第8話-1 お顔に凶相が
青い屋根のこぢんまりした洋館には寝鳥副司令を囲んで6人の男達がいた。
「げへへ。寝鳥様、じゃ、オレが二番手ってことでいいっすか」
「あぁ、いいだろう」
「ありがとうございます」
大仰にありがたがってみせるのは師範である。寝鳥に頼まれて「可愛がり」をしてやった褒美ということ。
異能持ちにとって、若手を可愛がる程度はどうということはない。むしろ「骨を折らない程度、かつ筋肉が動かせぬように」と同じ場所を手加減しながら狙う方に苦労した。
いっそ、二度と立ち上がれぬようにたたきのめせという注文の方が数段「楽」だった。
しかし、おかげで副指令からの覚えめでたくなった。しかも生意気な若手の美人な婚約者を心ゆくまで弄べるのだ。
言うことナシの大満足。
「久しぶりに新しい獲物だな」
寝鳥の言葉に「まったくです」と全員が肯いた。
「小股の切れ上がった良い女ですが、さすがにチョット飽きてきましたからな」
師範は追従するように言う。
隊員達が出入りする小料理屋の女将だ。隊員に出入りしないように命じるぞという脅しで、かれこれ3年あまり。
そろそろ三十路だし、身体が熟れてきたのだろう。最近は嫌がら無くなった分、背徳感が薄くなった。
こういうのを「飽きる」というのかもしれない。
「今度は、すこぶる上モンだ。赤子も産んでないから、楽しみだぜ」
前から使っている人妻には子どもが三人。ウチ、一人は寝鳥にそっくりである。
「それにしてもさすが寝鳥様。狙いは過たずですね」
「まあ、数年越しに見張っていたからな」
「「「「さすがです! 寝鳥様」」」」
一斉に、部隊員達からのお追従である。彼らは剣の腕は最下等だが、寝鳥のための汚れ仕事担当をいくらでも引き受ける面々だ。
警察の中では鼻つまみ者的存在だが、寝鳥がいるからこそ警察官でいられるのををよく分かっていた。もしも寝鳥に見放されれば、すぐに警察から追放されてしまうに違いない。しくじりだらけの最下等。
だから仕事で失敗しても寝鳥が庇う。代わりに、あらゆる汚い仕事を引き受けるという関係だ。
今もオモチャにしている人妻が何人かいる。それを見つけてきたのも彼らだし、今回のお花のネタをつかんだのも彼らだ。
後は寝鳥が地位とそれに伴う権力を使って陥れるチャンスを作るだけ。
今回は、婚約が決まった幸せの絶頂の女をオモチャにできるのだと大コーフンであった。
「まあ、オマエらも功労者のひとりだ。ご褒美はちゃんとやるぞ。オレは、そういうところをキッチリするタイプだからな」
この後やって来る、生意気な後輩の美人許嫁と「どう遊ぶか」について下卑た笑いを交えた話が弾んだ。
コンコン
「来た!」
寝鳥は立ち上がると、周りの男達に小声で言った。
「最初はあっちに隠れてろ。なあに、約束通り朝イチできたんだ。覚悟はできてるんだろうよ。夕方まで飽きるほどヤリまくれるぜ」
男達は素早く隣の部屋へ移動すると、静かにドアを閉める。
手はず通りだ。
よしよし。楽しみだぜ。それに、これからは毎月だからな。上手くやれば、今度は生まれてくるガキを全員、オレに似てるようにできるかもしれねぇな。
最高だぜ。
ガチャ
「ん? お前は誰だ?」
「あ、どうも~ いえね、この先で占いを営むケチな者でございまして。こちらが警視庁のお偉い様のお宅だとうかがって参りました」
ペコ、ペコ、ペコ
どう見ても胡散臭い扮装の男が、卑屈に頭を下げてくる。一目で、押し売りの類いだとピンときたである。




