変なの。
作者からー
この小説を書くのは、とても楽しいことでした。
第二話が楽しみです。
「え~、あの子が神崎君と付き合ってんの?」
「そう。ありえないよね」
「まあね~。陰キャは引っ込んでろ的な?」
「マジそれな」
なんだろう。あの2人。図々しいなあ。
また、私のウワサして、悪口言って、こっちをチラチラ見てきて。ウザすぎる!
でも、私、大橋藍が陰キャってことだけは、間違ってない。
友達は一人もいないし、できたこともない。ずっとお姉ちゃんと一緒に遊んで、喧嘩して、仲直りして…って、やってきた。
だけど、「神崎君と付き合ってる」っていうのは、絶対に違う。
神崎君は私のクラスのアイドル的存在だし、かっこいいと思ったことはある。けれども、付き合うなんてことは、一切しないし、したくもない。別に好きな人もいるし。
だけども、そんなウソの噂が流れてしまって、結局こんなことになった。
あの2人は、さっき神崎君を見つけて、目をハートにして走っていったから、今はもういない。
それでも、まだ周りに歩いている人の目線がこっちを向いていることに、ちょっと嫌気がさす。しょうがないと思い、えんじ色の階段を駆け足で登っていく。この階段は、立ち入り禁止になっている屋上へとつながる階段だから、私以外誰もいない。
そう、思っていた。
「…は?」
思わず、声に出てしまった。紺色の、シワ一つないジャージを着て、短い髪をお団子にした、大人の女性がいた。
絵の具のシミがたくさんついた壁を後ろに、こっちを見下ろしながら立っていた。
この人は、先生じゃないはずだ。ジャージを着ているが、体育の先生は別にいる。生徒にしては、大人すぎる。
たまに学校に宅配でやってくる人は、こんなところまでは来ないし、新しい先生でも、事務員さんでも、ジャージなんて着ない。
そんなことを考えながら、私が立ち尽くしていると、その人は言った。
「私の名前は大橋響!やあ、おばあちゃん!」
「…は?」
また、声に出てしまった。何、言ってる?
は?おばあちゃん?なんで?私はまだ17歳なのに?
この人は、ちょっと頭が変なの?
するとまた、その人は大きな声で、
「私は未来から来た!あなたの孫だ!知らないのか?」
「はああああああああ?」
意味が…分からない…
やっぱりちょっと頭がおかしい人とか?最近よくある、中二病ってやつ?
なんなんだこの人!
私は立ち尽くしてしまった。何を言っていいのか、わからない。
すると、またその人が言った。
「そっか~。まだ、信じられないよなあ~」
と言って、階段にドスンと座った。
「私もさあ、最初聞いたときは、驚いたよ。
なんかの詐欺かと思ってさ。」
と言って、貴方も座るようにと、自分の隣を軽くたたいた。
私は、座らなければいけない気がした。座らなければ、この(仮)中二病の人の話は、終わらない気がした。
恐る恐る、その人の隣に座ってみた。
あ、以外に、背が高い。
ずっと話ばかりで、気づかなかった。
すると(仮)中二病さんは、また口を開き、
「嘘じゃないって!信じてないだろ?おばあちゃんは。成り行き?とか、説明してほしいか?」
「ちょっと、あ、あ、あの!この学校の…方ですか?」
話してみた。初めて。なんか変な感じがする。中二病?の人と話すなんて。
「ちがうよ!もう、信じてないだろ!何話せば信じるんだよ~」
その人は、急に立ち上がって、また、踊り場まで駆け上がった。
落ち着きがない人だと思う。私と違って。でも、一応相手をしなくてはいけないのだろう。話が早く終わるように。
「ええっと、じゃあ、私の名前と家の住所!とか…どうですか?」
というと、その人は子供っぽく微笑みながら言った。
「やっと相手にしてくれた!名前と住所な。
えっと、おばあちゃんの名前は、大橋藍。住所は、東京都 南丘区 2424‐1!…だと思う。」
えっ…
なんで?
(仮)中二病さんが、答えられないと思ってした質問なのに、答えられてしまった。しかも、全部当たっている。
私の頭の中には、もうたった1つの考えしかなかった。
「あなたが言っていることは、すべて本当だったんですね。」
これ以外、考えられなかった。
もしも、この話が嘘でも、ウソのウワサを言われて、ボッチで、教室の隅にいるより、この人といたほうが、絶対に、絶対に、絶対に面白い。なにか、直感的にそう感じた。
だって、彼女が今浮かべている子供っぽい満面の笑みは、とてもウソとは思えないから。
「信じてくれたな!一緒に行こう。おばあちゃん」
久しぶりの、ワクワクした感じがした。
壁についた絵の具のシミ、もう何も貼っていない掲示板、すべてが輝いて見えた。
世界がこんなにも美しく見えたのは、初めてだった。
読んでいただきありがとうございました。
本当にうれしいです。
何を書いていいのか、よくわかりません(;'∀')