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3 ガキの正体

「じゃあ、ユーちゃんはどうするのよ!」


母さんの怒った様な声が聞こえてきた。

静かだが、その声には力がこもっている。


(何があったんだ?)


どうやら母さんは、親父とその客とリビングで話しているらしい。

いつもの優しい声を、張り上げている。

親父に声を荒げるなんてことなかったのに...


「でもしょうがないんだ。すまない。わかってくれ」

「あなたの言いたいこともわかるけど、、、」


何を話しているのか。耳をそばだてる。


「あなたが王都に行ってしまうと、私とあの子だけで暮らすことになるわ

この領地はあなたのお父様から受け継いだ領地なのでしょう?

あなたがここを離れるわけには行かないじゃない」

「いやでも、モノ、こんなチャンスを掴まないわけにはいかないだろ?

この家も、そろそろユーヴェンスにも狭くなってくるだろうし」


(親父が王都に!?なんでいきなり...)


「そちらについては心配ありません。奥様。

ハスター様が王国騎士団におられる間は、王都から、臨時の領主を派遣いたします」


母さんの向かいに座る従者が喋る


(なんだって?親父は王国騎士団のオファーが来ているのか...

じゃあ、あの二人は王都のお偉いさんたちってことか?)


「それに、騎士団の体制がもとに戻りましたら、再びここに

戻ってもらっても構いません。数年、それまで王都で

暮らしていただきたいです。もしハスター様がこちらに来ていただける

なら...」

「そういうことを言ってるんじゃないの。あの子には今、ハスターが

いないとだめ。あの子にとってお父さんが急にいなくなるなんて、、、」


母さんが下を向きながら言葉を絞り出す。


「お気持ちはわかりますが、奥様。顔を上げてください」


今まで喋っていなかった、従者の主と思われる男が喋りだす。

威厳があり、恐ろしくも落ち着く不思議な声だ。


「では、奥様もお子様も私が王都に家を用意しよう。もちろん、ハスターと一緒でもいい」

「ですが、陛下!ハスター様の予定住む場所に三人は...」

「よい、郊外の宮殿に空いた部屋があっただろう。あそこなら数年住んでも問題ない

本来は我が国に来た客人のもてなしの場だが、数室なら大丈夫だ」

「、、、」


母さんは黙り込んで、何やらかんがえている。


今、すごいことが決まってないか?

俺、このまま王都とやらに移り住むことになるのだろうか。

しかも、あの男、陛下と呼ばれているし...

この国の王!?

そんなわけ無いか、流石に。

陛下というのはなにかの聞き間違えだろう。うん。


「今、騎士団は内戦の影響でほぼ壊滅状態だ。

ハスターを騎士団長に迎えることが王国の秩序を保つために必要なのだ。

どうか、考えてくれないだろうか」


男が、ゆっくりと、頭を下げる。


(そんな内線が起こっているのか?こんな田舎の領地ではあまり感じなかったが)

どうやらこの国の都が危険な状態らしい。


「頭を上げてください」


母さんが静かに声を放つ。

彼女の声から、何かの決意を感じる。

何かを言おうとしたその時だった。


ガタッッッ!


(やば!壁に体をぶつけてしまった!)


今までこっそりと聞いていたのに、物音を立ててしまった。

バレたか?


「だれだ!」


従者が声をあげる。


「あ...えっと、ごめんなさい...」


すぐに体を出して謝る。

別に謝るようなことじゃないが、大きい大人たちに見られていると、

なんだか悪いことをしたような気分になる。


「、、、ユーちゃん、今の話聞いてた?」


母さんが俺に話しかける。

とりあえず、聞いてなかったということにしとこう。


「いや、あんまり聞いてなかったけど?」

「そう、えっとね

もし、この家を離れるってことになっても、ユーちゃん大丈夫かしら?」

「うーん、ちょっと怖いけど、家族みんなが一緒にいれるならいいよ!」


どうだ、パーフェクトコミュニケーションだろう。

これなら、母さんも、陛下って男の希望も満たしている。

俺ほど気遣いが出来る子供がいるだろうか、いや否、いないだろう。

なにせ俺は転生者なのだからな。


母さんはまた少しだまりこんで考える。

親父はその様子を不安そうな顔で見つめる。


母さんのことになると、親父はすごく弱そうなんだよな。


「、、、」

「わかりました。家族が一緒にいることができるなら、その提案も飲みましょう」


「!?本当か!」

「えぇ、ただし、家族が一緒のことが条件ですよ」

「助かる。本当に。様々な援助も必要ならしようじゃないか。

ありがとう」


そう言って、男たちは頭を下げた。


「へ、陛下。頭を上げてください」


ハスターが止める。

これから騎士団長ともなろうに、情けない。


「いいんだ、君にはこれから世話になるだろう」

「あとそうだな、これを受け取ってくれ。すこしばかりのお礼だ」


彼は体の側から鞘に収まった剣を取り出した。


「これはこの国に伝わる名剣の一つだ。

騎士団長に就任するからには、頑張ってもらうぞ」

「ハッ」


そういい、親父は剣を受け取る。

ニヤニヤしているのがきまり悪いが、

剣を受け取る親父はどこか頼もしかった。


「では、我々はそろそろ帰ることにしよう」


すこしして、彼らは帰っていった。


「あなた、どうしよう。この子がつらい思いをしないか心配、、、」

「大丈夫さ、俺の子だぞ?勇猛で、強くて、賢い。

きっと大丈夫さ」

「そ、そうね、、、」


二人は抱き合ってイチャイチャし始める。

子供の前だぞ全く。

まあ、どうやら俺達は王都に行くことになってしまった。

話を聞くと、王都へと移るのは一ヶ月後らしい。

魔術の本とか、子の世界についての本とか、

まだまだ知りたいことがたくさんあるんだ。

王都に言ったら知ることが出来るのだろうか。


俺は、ワクワクしながら王都へ移る日を楽しみにしていた。



ーーーーーーーーーー



「すっげー!」

「今日からここに住むのよ?フフ」


そうして一ヶ月後、俺達は王都の宮殿についた。

国王の城下町のすこし離れた郊外に位置する宮殿は、

手入れされた広い庭と、巨大な建物が広がっている。


(今日からここに住むのか...)


親父はしばらく仕事の用事で宮殿には帰ってこずに王城にいるらしい。

つまり、俺と母さんの二人でここに住むということになる。


(夢のような日々が始まる...)


俺は胸を躍らせながら門をくぐっていった。

家の中には、メイド姿をしている女性が2人立っている。


「ようこそお越しくださいました。

今日から二人のお世話をさせていただきます。カラツキです」

「同じく、ツラツキ」

「「よろしくおねがいします」」


カラツキ、ツラツキと名乗った二人の女性が頭を下げる。

双子のような印象を受けるが、性格は違いそうだ。

カラツキと言った女性は真面目でしっかりとしているが、

ツラツキといった方はどこか気だるげでやる気がなさそうだ。


話を聞くに、これからの俺達の世話をするらしい。


(ほう、これはなかなか...)


そして、二人とも、すごく顔が整っている。

この世界の人はみんな美男美女なんだろうか。

まあ、俺の親父はそうとは思わないが、そんな気がする。


母さんは世話は必要ないと言っていたが、俺達は客人扱いだそうで、

世話をしてくれるそう。

必要なものがあれば何でも揃えると言っていたので、

魔術の本とかあったらくれないかな...


そんなことを考えていると、家のドアが急に開く。


バンッッッ!


驚いてその方を向くと、どこかで見たような、俺と同じくらいの大きさの子供が立っていた。


「ユーヴェンス!またあったな!」


そう言って子供は俺の名前を呼ぶ。


(あ、こいつ、あの時の生意気なガキだ

なんで王都にいるんだ。あの後領地を探しても会わなかったのに...)


相変わらずの偉そうな態度、一回お灸を据えてやったというのに。

仁王立ちして俺を見つめて、耳を赤くしながら俺を指差すと彼は言った。


「ま、また勝負しろ!」


何をいきなり言っているんだ。

あの時のリベンジか?俺は今からすることがあるというのに...


「子供に付き合ってる暇はないね」

「な、なんだと!」


軽くあしらっていると、母さんが横から口を挟む。


「あら、お友だち?いいじゃない、遊んでくれば?」


何いってんだ。俺にはこれから魔術の本を探したりとかすることが山積みなんだ。


「い、いや、俺は...」

「ほら、行くよ?」


そう言って彼は俺の手を引く。

うーん、まあすぐにまた懲らしめてやればいいか。


「では私が様子を見ておきますね」


そう言って、ツラツキ?さんが俺達の後ろについて歩く。

メイド二人が正直どっちがどっちか見分けがつかない。

そう思いつつ庭に移動する。


「じゃあ、これを使ってくれ...」


庭に移動すると、彼は俺に向かい、木刀を投げる。

前は剣と素手で戦ったが、今回は彼も木刀を使う。


(あくまで対等ってことか)


彼の投げた木刀を手に取り、俺は手足に力を込め、姿勢を正す。

親父との訓練を思い出しながら、意識を集中する。


「そ、そろそろ始めるぞ...?」


彼がそう言い、剣を構える。

どうやら緊張するのか、ソワソワしている。

耳は赤くなり、すこしニヤついている...?


「3」「2」「1」


そう言い放つと、俺はすぐに彼に詰め寄る。


「ッ!」


俺の剣を受けようと。木刀を合わせようとしている。


(だが遅いッ)


俺は彼の木刀を弾く。

木刀は放物線を描き、後ろの方へと落ちていく


ヅルッ!


彼が勢いに驚き、後ろに下がろうとしたとき、足がすべった。

そのまま、彼は俺の服の裾を掴もうとした。


「ウワッ!!!」


そうして...

俺は彼の上に馬乗りの状態になり、顔の横に手のひらをつく。

床に押し倒す体勢になった。


「イテテ...」


思いっきり倒れてしまい地面についた腕と膝が痛む。

まあ、この体勢を見て俺が負けたと思う人はいないだろう。


「ぁ...」



彼は押し倒している俺の体をまじまじと見て固まっている。


「まぁ」

「なんと大胆なお坊ちゃま」


脇で見ていたツラツキさんが声を上げる。

何言ってるんだ。男同士だろ?


「大丈夫ですか?()()()


ツラツキさんの声に俺は固まる。

お嬢様??

たしかにきれいな顔立ちをしてはいるが...

(本当に女なのか!?)


女と思い見てみると、確かに女としか思えない。

初対面の態度や雰囲気からてっきり男と思い込んでいた。


(ちょっと待て、てことは...)

(俺結構やばいことしてる?)


いや、まだ子供の遊びの範疇。

何もやましいことはない。

まあ、すぐにこの体勢を変えなければ。


「ち、近いよ...。

だめだよ、こんなの...」


(黙れ!余計なことを言うんじゃない!

もっとアブナイ雰囲気が出てしまうだろ!)


そう思い体勢を変えようとすると...


「ウワッ」


ドンッ!!!


床ドンだ。

またバランスを崩して、今度は肘を床につく形で、押し倒してしまう。

顔がさらに近くなる。


(あぁ...やばい...)


「おぉ、まだやりますかぁ」


やめてくれ、ツラツキさん。

もう俺を止めてくれ。

というかなんで止めないんだこの人。

ちょっと楽しんでないか?


「あ、え、えへぇ...」


(頼むから黙ってくれ...)


こいつはこいつでどんどん顔を赤くしながら照れている。

生意気なマセガキが。

絶対こうやって倒されたくて再戦したな?


「よいしょ」


これ以上覆い被さっていると、ヤバそう、

というかもう見られているのでアウトだと思うが立ち上がる。


「あ...」


残念そうな顔をするな。

こいつ絶対ドMだろ。

俺は開いてはいけない扉を開いてしまったのか... ?


「まあ、とりあえず。お前は女なのか?」

「え?、あ、あぁ。私はルーク=マフマトだ!

よ、よろしくな!」


そう言って彼女は俺に握手を求め、手を差し出す。


(ん?

んんんんん???)


俺は一瞬思考が停止する。

彼女が女であることを知ったときよりも大きい衝撃が俺を襲う。


なぜなら、

彼女の苗字は、この国の名と同じだった。


つまり、彼女は国王の娘、王女であるということなのだ。

そして、俺は思わず言葉をこぼしてしまう。


「...は?」


是非続きを読んでください!

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