないようですし、仮に割れてるガラスがあっても、尖っているのは嫌がるようです」


さすがに身近に多くいるらしい魔族は詳しいなと思った。


そして、その村の集会場には、アンナが色々聞いたときに書いていた大毒の絵が飾られており、村人はこれを見るたびにこの時の事を思い出すのであった。


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