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4 この世界の魔術

「...は?」


生意気と思っていた子供は、男ではなく女だった。

しかも、彼女はマフマト王の娘、つまりこの国の王女であった。


「お前...今、マフマトって言ったか?」

「そ、そうだ、私はマフマト国の王女、ルーク=マフマトだ」


なんてこった。

俺はこの国の王女に対してなんてことを...

と思ったが、正直相手から誘ってきた話だし、俺悪くなくないか?

そうだな、俺は悪くない!

ということで、俺はこっそり逃げようと思います。


「お坊ちゃん」


ツラツキさんが俺を呼び止める。

なんだ、こっそり帰ろうと思ったのに。

俺はまだこの家を見てないんだぞ!


「お嬢様の壁を歪めておいて、そのまま逃げるとは何事ですか」


真面目な顔して何いってんだこの人。

適当なことばかり抜かす。


「そ、そうですよぉ」


こいつもこいつで大概である。

正直こいつが変な癖を持っていなければこんな事になっていない。

関わっていると面倒事に巻き込まれるのは目に見えている。


「お坊ちゃん、男なら最後まで責任持ちましょう」


ちょっとニヤニヤしながら話しかけてる。

もうこの人全部わかってていってるでしょ。


「はぁ、また勝負挑んだりしてこないでくださいよ、王女サマ」

「えー、せっかく探し出したのにぃ!」


王女、もといルークはイーッと口を開きながら不満げにする。


「つれないんですねぇ」

「うるさいです。僕はもう屋敷に帰るんで、部屋に案内してください」

「わかりましたぁ」


俺とツラツキさんは、ルークを背にし屋敷に戻る。

ところで、王女ならこんな自由に出歩いていいのだろうか?

と思ったが、周りをよくよく見るとお付のものがいるらしい。

隠れてこちらの様子を見ていた。


(オワッター。こりゃ全部見られてるわ)


子どもの遊びとして捉えてくれるだろうか。

変な勘違いをして、追放とかされたら洒落にならない。

ありがちの転生モノかもしれないが、なんの転生特典もない俺にはキツイ。


「こちらがお坊ちゃんのお部屋です。奥様のお部屋は少し行った奥の部屋です。

私共は基本屋敷の中にいますので、何かあれば言ってください」

「母さんはどうしてるの?」

「おそらく屋敷の中を見学してるかと。お坊っちゃんもしますか?」

「いいや、自分で探検するよ

あと魔術の本とかってある?俺魔術について知りたいんだよね」


ツラツキさんは少し戸惑ったような顔をする。

この年で本を読みたいなど、少しおかしいだろうか。

まあ、背伸びした大人の真似事程度に思ってくれるだろう。


「承知いたしましたぁ。指南書から歴史までありますがどれにしましょう」

「んー、まあ、とりあえずあるだけ全部で!」

「承知いたしましたぁ。では、私は業務に戻りますのでぇ」

「ありがとね。あ、あとお風呂ってどこかな。体が汚れちゃったんだ」

「お風呂でしたら、一階の東にございます。案内しましょうかぁ?」

「大丈夫、じゃあ仕事に戻っていいよ」

「失礼します」


そう言って、彼女は仕事に戻っていく。

どこか気だるげそうだが、テキパキと作業をこなしている。

容量が良いタイプなんだろうか。


そんな事を考えながら風呂に入って部屋に戻ると、

魔術の本が山積みになって置かれていた。


(こりゃすげーや)


本は机の上だけじゃなく、床にも俺の高さくらいまで積まれている。

ざっと数えただけでも100はありそうだ。

かなり分厚いのもあれば、紙が数枚重なっただけのようなものもある。


(これでようやく魔術が使えるように...!)


俺は初めての魔術という未知の世界の技術に心を馳せながら、

俺はその場にある本を読み始めた。



「お坊ちゃん、夕食ができましたぁ」


なんと、昼過ぎに読み始めたのにもう夜ご飯の時間なのか?

魔術というのは奥深い。

読み入っていたらあっという間に時間が過ぎてしまった。


「ずっと読んでいたのですかぁ?」


ツラツキさんが俺に問いかける。


「つい面白くってね」

「不思議な子ですねぇ」


本人前にして何いってんだ。

あんたのほうがよっぽど不思議だよ俺は。

普通目の前で言うか?


「あはは、よく言われるよ」

「まあ、食堂に行きましょう」

「はーい」


そう言って俺は夕食へと向かう。


ーーーーーーーーーー


この数時間で、魔術について基本的なことは色々わかった。


まず一つ、魔術とは、()()()()()()ということ。

この世界では魔術と魔法が明確に区別されているようだ。

魔術は、人の手でできる手順を簡略化して、結果だけを生み出すもののことであり、

魔法は、人知を超えた現象を生み出すもの

ということらしい。



道理で魔法という言葉をこの世界であまり聞かないわけだ。

魔術は頻繁に使われているが、魔法というのは物語上の存在であるのだ。


そして二つ、魔術には大きく分けて二つ種類があり、それは詠唱魔術と天与魔術。


詠唱魔術とは、その名の通り詠唱することで発動する魔術。

呪文を詠唱することで使うことの出来る魔術で、大きく三種類に分類される。

動魔術、熱魔術、そして聖魔術だ。

それぞれの魔術には向き不向きがあり、得意なものほど出力や効率が良いらしい。

この世の殆どの魔術はこの三つの複合によって生み出される。

そして魔術を発動させるために必要なのが、集中とイメージ。

自分の起こしたい結果や現象を強くイメージし、集中することが大切だそう。

これがかなり難しいらしく、一度出来るまでにすごく時間がかかるそう。

だから、大人でも魔術が使えない人は多くいるんだと。


あと、

動魔術と熱魔術は、その名の通り、動きと熱を司る魔術だそうだ。

押したり引いたり、冷ましたり温めたりなどらしい。

少し特殊なのが聖魔術。

母さんが使う「キュア」や「ライト」などがこの聖魔術に分類される。

動魔術、熱魔術は向き不向きがあるが基本的に多くの人が出来る。

しかし聖魔術は出来る人も多いが、できない人は全くできないそう。

子供の頃から聖魔術を教えようとすると、もしできなかった場合魔術のイメージがつかみにくくなるそうで、聖魔術はある程度他の魔術を練習してからするのが良いそう。

母さんはだから俺に魔術を教えてくれなかったのだろうか。


そして天与魔術。

これは、聖魔術よりも更に特殊なもので、個人個人に宿る魔術のようだ。

ある一族の中で継承されたり、ある日突然変異で目覚めるなど。

言うなればユニークスキル、みたいなものだろう。

あまり例を見つけることができなかったが、例えば雷を操る魔術などがそうらしい。

継承する系の天与魔術は貴族や王族で特に受け継がれているらしい。

あの変態王女も継承しているのだろうか。


そして三つ、最後にわかったこと。

この世界の人間には、魔導器官というものが備わっているらしい。

魔導器官というものは全身に血管のように張り巡らされていて、

魔術を使う上で何やら重要な機関らしい。

また、体の一部の魔導器官が異常に発達する人が生まれることがあるらしい。

体の部位の昨日がすごく発達したりするらしい。

本の記述では、目の魔導器官が発達している人は、人の魔術の流れを

見ることができて、どんな魔術をイメージしてるかもわかるらしい。


俺はこれらの記述が色々気になった。

魔術の流れとはどのようなものなのか。

俺が知っている漫画とかでの魔術は、マナを使ってどかーん!みたいなかんじだ。

だから、この魔術の流れというのは、人が魔術を使うときのこの「マナ」

みたいな何かを、魔導器官が発達している人は見えるんじゃないかと考えた。


つまり俺の仮説はこうだ。

この世界にはどんな場所にも魔術を使う素(魔素と呼ぶことにする)

が広がっていて、魔術を使うときにこの魔素が俺達のイメージを生み出す

のではないだろうか。

魔導器官が発達した者は、この魔素の動きを見ることが出来るので、どんな働き

をするかも、すべてが分かるということなのではないか。


そういうことなら話は早い。

早速、今度庭で実験してみよう。

家の中で実験して悲惨なことになったりするのはあるあるだし。

そんなことになるのはゴメンだしな。


まだすべての本を読んでないが、今のところわかったのはこれくらい。


他の本には魔人だとか魔獣だとか、まだまだいろんなことが書いてある。

というか、これだけの本を選んですぐに持ってきてくれるツラツキさんやっぱ有能。


そう思いながら、夕食を食べ終わり、ゆっくりしながら新しい本のページを捲る。

ツラツキさん達に、夜ふかししないよう言われているが、

ついつい続きが気になって読んでしまう。


俺の魔術の研究は更に進んでいくのだった。

是非続きを読んでください!

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