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第3話-2 「痛み」は消しちゃわないとダメだよね

「突き飛ばされただって?」


 コクンと頷くお珠ちゃんと、それを聞いたおマサさんの顔は蒼白だった。


 何しろ相手のバックには警視庁がいる。抗議をするにしても、まともに取り上げてくれるかどうかも分からない。


『恐らく、事件自体を握りつぶされて終わりだな』


 オレにできたのは「後は、コイツを使って何とかするよ」と、ちょうどお侍姿でやってきた弟をダシにして安心させること。


 だけど、確かに時間をかければ何とかなるかもだけど、それまでヤツを野放しにしたら、もっと危険な目に遭うに決まっている。


『やっぱり「痛み」は消しちゃわないとダメだよね』


 ヤツが警視庁に稽古を付けに行った帰りを狙った。


 腕に自信があるのだろう。元の紀州様のお屋敷塀が目隠しになっる場所で待ち構えてみた。


 ヤツはこっちが待っているのを知りながら、堂々とオレの前に立った。


 まあ、こっちは手ぶらだったしね。


「お前が狙った娘だけどさ」

「ふん、文句を言いに来たと言うことは、運良く生きていたということか。言っておけ。さっさとオレの女になるか、また痛い目に遭いたいか選べとな」

「ふぅ。いっそここまでクズだとこっちも気が楽だよ」

「なんだ? 文句があるならお前にも教えてやろうか」

「な~にを教えるつもりなんだか」


 オレの言葉はいささか挑発的に聞こえたのかもしれない。


「教えて欲しいらしいな。わかりやすいように右腕一本で許してやる」


 うん、これだけクズなら心置きなくやれるな。


 異能発動!


「う、動かなっ」


 剣を抜きかけた男は、ピタリと動きを止めた。やつの両腕と背筋、大胸筋の動きを奪ったので、動けるわけがない。


 叫ばれると面倒なので舌とノドの動きも奪っておいた。


 まともな勝負でたたきのめしても、この手の男は必ず復讐をしようとする。


「お前を生かしておく価値などない」


 その一言は、男のためというよりもそばでこっそり見ているはずの弟のためだ。即座に撃ち込んだのは心筋を司る神経を麻痺させるツボだ。


 突然、男は目を見開いて倒れた。


 駆け寄ってくる弟。


「兄者、これは?」

「オレの異能…… 針治療だな」

「どういうこと?」

「やつの心臓の動きを止めるツボに打った。要するに心臓麻痺ってやつだな」

「心臓麻痺? そんな。兄者は、少しも動いてないって言うのに。いや、それよりも、針でそんなことができるなんてことがあるんだ」

「分かっただろ『針治療師』のヤバさが。思っただけで人を殺せるんだ。しかも、こうやって殺したんだかどうだか分からない殺し方ができる。そして、我がお家の身分があれば」

「お上にお目にかかれる……」

「そのとおり。言わんとすることは分かるな? オレにはお上を害する意図なんて全くないが、なんらかの理由で倒れたとき、我がお家が疑われることになる」

「しかし、《《兄上》》、そんなことなど」


 恐らく「言わなければ分からない」ということだろう。しかし、異能は誰がいつ授かるか分からない。


 もしもオレと同じ異能を授かった人間がいたら、そこから漏れる秘密は大スキャンダルとなる。


 第一、こんなに危険な異能だ。


 もしも同じ異能を授かった人間が現れたら……


 同じ異能を持った人間として、相手をよく見極める必要がある。そのためには「お家」をオレが継いでしまうと身動きが取れない。


 あれこれ説明はしなかった。


 なによりも、針之介が分かっているからだ。


 弟は、ガックリと肩を落として帰って行ったんだ。



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