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5 魔術開発

(さあ、早速始めるか。)


翌日の朝、俺は庭にたっていた。

魔術の研究をするためだ。

俺は昔何度も母の呪文を言い、真似しようとしたができなかった。

その原因について考えてみた。

おそらく一番の理由はイメージ不足。

俺がこの前魔術を使おうとしたときは、どんな結果を起こしたいかよりも、

どういう風に事が起こるのかというワクワクが勝っていた。

あと、俺に聖魔法の適性がない、というのも考えられる。

動魔術や熱魔術を試してみよう。


「まずは...」


本に書いてた動魔術の魔法を試すことにする。

ターゲットは庭においてある少し小さな石。

この石を浮かすことが目標だ。

簡単な魔法だが、練習すれば人を飛ばしたりも出来るらしい。


(石よ、浮け...)


そうイメージしながら俺は呪文を唱える。


【ムーヴ】


言った途端、石が少し動く。

おぉ...すごいな

初めて自分で魔術を使う感覚。

目の前で起きている現象は地球ではありえない。

石の下に手を滑り込ませるが、なにかが石を支えているとか、

そんなこともなく、浮いているのだ。


なんとも言えない感覚だ。少し、手がムズムズする。

これが魔素の感覚なのだろうか。

俺に魔素を見ることはできないが、その働きによって浮いているのだろう。


「あっ」


石が急に落ちた。

イメージの維持も大切なのか。

ふーむ、案外魔術と言ってもなれないうちは不便だな。

今度はもう少し高く浮かしてみよう。

もう少し高く浮くのをイメージする。


【ムーヴ】


そう言うと、今度は石が俺の頭くらいまで浮く。

おぉ...こんな高さでも行けるのか。

イメージさえできれば意外と簡単に出来るんだな。

そこで俺は思いついた。


(じゃあ、浮かしたまま銃みたいに飛ばすことも出来るのか...?)


そう思った途端、浮いていた石が俺の周りをぐるぐる回りながらどこかに飛んでいく。


「うわっ!」


思わず声を上げてしまう。

ムーヴがかかっている間は、その物体を自由に動かせるってことか?

何度か実験を繰り返し、その仮説が確証に変わる。


つまり、俺がムーヴを使うと、使ったその物体が一定時間「ムーヴ状態」になり、その状態のままイメージを変化させると、そのとおりに動き出す。

ただ、これが難しい。

さっきみたいに、俺が考えたのとは別の軌道を動くことのほうが多い。

変に曲がったり、動くのがゆっくり過ぎたり。

これは練習が必要だな。

ムーヴについてはある程度わかった。

じゃあ、次の魔術を使ってみよう。

そう思い、俺は石を持ち上げ、次の魔術を唱えるためのイメージをする。


【ウォーム】


そう唱えると、俺の持っていた石が少し温まる。

すごいな、動かすだけじゃなくてこんなことも...


そう思っている間に、石はどんどん熱くなる。

やばい、熱くなるのが止められない。


「アッツ!!」


思わず手を放してしまう。

やはり、イメージというのが大切らしい。

どこまで熱くなるのか、そういうのも含めてイメージして置かなければ...


じゃあこういうはどうだ。

落ちた石に向かって呪文を唱える


【コールド】


この呪文は本に書いていた訳では無いが、ライトやらムーヴやらの言葉を聞いて、思い浮かんだ。正直即興で作った呪文が発動するとは思わないが。

そう思い、落ちている石に触ってみる。


(キンッキンに冷えてやがるぜ)


なんてことだ、本に載っていないのに魔術が発動できる。

やはり、いちばん大事なのはイメージで、特定の言葉でそのイメージ通りに魔素が働きかけるのだろう。


(これってかなりやばいことなんじゃないか?)


自分で魔術を開発できるって、こんなんやりたい放題じゃないか。

なんだこれ、魔術最高かよ。

新しい魔術っていうのについても要実験だろうな。


そうして、またいろいろな魔術で実験することで、また新しい事実がわかる。


魔術にはそれぞれ上限がある。

動魔術は動かすという動作、熱魔術では温めること、冷やすこと。

これらの魔術は、一定上の温度にしたり、一定以上の速度が出ない。

聖魔術は発動しなかったがわからないが...

おそらく、俺一人で動かすことの出来る魔素量が限られてる。


ショットやフライと言った魔法もあったが、動きが変わるだけで、だいたいムーヴで出来る範疇のものだった。おそらく、動魔術はものを動かす点でムーヴがすべての基礎なんだ。

その動かし方がある程度体系化されたものが、他の動魔術、っていう解釈でいいだろう。


あと、詠唱をなくすこともできた。

頭の中でイメージをして、発動しろ!と強く念じれば、案外普通にできた。

無詠唱魔術ってやつだ。


そしてもう一つ、「ウォーター」とか「ファイア」とかよく聞く呪文を唱えたりしてみたが、一切何も怒らなかった。無から何かを生み出す、とかはできないらしい。

まあ、本に書いていた魔術と魔法の違いとかを考える感じ、できないとは少し思っていたが。


そこで俺は思いついた。

無から何かを生み出す、とかはできなくとも、魔素を一点に集めるイメージをすれば、魔素の結晶みたいなのが出来るのではないだろうか、と。

ムーヴが出来るくらいだし、その魔素をぶつける!みたいなことが出来るんじゃないか。


ふっふっふ、もしできたら魔弾と名付けようかな。

本を見る感じ、魔素だとか、魔弾だとかと言った話はなかった。

おそらくまだその考えを他にしている人はいないだろう。


そうして、俺は魔素が一点に一点に集まるイメージをする。

そしてそれが全て一気に発射されるイメージ。

(いっけー!)


【魔弾】


そう言った直後俺の手が凄まじい光を放つ。

そして光はものすごい速さで地面に衝突する。


ドカーン!!!


(あ、やば)


庭の地面が一気にえぐれる。

土や石や草が辺りを舞う。


(完全にやらかした...)


こういうのはあるあるじゃないか。

こうならないよう細心の注意を払っていたのに...

ついワクワクして調子に乗りすぎた。


「ユーちゃん!?!?すごい音がしたわよ!」


遠くの方から母さんの声が聞こえる。

すると、急に目の前がチカチカし始めた。


(ちょっとまって、目眩がひどい...

やばい、体が全く動かない...)


母さんの声がどんどん近づいてくるが、俺の意識は遠ざかる。


「ユーちゃん!、、、ちゃん!」


地面も空も、前も後ろもわからない状態になり、

俺はその場で倒れ込んでしまった。



ーーーーーーーーーー



頭がいたい...

俺は目を覚ました。


「ここは...」

「あなたの部屋ですよ、お坊ちゃん。庭で何をしていたのかはしりませんが、倒れていたのでお運びしました」

「ユーちゃん!!!大丈夫だった?体に異常はない?」


目が冷めたら母さんとツラツキさんがベットの横で俺を見守っていた。

母さんが俺に抱きつく。


(...ちょっと力強くないか?)


締め付ける力が痛い。

俺は倒れてたのに、骨がミシミシ言い始める。

痛い、痛いって。



「あ、あぁ。ありがとう」

「気分はどう?体痛くない?」

「いや、まだ少しくらくらするな」

「それ以外に何か体に別状はないですかぁ?」


ツラツキさんに言われ、俺は少し体を確認する。


「いや、気分が少し悪いだけ」

「大丈夫なら良かったですぅ。

...あと、あのクソでかい穴は何だったんですかぁ」

「あー、あれは...魔術の練習をしていたら。ちょっとね」

「ユーちゃん!?アレ魔術でやったの!?すごいわねぇ!!」

「どんな魔術使ったらあんなクソでかい穴ができるんですか。流石にウソを付くのも大概にしたほうがいいですよぉ」

「ホントなんですって...」

「だって、そんな魔術使えたら、この世どうにかなっちゃいませんかぁ。大魔術師ですよ、大魔術師」


まじか、この魔術まだ誰も見つけてないのか?

というか、魔素という考え方自体が見つかってないんだろう。

現代では異世界での、マナとか魔素とか言った考え方は割とするんだけどな。


「俺は、どうして倒れたんでしょう」

「多分お坊ちゃんは魔力不足でしょうね」

「魔力不足?」

「魔術を使いすぎると魔力不足という状態になってぇ、倒れてしまうんですよ...」


なんだそれ!?そんな事あるのか!?

もっと本ちゃんと読んどくんだったな...


「魔術を使いたての子供によくありますよぉ。調子に乗って何回も使ったり。お坊ちゃんはどのくらい魔術を使ってたんですか?」

「うーん、ざっと三時間くらいかな」

「え!?三時間!?ずっと!?」


そんなに驚くことなんだろうか。


「大体、使ってた時間で言うとそのくらいですかね...」

「どんな魔力量してるんですか...」


魔力とは、人が魔術を使うための体力的なものらしい。

本には、通常どのくらいの魔力が人にあるかは書いてなかった。

まあ個人差あるしね、現代の本に人はどんくらい走れますとか書いてないのと一緒かな。


「え...普通、どのくらい魔力使うことが出来るの?」

「普通は一時間魔術使っただけでも魔力切れになりますよ...

それを連続で三時間って...とてつもない魔力量ってことになります」


そんなにすごいのだろうか。

でも、爆発の魔術を使ったときにはすごく魔力を使った気がする。

ムーヴ程度の魔術ならもっと使える気がするな。

まあ、どちらにしろ魔力が多いというのは嬉しいことだ。

魔力は魔術を使うほど少し増えるらしいが、ほとんど先天性のものらしいし、こんな体に産んでくれた母さんに感謝しないとな。


「すごいわねぇーーー!!!ユーちゃん!

さすが私の子よぉーーー!!!」


抱きつきながら、俺の頭を撫でる。

そういえば、俺の母さんはどのくらい魔術を使えるのだろう。

こんどたのんでみせてもらおうかな。


「では、私は昼食の準備をしてきますね」


そう言いつつツラツキさんは部屋を出ていった。


「そういえば、親父はいつ帰ってくるんだ?」

「そうねぇ...王城から帰ってくるのはもう少しかかるって言ってたわ。

まあ、一週間後頃には返ってくるらしいけど」

「へぇー...」


意外と遅いな。

最近は、訓練も楽しくなってきた。

この間の戦いで、俺は意外と戦えるということがわかってやる気が出た。

前の世界では筋トレとか全然してなかったけど、子供の体で筋トレをするとどんどん成長して楽しい。

筋トレマニアの気持ちがわかってくる。


この特訓の成果を親父に早く見せたいぜ!

そう思いつつ、俺は屋敷での平和な日々を過ごしていた。

魔術の研究に訓練に筋トレ。

日々が充実して、異世界に来てよかったと心から思えた。


俺は魔素を一点に集め魔弾を作る魔術を「チャージ」、

そして発射する魔術を「ショット」と名付けた。

ちゃんとイメージしないと、また大穴が空いてしまうが、ある程度調節出来るようになった。

毎日魔術を使っていると自分の魔力が少しずつ、多くなっていくのも感じる。

ツラツキさんには化け物なんじゃないかと言われた。

俺の母さんはすごい喜んでいたが。


ーーーーーーーーーー


そんな日々を過ごして三年、ついに俺は十歳の誕生日を迎えたのだった。

是非続きを読んでください!

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