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第三話 勇者は魔王城へ

コク…

「いいの!!」

コク…コク…

「ありがとう」

この子は顔も見えないし、何を考えているのかもわからないし、言葉もわからない…でも悪いやつではなさそうだ。食べ物を貰っただけの単純な勘だが今はその勘を信じたい。休憩も取れたしならそろそろ行くか…このままでは夜になっちまう。

「あっ…」

忘れていたが、さっきの蛇の死体片付けとかないと…

魔物の死体は、放置しておくと他の魔物が集まったりする。また、その個体の魔力が強いと根源となりダンジョンを生み出すきっかけになってしまう。こういう時は、解体して売りさばくのがいいけどこれを解体する時間と運ぶのが面倒すぎる…

燃やせすことはできないから…水魔法を使い土に穴を掘る。水のイメージはドリル。鋭くそれでいて水の勢いをつける。充分な大きさの穴が空いたら蛇を呑み込むように包む。そこに蛇を入れて土を水で流して被せる。簡単なお墓だ。ほんとうに水魔法ってイメージ道理にできるから便利だよな!

じー

あっ…待たせたまんまだった。今度こそ、準備完了。

「行こうか」

コク…

ギュウ…

「えっ…!!」

行こうとしたら…俺の手を繋いだ。さすがに…年下の子供にキュンとなるとはならないが…一応びっくりする。この人生こんな風な出来事がなかったからな…

この子は何とも思っていないのかそのまま歩き始めた。進んでいくごとに霧が濃ゆくなってきた。木々も見えなくなりこの子も見えなくなった。手を繋いでいないとこの子がいることを忘れてしまいそうだ。

「ねぇ…霧が濃ゆいけど大丈夫?」

返事はない。

俺の場合こんな濃ゆい霧が出たら止まって霧が晴れるのを待つ。もしくは、結界を張る。、がこの子の分まで張ると長時間保てない。この子は目印を辿っているわけでもなくひたすら真っ直ぐ進んでいる。魔物もいないし…この森はどうなっているんだ。いつ魔物が襲いかかるのかわからない恐怖がある。

チカッ…

何かが見える。

チカッ…

急に一歩一歩進むごとにと光が強くなっている。

「まぶしい…」

目が開けないほどの強烈な光が差し込む。目を瞑っていないと目が焼けそうだ。

(ま、まぶしい、)

と目を瞑りながらこの子だよりに進んでいたら、

ドン…

何かに頭をぶつけた。狭い所にいるのか頭をぶつけ痛い。

グイッ…

どこかから手を引っ張っている先では登っている事が分かる。それに続いて登るような動きをすると、足元に段差があるのが分かる。目を瞑っているので時々足をぶつけてしまう。頭をぶつけてしまう。急に止まった。

トントン…

誰かがおでこを突いている。ゆっくりと目を開けると…

まぶっ…

急な光が眩しく、え、、、

「ここどこ…」

そこは、広い草原が目の前に広がっていた。後ろには、大きな木があった。不思議なことに空の色が青ではなく薄い紫色だった。景色は他と違う不思議な色…空気…

「きれい…」

今まで見てきた景色とは違くて…不思議な感じというか普通とは違う綺麗だった。

グイッ…

「どこ行くの?」

この子はそのまま俺の手を引っ張って進んだ。進んでいく先には…大きな城があった。今まで見た城とは違い全体的に黒かった。どう見ても…ヤバいところじゃねぇ…

国にいた時の城は、The異世界定番的な白い色で埋め尽くされ所々金色だった。

もしかしてこの城、悪党の本拠地感ある場所に…

「ねぇ、まさか、この城に行くの、…」

どう見ても進んでいる先が城で今裏側から回って入っている。それも手慣れた動きで入っている。不法侵入とかじゃないよね…ここで働いているのかな。あの森に食べ物でも取りに来た、とか…

(いや…あの森にたべものはないわ)

魔物は脅威過ぎてそれどころじゃないし…キノコは不味かった。腹壊しそうになったし、

もしかして…この城の王様のもとに連れて行っていてるとか…

国への不法侵入とか…怪しい人物とか…

確かに今怪しい人物だからな…服はボロボロ…靴は履いていない…野垂れ死んでいた…言葉が通じていない、ぽい…

ここでも、取り調べかな。もう、いいよ。そんなの…めんどくさいよ。

大広間みたいなのを抜けて行った。壁も天井も黒ばかりだった。今のところ使用人には会っていない。不用心だなと思った。これじゃ、泥棒が簡単に出入りしてしまう。廊下を進んでいった所にはおしゃれな扉があり中へと入った。そこには…

ジャバぁ…ポカン…

広い風呂と脱衣所があった。

風呂の方に指をさしている。もしかして…風呂に入れと…

倉庫みたいな所からタオルと石鹸を出した。体を洗えと…確かに今の俺は汚い。あと絶っっ対に臭い。でも、服がない。綺麗になっても汚い服を着たら意味がない。というか…勝手に使っていいのか。この風呂どう見てもお偉いさんが使う風呂にしか見えない。彫刻や輝かしいほどの黒い風呂に大量の湯。俺の(元)家にも使用人用の風呂とかはあったがこんな豪華な風呂はしていなかった。貴族用の家でもここまで豪華なのはそうそうない。この城に金がたんまりなら話は別だが…

俺が混乱していたら

ぐわっ…

この子は服を脱がせにかかってきた。

「ちょっ…まって…」

上は脱がされズボンも脱がそうとしてくる。

「ちょ、っ、」

それは、だめだ。

「はいる!…入るから!!」

手振りでなんとか伝え出ていってもらえた。さすがに…風呂は一人で入りたい。見られるのは…人生二度目でもアウトです。

「それにしても…凄い風呂だな」

服は籠に入れる。

脱衣所の奥にはあのデカい風呂がある。どの家とも違う広さだ。

石鹸はいい香りがする。汚れた全身を洗う。次に髪も洗う。流れている水は茶色く濁っている。自分がどれだけ汚れていたのか分かる。臭さが落ちるように全身細かく洗い流す。もう、石鹸本体と言ってもいいように

ゴシ、ゴシ、ゴォォォォォォォォ、

洗ったら湯につかる。

「ふぅ~きもちい…」

久々の風呂だ。あったかくて落ち着くあまり寝てしまいそうだ。

コンコンコン…

「は、はい!」

誰かがドアを叩いた。扉からあの子が顔を出した。服を持っていた。

「服を持ってきてくれたの」

コク…

「ありがとう」

ガチャ

戻っていった。あの子は今もフードを被っていたが着替えないのか…あ、もしかして俺が今入っているからか。

温まったので風呂を上がり脱衣所に向かう。

汚れていた服を入れていた籠には新しい服が入っていた。質がよく、サイズも合っていて俺好みの服だった。他にもフード付きマントがあった。

服を着て扉を開けるとあの子が待っていた。

「風呂と服ありがとう」

コク…

よかった。伝わった!

さて、これからどうしようかと考えていたら、

グー…

お腹が鳴った。さっき食べたばかりなのにもうお腹が空いている。

(恥ずかしい…)

まるでこのタイミングだと食べ物をねだっているようだ。恥ずかしさのあまりお腹を手で押さえ込むようにした。

ギュウ…

「どこ行くの…」

また、手をつなぎどこかへと進んでいる。今度はどこへ行くのだろう。

それに…この子は誰だろう。ここはどこなのだろう。この子のことも城のことも知りたい…

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